2015年7月18日(土)「インサイド・ヘッド」

INSIDE OUT・2015・米・1時間34分

日本語字幕:手書き風書体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(1.85、シネスコにマスク上映、デジタル)/ドルビーATMOS、DATASAT(IMDbではドルビー・デジタルも)

(米PG指定)(日本語吹替版もあり、3D上映もあり)

同時上映「南の島のラブソング」(短編)

LAVA・2014・米・7分

日本語字幕:手書き風書体下、翻訳者名表記なし/シネスコ・サイズ(2.39、デジタル)/音響表記なし

(米G指定)(日本語吹替版もあり、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movie/head.html
(全国の劇場リストもあり)

パパ(声:カイル・マクラクラン)とママ(声:ダイアン・レイン)に初めての女の子ライリー(声:ケイトリン・ディアス)が生まれてくる。最初に喜びの感情ヨロコビ(声:エイミー・ポーラー)が脳に芽生え笑うが、やがてカナシミ(声:フィリス・スミス)、ビビリ(声:ビル・ヘイダー)、ムカムカ(声:ミンディ・カリング)、イカリ(声:ルイス・ブラック)の感情も生まれる。5つの感情が司令部で協力しながらライリーの記憶を作り、それらはいつか記憶の島となり、いくつもの島ができて、それらがライリーの性格を形作っていった。ところが、ライリーが11歳の時、一家パパの仕事の関係で都会に引っ越す。新しい家は古くて小さく、手違いで家具が届かず、夫婦げんかが始まる事態に。学校でもライリーは馴染めず、孤立し、得意のホッケーをやろうと地元のチームの入団テストを受けるが、緊張で失敗して、途中で投げ出してしまう。ライリーはミネソタの友達のことや楽しかったホッケーのことを思い出し、ミネソタにもどろうと考える。

75点

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 IMDbで8.7点という超高評価。たしかに面白かった。そして感動した。ラストには思わず涙が流れそうに。ただ、それは、動物と子供を出せば当たる式のパターンで、子供がかわいくて、その子を思う親の気持ちが良く伝わってくるから。親の何気ない「あなたが笑顔でいてくれればいいの」という一言による実は過大な期待と、それに応えようとしてできないことへの子のいらだち…… けなげで、かわいそう。現実世界でこんなかわいい子供を虐待する親がいるのかと思うと信じられない思い。

 しかし考えて見ると、この映画はほとんど何も起こっていない。タイトル通り、頭の中で起こっている話であって、それ以外の客観的な部分では、単に田舎から引っ越してきた11歳の女の子が、新しい環境に馴染めず、一人で元の家に帰ろうとするがやっぱり止めるという話。実際何も起こっていない。しかもありがちだし。

 その上、話が概念的というか理論的すぎて、きっちり脳の仕組み、記憶のメカニズムをそっくりおとぎ話的なストーリーに移し替えたような印象。頭の良い人が計算して作ったような、そんな感じ。奇想天外な発想もなければ、想像を超えるような展開もない。宮崎駿と比べては申し訳ないかもしれないが、少女の引っ越しから始まる「千と千尋の神隠し」(2001・日)はお湯屋からもののけ、魔女や神の世界まで行ってしまうのだ。せっかくのアニメなんだから!

 記憶の島とか、長期記憶とか、イマジナリー・フレンド(空想の友達)とか、よくキャラクターというか絵にしていると思うが、心理学や脳科学の教科書じゃないんだから。それでいて、字幕はあきらかにジョイと言っているのに「ヨロコビ」、サドネスを「カナシミ」、フィアーを「ビビリ」、ディスガストを「ムカムカ」、アンガーを「イカリ」と無理に置き換えている。意味があるんだろうか。たいして短くなっていないし、キャラクターの名前なんだから訳す必要なんてないだろう。姿、形、色もそのイメージになっているわけだし。たぶん登場順に、科学的に正しい脳に順番に芽生える感情なのだろう。そんな感じさえしてしまう。基本的に字幕版は大人が見るんだから。

 声の出演は、あまり有名な人が出ていないが、それでもパパがカイル・マクラクラン。ママがダイアン・レイン。カイル・マクラクランと言えばTV「ツイン・ピークス」(Twin Peaks・1990〜1991・米)のFBI捜査官クーパーを演じていた人。映画だとSF大作「砂の惑星」(Dune・1984・米)や衝撃のバイオレンス・ミステリー「ブルーベルベット」(Blue Velvet・1986・米)、SFホラー・アクションの傑作「ヒドゥン」(The Hidden・1987・米)などに出ている。最近はTVが多かったようで、ちょっとスクリーンで見てみたい気もする。なんでも、「ツイン・ピークス」の新シリーズが2017年から放送されるらしい。気になる。

 ダイアン・レインはモデル出身で、「リトル・ロマンス」(A Little Romance・1979・米/仏)でスクリーン・デビュー。「アウトサイダー」(Outsider・1983・米/仏)や「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire・1984・米)で一気に有名になり、現在もずっと活躍中。最近だとネット犯罪を描いた「ブラックサイト」(Untraceable・2008・米)の主役の捜査官や、話題となったダークな「マン・オブ・スティール」(Man of Steel・2013・米/加/英)の育てのママなどを演じている。

 脚本は、監督でもあるピート・ドクター、メグ・レフォーヴ、ジョシュ・クーリーの3人。ピート・ドクターは「モンスターズ・インク」(Monsters, Inc.・2001・米)の原案と監督をやった人。その後「ウォーリー」(WALL瓲・2008・米)の製作総指揮と原案、「カールじいさんの空飛ぶ家」(Up・2009・米)の原案・監督・脚本を手がけている。子供がこの人のモチーフのひとつなのかもしれない。

 メグ・レフォーヴは脚本家でプロデューサー。ただ脚本は初めてで、以前実写のドラマの「イノセント・ボーイズ」(Innocent Boys・2002・米)をジョディ・フォスターらとともに製作している。

 ジョシュ・クーリーは俳優というか声優の方の活躍の方が多く、脚本はビデオや短編を含め3本で、劇場長編映画の脚本は初めて。本作ではジャングルスというキャラクターの声を当てている。

 共同監督はロニー・デル・カルメン。TVなどでは監督しているが、劇場長編映画の脚本は初めて。これまではTVアニメのストーリーボード・アーティストをやっていたようだ。その後、劇場版アニメ「エル・ドラド/黄金の都」(The Road to El Dorado・2000・米)のアーティスティック・スーパーバイザー、「スプリット」(Spirit: Stallion of the Cimarron・2002・米)、「レミーのおいしいレストラン」(Ratatouille・2007・米)、「カールじいさんの空飛ぶ家」のストーリーボード・アーティストと、ドリーム・ワークスのアニメを手がけていた。2000年にピクサーに移ったらしい。

 公開初日の2D字幕版初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にたまったポイントでオンライン予約。当日は30分前くらいに劇場の入り口が開き、15分前くらいに行ったら開場していた。最初は17〜18人くらいのうち女性が6人ほど。ほぼ中高年だったが、10分くらい前から若い人も少し増えたが、暗くなってからはどのくらいいたのか不明。男女比は6対4くらいでちょっと男性が多い感じに。184席の7.5割くらいが埋まった。キャパが小さいが、新宿は3つの劇場でやっているので、まあまあか。

 スクリーンは最初からカーテンがなく、角丸のシネスコでむき出し。気になった予告編は…… 「マイ・インターン」はアン・ハサウェイがCEOで、そこにロバート・デ・ニーロが新人としてやってくる話らしい。10/10公開。

 写真構成の「ブリッジ・オブ・スパイ」は、スティーヴン・スピルバーグ監督、コーエン兄弟脚本、主演トム・ハンクスで描く実話の映画化。2016年公開。公式サイトはまだない模様。

 「シー・オブ・ツリー」はガス・ヴァン・サント監督、マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツで、日本の青木ヶ原の樹海での自殺を描くものらしい。2016年公開。

 左右マスクの「アントマン」は新予告に。意外と面白そうな感じ。どうだろう。9/19公開。

 左右マスクの「ミニオンズ」も新予告に。これを見る限り前作より面白そうな感じ。7/31公開。

 暗くなって、左右マスクでピート・ドクター監督のビデオ・メッセージ。さらに日本の子供や家族の写真を使った保険会社のCMのようなドリカムの日本版主題歌「愛しのライリー」のビデオ・クリップが流れて、シネスコの短編へ。それにしても、携帯は場内で点灯させるな! 隣の女のケータイが眩しくてもう。


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