2015年6月28日(日)「天の茶助」

2015・バンダイビジュアル/松竹/オフィス北野・1時間45分

シネスコ・サイズ(表記なし、フィルムのマスク?)/表記なし(ドルビー・デジタル?)

(日PG12指定)

公式サイト
http://www.chasuke-movie.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

天国で、すべての人間の人生を書いている脚本家たちにお茶を配るお茶番頭の茶助(松山ケンイチ)は、ある日、脚本製作総指揮のあの方から「斬新」のプレッシャーをかけられた脚本家の1人、カンスケから相談を受ける。新城ユリ(大野いと)の脚本を書いているが、チャンスを何回も出しているのに、母の死後まったくしゃべらなくなってしまったというのだ。そして1人の脚本は多くの脚本に影響を与え、このままでは女に振られて盗んだ車で暴走するヤスオ(今野浩喜)に引かれて死んでしまうと。ユリに興味を持った茶助は、カンスケの「脚本に影響を受けない者なら救える。今なら間に合う。オレが脚本で助ける」の言葉を信じて、下界へと飛び降りる。

71点

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 画質、悪ッ!。昔の映画みたい。フィルムにこだわったということなのだろうか。全体の1割くらいだけ、良いと思えたところもあったが、ほかは暗いシーンが多いためか粒状性が目立ち、解像度が低く、色も良くなかった。過去のシーンは、その雰囲気を出そうとしたのだろうが、セピアというより緑かぶりした感じで、現代のシーンでもその色調のところがあり、意図が生かされていない感じ。もちろん、屋外のロケは日本映画らしく、いつも曇天みたいでコントラストが低い。グレーディング・アーティストという役割の人がクレジットされているのに。

 そんな画質の悪さよって、どうにも中身が入ってこない。集中できない。しかも、話の本筋は見えているのに、あえて脇道(サイド・ストーリー)にそれるようなところがあって、観客にはそれが本線に関係しないと明らかにわかっているのに、長々と描かれるので、次第に退屈になってきて、結果、眠くなる。105分が長い。シネスコ・サイズなのにカメラが動くのも(動きすぎほどではないが)それを助長しているようだ。

 そして、コメディなのだろうが、ほとんど笑えず、それは導入の失敗ではないかと思う。最初から「これはコメディです。どんどん笑っていいですよ」という合図とか記号を埋め込んでいてくれると、もっと笑いやすかったはず。観客は戸惑う。シリアスなファンタジーとどっちつかず。どちらをメインにするか明確にして欲しかった。

 物語の設定としては、よくある天使もの。「天国は待ってくれる」(Heaven Can Wait・1943・米)とか、「幽霊紐育を歩く」(Here Comes Mr. Jordan・1941・米)、リメイクの「天国から来たチャンピオン」(Heaven Can Wait・1978・米)とか。それも再リメイクされているくらい。TVでも「アナザー・ライフ〜天国からの3日間〜」(Twice in a Lifetime・1999〜2001・加)があった。変形としては、逆の悪魔とからむというパターンもある。たとえばリメイクだが「悪いことしましョ!」(Bedazzled・2000・米/独)とか。極端なところでは「コンスタンティン」(Constantine・2005・米/独)も。

 しかも、自分の意思でしゃべらない女って、ラストは叫ぶんだろうなって予想できる。それにしても、なぜシネスコ・サイズにしたんだろうか。必要なかった気がするというか、ビスタの方が合っていた気がする。音も曲なんかはサラウンドらしいが、一部はステレオっぽかった。

 茶助は松山ケンイチ。青森出身で、普段はちょっとなまりがある感じなのに、演技になるとまったくそれを感じさせない。「DEATH NOTEデスノート」(2006・日)のL役が強烈だった。「デトロイト・メタル・シティ」(2008・日)や「GANTZ」(2010・日)も話題になった。

 途上に降りた茶助を助ける骨董店の店主、種田は大杉漣。1980年代のピンク映画から始まり、TVに映画に、まあ良く出ている人。SUBU作品には「弾丸ランナー」(1996・日)にも出ている。最近では「バンクーバーの朝日」(2014・日)に出ていた。

 茶助を手伝うラーメン屋の店主で元ボクサーの彦村は伊勢谷友介。過去にホラーの「伝染歌」(2007・日)や「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007・日)、「ブラインドネス」(Blindness・2008・加/ブラジル/日)などがあり、最近作は残念な「ジョーカー・ゲーム」(2014・日)、「新宿スワン」(2014・日)など。

 アベマリアを歌いながら登場し、去っていき、強烈な印象を残す、茶助の妹と称するチャコは玉城ティナ。沖縄出身で、アメリカ人の父と日本人の母を持つ。講談社主催のアイドル・コンテストでグランプリを獲得し、ViViの専属モデルに。本作は劇場長編映画デビュー作。今後の活躍に期待したい。

 脚本・監督はSABU。原作もSABUの同名小説(幻冬舎)。「ワールド・アパートメント・ホラー」(1991・日)や「夜逃げ屋本舗」(1992・日)なんかに出ていた人で、田口トモロヲや堤真一の「弾丸ランナー」で劇場長編映画監督デビュー。ボク的には堤真一の「MONDAYマンデイ」(1999・日)が好きだ。「うさぎドロップ」(2011・日)で松山ケンイチと仕事をしている。

 出てくる銃は……白塗りの警官、弾丸ジャッキーのオラキオがもっているのは2インチのニュー・ナンブらしいリボルバー。ヤクザは4インチのリボルバーとコルト32オート、スナイパーはサイレンサー付きのレミントンM700の黒とシルバー。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は15分前くらいの開場。最初はほぼ中高年で、15〜16人中、女性は2人。「長靴下のピッピ」みたいな髪のオバサンとやたら白いオバサン。その後、やや女性も増えたものの、CM・予告が始まった時点では301席に50人くらいの入り。うーむ。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いていて、気になった予告編は…… なかなかタイトルがデスいらいらしたのは左右マスクの「ヒロイン失格」。この予告が失格だ。少女コミックの映画化が多いなあ。9/19公開。

 なんとすでに公開済みの四角枠付き「THE NEXT GENERATIONパトレイバー首都決戦」がディレクターズ・カット版で改めて上映。27分長いらしい。10/10公開。

 左右マスクの「合葬」は杉浦日向子原作の幕末の彰義隊を描くものらしい。写真の構成で動かず、コントラストも低く、色が浅かった。大丈夫か。9/26公開。

 マスクが左右に広がって、映画泥棒のあと暗くなって本編へ。


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