2015年7月19日(日)「HERO」

2015・フジテレビジョン/ジェイ・ドリーム/東宝/FNS27社・2時間00分

シネスコ・サイズ(表記なし、Arriデジタル?)/音響表記なし(ドルビー・デジタル?)

(一部日本語字幕付き上映もあり)

公式サイト
http://www.hero-movie.com
(全国の劇場リストもあり)

コンパニオンの女性、三城紗江子(森カンナ)がネウストリア公国大使館の裏の路地で、徳本健也(新井浩文)が運転する車にはねられて死亡する。事件は東京地検城西支部の久利生公平(木村拓哉)と事務官の麻木千佳(北川景子)が担当することになる。一方、かつて久利生の事務官で現在は大阪地検難波支部の検事、雨宮舞子(松たか子)は広域暴力団の恐喝事件の証人として三城が裁判で証言する予定だったため、すぐに事務官の一ノ瀬隆史(大倉孝二)とともに東京に向かうと、捜査に加わる。事件の2時間前にパーティ会場で撮られた三城の写真には謎の外国人が一緒に写っており、事情を聞こうと大使館を訪れるも、まったく相手にしてもらえないどころか、外務省を通して抗議が来る始末。たとえ大使館の人間が殺害犯人だったとしても、治外法権により捜査はできないのだった。しかたなく雨宮と一ノ瀬は大阪へ帰るが、久利生はあきらめず、都内のネウストリア料理のレストランを見つけると、麻木を誘い食事に行き、ネウストリアがソーセージ好きで、ペタンクという競技好きだという情報を得る。やがて、そのレストランで大使館員らと親しくなると、ペタンクでの試合を申し込み、写真の男の情報を得ようとするのだが。

74点

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 さすがにTVでも高視聴率を取り、すでに1度劇場映画版も作られている人気作だけのことはある。面白い。たくさんのキャラクターが登場し、それぞれの魅力を発揮し、見せ場もちゃんとあって、チーム・ワークの良いところを見せる。シリアスな事件と謎と、ほどよいコメディ・タッチ。画質も色も一部を除いておおむね良く、音もクリアー。テーマ曲を聴くと気分が上がるし、みんながそろうと実に楽しい。ピンチがどんどん起きるが、どう切り返すのか、わくわくしつつ安心して見られる。

 ただし、それだけに「水戸黄門」的な展開というか、決して期待を裏切らない、逆に言うとパターンな展開。物語の構成・展開は国民的大ヒット・シリーズ「踊る大捜査線」(1997〜2012・日)とほとんど同じ気がする。あれもフジテレビか。ラストにはいつもは頼りにならなそうなスリー・アミーゴスみたいな上司が、部下のために役人生命を懸けて戦う。久利生と雨宮の微妙な関係は、そのまんま青島とすみれの関係に近いし…… たぶん上げればキリがない。それがヒット要因なのだろう。それを外していない。まあ横綱相撲というところか。

 そして、あえて言うと、印象としては映画というより特番、年2回くらいの2時間スペシャルという感じも。スケールも大きくないし、巨悪というほどでもないし、描いているのは事件の経過や犯人逮捕ではなく、事件に取り組む姿勢やチーム・ワーク、人間関係にあるわけで、こうならざるを得ないのかもしれない。ただ、ペタンクの試合での玉の配置を宇宙の惑星の配列に置き換えるCGは必要だったのか多いに疑問。室内にあるインテリアの地球儀に繋ぐのはいいとしても、長すぎるし無意味な部分が多い気がする。高価なCGで予算を使い切るためとか……。

 ギャグと言うか笑わせる部分はかなり成功していた気がする。受けを狙ったというより、受けた定番ネタを巧妙に織り込んだという感じ。わざとらしさはなく、それでいて期待を裏切らない。

 新しいキャラクターとしては外務省の松葉圭介に佐藤浩市、雨宮の事務官・一ノ瀬に大倉孝二、上司木下にイッセー尾形、お見合い相手の弁護士・谷口にアンジャッシュの児嶋一哉。意外と児嶋一哉が普通の感じでうまい。お笑い芸人というより一役者という感じ。

 レギュラー・キャラクターでは圧倒的に部長検事の川尻役の松重豊がいい。最近はコマーシャルにもよく出ているし、悪役から刑事役、シリアスからコメディまで、どんなキャラクターでも演じられる。1990年代から活躍しているベテランで、たくさんの作品に出ているが、たぶん人気を反映してだろう、最近はTVが多い。「リング」(1998・日)、「MONDAYマンデイ」(1999・日)や「EM/エンバーミング」(1999・日)、「修羅雪姫」(2001・日)に出ており、最近は「MONSTERZモンスターズ」(2014・日)や「ソロモンの偽証」(2015・日)に出ている。

 脚本は福田靖。本作のTVと映画のシリーズ、「HERO」(2006〜・日)シリーズ、NHKの大ヒット作「龍馬伝」(2010・日)などを書いた人。映画ではサイコ・ホラーの「催眠」(1999・日)や「海猿ウミザル」(2004・日)も書いている。

 監督は鈴木雅之。フジテレビの「世にも奇妙な物語」(1989〜・日)シリーズ、「ショムニ」(1998・日)シリーズ、「東野圭吾ミステリー」(2012・日)シリーズなどを演出している。映画では「GTO」(1999・日)、「プリンセストヨトミ」(2011・日)を監督している。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にたまった鑑賞ポイントで確保。当日は10分前くらいに開場。下は小学生くらいから、上は中高年まで、予想通り幅広い。女性が多く3.5対6.5くらいの感じ。最終的には607席が9.5割くらい埋まった。さすが人気TVシリーズの話題作。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は…… 四角の枠付き三谷幸喜監督の新作「ギャラクシー街道」は日本版の「宇宙家族ジェットソン」(The Jetsons・1962〜1988・米)みたいなSFドタバタ・コメディといった感じ。10/24公開。

 四角の枠付き「天空の蜂」は新予告。9/12公開。

 映写機のマスクが左右に広がって「アンフェアthe end」の予告。印象としてはまったく前回までと同じだが、大丈夫なのか。それとも「水戸黄門」的にファンがそれを求めているのか。ただ完結するらしい。本当? 9/5公開。

 映画泥棒の後暗くなって、本編へ。


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