2015年6月27日(土)「ストレイヤーズ・クロニクル」

STRAYER'S CHRONICLE・2015・日本テレビ放送網/ワーナー・ブラザース映画/讀賣テレビ放送/バップ/ツインズジャパン/D.N.ドリームパートナーズ/電通/集英社/札幌テレビ放送/宮城テレビ放送/静岡第一テレビ/中京テレビ放送/広島テレビ放送/福岡放送・2時間06分

シネスコ・サイズ(表記なし、デジタル?)/表記なし(ドルビー・デジタル?)

(一部日本語字幕付き上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/strayers-chronicle/index.html
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1990年代はじめ、各界のトップの人材が集まって、ある実験を行った。1つは「意思で人間は進化するか」。もう1つは「ほかの生物との遺伝子操作による進化」。実験が終わり、それぞれのグループの子供たちは里親たちに引き取られたが、今、大人になろうとしていた。意思で進化させられた子供たちは、いつしか家を出てスバル(岡田将生)をリーダーに、弟と呼ぶリョウスケ(清水尋也)とワタル(白石隼也)と暮らしていた。しかし彼らは特殊能力を得た代償に、「破綻」とよばれるストレス・ホルモンによる脳細胞の破壊がいつ起きるかわからなかった。かつて実験の中枢にいた外務副大臣のセト(伊原剛志)が「破綻」解決の鍵を握っているため、スバルグループはセトの依頼を受け、能力を使って裏の仕事を請け負っていた。一方、遺伝子操作で進化したマナブ(染谷将太)をリーダーとするアゲハグループは、殺害事件などを起こしていたことから、スバルはセトから生け捕りにするよう命じられる。

72点

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 なかなか感動的な物語。ただ、原作(小説)は年代記(クロニクル)というくらいだから、そんなに短い物語ではないはず。それをはしょって2時間にまとめたため、伝わって来にくくなった感はある。たぶん、もっと2つのグループは対立して戦う部分があったのではないだろうか。それがラストで協力するからより感動が大きくなる。ところが、ほとんど対立する部分がないし、良いほうの「チームスバル」が活躍する場面も少なくから差が際立たない。そこが惜しい。

 絵的には、回想シーンの他、屋外ロケでも緑かぶりしたカットが多く、きれいじゃなかった。音はクリアーで、サラウンドも良く効いていて回っていたが、爆発などのデジタル合成がいまいち。いかにも合成しましたという感じ。時間がなかったのか、予算がなかったのか。実に残念。ソフト・パッケージにするときは、やり直したほうがいいのではないだろうか。ずっと残るんだから。

 原作はあるものの、超能力系としてはそのものズバリ「クロニクル」(Chronicle・2012・米)がある。超能力者の暴走を低予算で描いたものだが、青春ものという点でつながっているような気がする。また人間との対立という点では「X-メン」(X-Men・2000・米)のようでもある。TVではシーズンを重ねるごとに酷くなっていった「HEROES/ヒーローズ」(Heroes・2006-2010・米)があった。能力者が集まる点では、大古典の「水滸伝」的でもある。スバルの家は梁山泊だ。彼らが国を救う。ただ寿命で苦しむというのはそのままSFの名作「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香/英)のレプリカントだ。彼らは高い能力を持つが、寿命が4年に設定されている。劇中、自分たちも人間なのに「人間どもがーっ」というセリフがある。まるでレプリカントみたい。

 スバルは岡田将生。自然な感じでうまい。設定ではネットで格闘技を学ぶようだが、時間がないためだろう超能力によって「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)みたいに会得できてしまう。しかし、実際にはアクションもかなり練習したはずで、スムースで見事だった。あまり日本映画は見ないが記憶に残っているのは「プリンセストヨトミ」(2011・日)旭ゲンズブール、「宇宙兄弟」(2012・日)のできる弟、といったところ。TVのスペシャル・ドラマ「ヤングブラック・ジャック」(2011・日)も作品はともかく、岡田がよかった。

 リョウスケは「ソロモンの偽証」(2015・日)で不良の大出を演じた清水尋也。本作では正反対の引きこもり。全く印象が違う。うまいなあ。

 うまいと言えば、アゲハのマナブを演じた染谷将太もうまい。「白ゆき姫殺人事件」(2014・日)や「寄生獣」(2014・日)など、さすがのうまさ。

 またソウ役の鈴木伸之も、チンピラ感が出ていて素晴らしかった。劇団EXILEのメンバーだそうで、ボク的にはTV「ルーズヴェルト・ゲーム」(2014・日)の尖ったライバル・チームのピッチャー役が憎たらしくて印象に残っている。TVでは「GTO」(2012-2013・日)シリーズ、映画では「謝罪の王様」(2013・日)に出ているらしい。

 おいしいところを持っていく、隣の大学生は「GANTZ」(2010・日)の本郷奏多。  ボーリング場の不良は「るろうに剣心」(2012・日)シリーズの青木崇高。

 ここぞと言うところで流れる曲はゲスの極み乙女の「ロマンスがありあまる」。

 登場する銃は、最初に出てくるのが1911オート(ガバメント)。外国人が使っているのがグロック。警察の特殊部隊はMP5とM4。たしかセトはP226。整備会社をやっているイサカ(豊原功補)はUSP。銃器特殊効果はビッグショット。

 原作は本多孝好の同名ベストセラー小説。脚本は喜安浩平と瀬々敬久。喜安浩平はアニメの声優としても活躍している人で、「はじめの一歩」(2000〜2002・日)シリーズや「テニスの王子様」(2001-2005・日)の声をやっている。脚本は、どれも見ていないが、青春群像ドラマ「桐島、部活やめるってよ」(2012・日)やももいろクローバーZの「幕が上がる」(2015・日)を手がけている。

 瀬々敬久は本作の監督でもあり、脚本も手がけている。助監督から監督になった正統派。初期はピンク映画を撮っていたが、HYDEとGacktが共演した近未来無国籍アクションの「MOON CHILD」(2003・日)を監督・脚本。やっぱりピンクをやってきた人は何でも撮れる。その後メジャー作品の「フライング☆ラビッツ」(2008・日)と「感染列島」(2008・日)も撮っている。が、その後しばらくマイナーな作品が続いて、本作は久々のメジャー作品。

 公開初日の初回は舞台挨拶があるらしく、2回目をムビチケカードで金曜に確保。当日は12〜13分前に開場。下は小学生くらいから、上は中高年まで、割と幅広かった。男女比は4.5対5.5くらいで、やや女性が多かった。最終的には301席に8割くらいの入り。さすが若手のイケメンが出ているだけのことはある。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は…… 1960年代っぽい町並みや車、人々が出できて、ナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンって、あのスパイTVドラマ? 四角の枠付き「コードネームU.N.C.L.E.」は、ナチの残党を追うため、CIAの敏腕エージェント、ナポレオン・ソロと、KGBの敏腕エージェントイリヤ・クリヤキンがタッグを組むという話らしい。オードリー・ヘップバーンの「ティファニーで朝食を」(Breakfast at Tiffany's・1961・米)的女性のファッションもすばらしい。監督はなんとガイ・リッチー。どうなるんだろう。11/14公開。


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