2015年8月2日(日)「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」

2015・東宝/講談社/博報堂DYパートナーズ/日本出版販売/読売新聞社/朝日新聞社/JR東日本/KDDI/GYAO!・1時間38分

シネスコ・サイズ?(1:2.0〜2.2くらい、表記なし、REDデジタル?)/サウンド表記なし(ドルビー・デジタル?)

(日PG12指定)(IMAX版、4DX版、MX4D版、D-BOX版の上映もあり)

公式サイト
http://www.shingeki-seyo.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

大きな戦争の後、突如として巨人が現れ人類の大半を食い殺した。かろうじて生き残った人類は大きな三重の壁を作り、その内側で暮らすようになった。それ以来、100年が経つが、巨人の姿を見たものはなかった。そんなある日、壁の高さを超える想定外の超巨人が現れ、壁に穴を開けてしまう。そこから次々と巨人が入り込み、一番外側の農業地区の人類が食い殺される。混乱の中、幼なじみのエレン(三浦春馬)とアルミン(本郷奏多)はミカサ(水原希子)とはぐれてしまう。2年後、エレンとアルミンは調査兵団に加わり、先遣隊のシキシマ隊と合流し、最後の爆薬を回収して外側の塀の穴を塞ぐ任務に向かう。するとシキシマ隊としてシキシマ(長谷川博巳)と共に現れたのは、ミカサだった。

72点

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 PG12指定ということでか、かなり残酷。手足や首が飛び、血がほとばしる。気持ち悪くなった人もいたようだ。巨人は説得力があり、大迫力。まるで幽霊か妖怪のような不気味な存在感。音も立体的でクリアー。絵もコントラストが強めで力があった。

 ただ、ほぼ全編アクションにもかかわらず、98分が長くて眠かった。実写なのに、どうにもアニメ的。いかにもの臭いセリフ回しと、アフレコのせいで、実写っぽい生々さ、臨場感がない。作り物っぽい。時代劇じゃないんだから、実写とする以上は芝居がかったカッコ付けのセリフじゃなく、もっとリアルな生きた言葉を使って欲しかった。そして、アフレコはセリフがクリアに聞こえていいのだけれど、写っている絵と感情などで温度差ができてしまう。しかもうなるような声とか、あえぎのようなものが口と合わず、絵は何も言っていないのに「ううっ」とか言う声が聞こえるのは、アニメではOKでも実写では大きな違和感がある。ここが気になると楽しめない。ボクはダメだった。

 さらに、原作漫画やアニメでは舞台というか世界となるのは、ヨーロッパであって、ミカサという日本人的なキャラクターも出てくるとは言え、ドイツっぽいというかスイスみたいというか。だから調査兵団とかの組織も説得力があるわけだし、塀で守った町並みも違和感がないわけだ。さらに主人公はエレン・イェーガー。スペルが違うがJeagerがJ拡erだったら「猟兵」につながる。登場人物の名前やキャラクターはほぼそのまま受け継ぎながら、全員日本人というのもなあ……。この顔でエレン? アニメでは違和感がなくても、実写で外国人俳優を使って日本語ぺらぺら吹き替えでは、これまた違和感ありそうだが……。アルミンって金髪ッぽい感じだったのでは。そしてシキシマ隊のシキシマって、映画オリジナル・キャラ? まさか日本帝国海軍最初の神風特別攻撃隊の「敷島隊」?

 海外セールスとか考えれば英語ということになり、日本で作るのは難しくなりそうだ。2Dアニメ、やって3Dアニメまでだったのかも。それなら外国人の顔で日本語を話しても違和感はない。実写でもほとんど場面が特殊効果の合成になり、作るのであればアニメとかわらない。しかもほとんどの設定を受け継ぎながら、いきなり移動目標の場所が「門前町」って!! 日本かよ。BGMはほとんどクラシック調のピアノ曲なのに。

 CGは素晴らしい。たぶん世界レベル。巨人と人類が違和感なく一緒の画面にいた。唯一気になったのは、巨人が人間を食うため手に掴むと、昔の映画みたいになって、あきらかに合成とわかり、境界線がわかってしまう。どうしたんだろう。変! ここだけレベルが低い。

 男口調の女とか、キザ野郎とか、爆食いするイモ女とか……アニメではありとしても、実写ではありえない。「隊規を乱すって」セリフも、新撰組か、日本の戦記物ではないか。とてもバランスが悪い感じ。

 原作のエレン・イェーガーは本作では単にエレン。日本人であることの違和感をなくそうということなのだろうか。演じているのは三浦春馬。演出のせいかノっていないような気がした。大ヒット作「永遠の0」(2013・日)では現代で話を進めるメインのキャラクターを演じて良かった。同じ人と思えない。

 エレンの幼なじみミカサは水原希子。CMでよく見かけるが、映画としては「プラチナデータ」(2012・日)が印象的だった。本作は吹き替えのせいか、悪くないのにイマイチの印象。ヘタに見えてかわいそう。

 エレン、ミカサの幼なじみアルミンは本郷奏多。ヒット作「GANTZ」(2010・日)でも良い味を出していた。独特の存在感。つい最近「ストレイヤーズ・クロニクル」(2015・日)に出ており、突っ張った感じが良かった。

 イモをバカ食いしているサシャは桜庭ななみ。漫画的なキャラで、ミスキャストではないだろうか。まったく合ってなかった。この人もかわいそう。テレビ東京の深夜ドラマ「リミット」(2013)は、半分くらいの回数でやっていればすごく良かったかも。

 ゴーグルを掛けている超ハイテンションな女ハンジは石原さとみ。これもミスキャストでは。うまくないわけじゃないのに、まったく説得力なし。浮いていた。「こんなの初めて〜!」なんて、どういうセリフなんだよ。言わせたかっただけなんじゃないの。深夜のTVドラマ「霊能力者 小田霧響子の嘘」(2010)はものすごく良かったのに。

 本作の大人役はほぼすべてダメ。演技どうこうではなく、酷かった。ちっとも馴染んでいなかった。浮いていた。指揮官のクバルのベテラン國村隼、最初は守備隊の兵士で、後半、給食係で出てくる日本人的キャラ、ソウダのピエール瀧……最も酷かったのは原作に出てくるのか日本人的キャラのシキシマの長谷川博巳。みんなドヘタにしか見えなかった。

 100年ぶりに巨人が出てくるときの守備隊が装備していた銃は、なぜか旧日本軍のボルト・アクション・ライフル。たぶん三八式歩兵銃。イメージも旧日本軍のようだったし……。うーむ。

 冒頭の壁の内側の世界を描く導入シーンも、ガヤが妙にはっきり聞こえてわざとらしく、いかにも作り物といった感じ。のっけから入り込めなかった。気にならなかった人は良かったんだろうが。アニメ世代向けとか。

 原作は「別冊少年マガジン」(講談社)に連載中の、諫山創原作の同名漫画。コミックは全世界累計発行部数が5,000万部を突破しているらしい。これを脚本にしたのは渡辺雄介と町山智浩の2人。渡辺雄介は、残念な「ガッチャマン」(2013・日)や、超能力バトルを描いた「MONSTERZ モンスターズ」(2014・日)、そしてTVから劇場版も作られた「映画 ST赤と白の捜査ファイル」(2014・日)、そして残念な「ジョーカー・ゲーム」(2014・日)を書いている人。概してアクション系は向かないのかも。町山智浩は映画評論家でもあり、コメディ系映画の字幕監修などもやっている人。脚本は本作が初めての模様。

 監督は樋口真嗣。特撮監督として「ガメラ大怪獣空中決戦」(1995・日)で優れた技術を発揮し、やがて監督になった人。東宝で戦争秘話ものの「ローレライ」(2005・日)やSFパニックの「日本沈没」(2006・日)といった大予算の話題作を撮った、その後もアイドルのリメイク時代劇「隠し砦の三悪人THE LAST PRINCESS」(2008・日)や「のぼうの城」(2011・日)などの話題作を撮っている。実写のほか、アニメの「新世紀エヴァンゲリオン」(1995〜1996)シリーズやその劇場版にも関わっている。

 公開初日は、毎月1日は映画の日で誰でも割引料金1,100円で見られるということで、大混乱が予想されるためパスとして、反動で減るかもしれない2日目の2D通常版上映の2回め(初回は朝8時からで、モーニング・ショー状態)、新宿の劇場は通常の混み具合といったところ。10分前くらいに開場。観客層は人気漫画&アニメということでだろう、PG12指定ながら下は小学生低学年から、上は中高年まで幅広かった。男女比も半々くらい。最終的には301席に8割くらいの入り。映画の日の翌日なのに! これは驚いた。原作を知っている人が多いのだろうか。だとしたら、ギャップをどう感じたのだろうか。

 気になった予告編は……1対2.00くらいの比率で開いていたスクリーンに四角い枠付きの三谷幸喜のSFナンセンス・コメディ「ギャラクシー街道」は、コテコテだが若い人に受けていた。見たいねえ、とか。10/24公開。

 左右マスクのアニメ「BORUTO -NARUTO THE MOVIE-」は、アニメなのに長質が良くなかったんだろう。CM枠でビデオ画質だったとか…… 8/7公開。

 映写機のマスクが左右に広がって「図書館戦争 THE LAST MISSION」。もう完結した物語だと思っていたが、続きがあるのか。「ラスト・ミッション」ってよく聞くサブタイトル。10/10公開。


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