2015年8月9日(日)「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」

MISSION:IMPOSSIBLE ROGUE NATION・2015・米/香/中・2時間12分(IMDbでは131分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA、in Panavision)/ ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、DATASATも)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.missionimpossiblejp.jp
(全国の劇場リストもあり)

アメリカの議会で、IMFはイーサン・ハント(トム・クルーズ)らの独断専行により事態を悪くしているとして、CIA長官アラン・ハンリー(アレック・ボールドウィン)からの訴えで、解体のための公聴会が開かれていた。そのころ、イーサン・ハントは影のスパイ組織「シンジケート」により捕らえられ、謎の女(レベッカ・ファーガソン)から拷問を受けようとしていたが、そこに3年前に死んだはずの元エージェント、ヤニク・ヴィンター(ジェンス・ハルテン)が現れハントを殺そうとする。ところがハントは謎の女に助けられ、辛くも脱出。ロンドンからウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)に連絡すると、IMFが解体され、ハントがCIAにより国際手配されたことを知らされる。

85点

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 すごい! ドキドキが止まらない。面白い!! なんて言う映画だ、というか、これこそ映画か。130分ほどの間、非情で恐ろしくて、華麗でカッコいいスパイ・アクションの世界にどっぷりと浸ることができる。ノー・スタントの超絶アバンに、TVスタイルのカッコいいタイトル。あっという間に引き込まれた。

 華麗なスタント、危険なカーチェイス、秘密兵器、銃器、過激な暴力、格闘技、危機回避能力、超人的運動能力、そして優れた回転を見せる頭脳…… そこにピリリと効かせたスパイス的な恋愛感情と、友情、ドタバタではないシャレた笑いと、まあ、たくさんを盛り込んで観客を楽しませようと、次から次へとしかけてくる。とくにトム・クルーズは自身がプロデューサーでもあるからか、自ら体を張って危険なスタントに挑んでいる。映画人らしいショーマンシップ。プロだなあ。素晴らしい!

 130分ほどあるので、事件は簡単には解決しない。そこがまた良い。なかなか手ごわい。見ごたえがある。一体どうなるんだ。もちろんみんながハッピーになる結末へと向かうわけだが、そう見せないところも良い。トム・クルーズは決して裏切らない。とにかく全力を尽くして戦う。かっこいいけど、単なる良いカッコシーではない。がんばる姿が良いわけだ。決して諦めない。うーむ、すごい。

 音楽の使い方もうまいなあ。ここぞというとき、あのテーマ曲。カッコいい。クリアで立体的。アレンジも見事。銃声は「信じられないなら撃って」という女をボスが撃つ時がいちばん怖かったが、あとは、ちょっと迫力がなく漫画的な音だったかも。マズル・フラッシュなどもしょぼかった。デジタル・エフェクトを使っていないからか。それと画質は、あえて意図したのかもしれないが、全体に粒状性が目立って古いフィルムのようで、あまり良くなかった。

 ストーリー展開としては、いつものパターンか。裏切り者、組織解体…… ブライアン・デ・パルマ監督の第1作「ミッション:インポッシブル」(Mission: Impossible・1996・米)からそんなことを言っていた。今回オープニングのプロダクションのところで、中国の会社が2つ(1つはたしかアリババ)出た。バッド・ロボットやスカイ・ダンスと並ぶ製作会社ということらしい。セリフはないが中国人女優もスタッフ役で出ている。

 主演のトム・クルーズはプロデューサーでもあり、プロモーションのため今回も来日している。ファン・サービスもしっかり行い、本当にこの人は映画人に向いている人なんだろうなと思う。スゴイ人だ。人気シリーズは本作の他に酷い邦題だが「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)があり、続編が作られるらしい。なんと出世作「トップガン」(Top Gun・1986・米)の続編の話もある。もちろん本作の続編も。

 今回の相手役、謎の女はレベッカ・ファーガソン。美人なのにアクションもいけるようで、単なるカワイ子ちゃんではない感じ。スウェーデン出身で、ドウェイン・ジョンソンの「ヘラクレス」(Hercules・20144・米)で、王の娘ユージニアを演じていた人。この感じなら今後も期待できるのではないだろうか。

 今回、イーサン・ハントにつぐ活躍を見せるのは、コミカルな役どころのベンジーことサイモン・ペッグ。本シリーズには第3作「M:i:III」(Mission: Impossible III・2003・米/独/中)から出ているが、ブレイクしたのは「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏/米)という印象。いい味を出している。つい最近「殺し屋チャーリーと6人の悪党」(Kill Me Three Times・2014・米/豪)ではクールな殺し屋を演じていた。

 今回の敵、ソロモン・レーンはショーン・ハリス。非常に酷薄な感じが見事。見ていて恐ろしい感じがしたほど。すごい。「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)で隊員の一人を演じ、最近は「NY心霊捜査官」(Deliver Us from Evil・2014・米)でとりつかれた男を不気味に演じていた。

 前作から引き続きウィリアム・ブラントは「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(Avengers: Age of Ultron・2015・米)のジェレミー・レナー、ルーサー・スティッケルはヴィング・レイムスだが、本作以外では見かけない印象。そしてCIAの長官はアラン・ハンリーは「アリスのままで」(Still Alice・2014・米/仏)のアレック・ボールドウィン。イギリスMI6の冷酷な上司アトリーは「マジック・イン・ムーンライト」(Magic in the Moonlight・2014・米/英)のサイモン・マクバーニー。

 原案(ストーリー)は、監督でもあるクリストファー・マッカリーとドリュー・ピアースの2人。ドリュー・ピアースは「アイアンマン3」(Iron Man 3・2013・米/中)の脚本を書いている。脚本はクリストファー・マッカリー。傑作ミステリー「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)の脚本、なかなか面白かったアクション「誘拐犯」(The Way of the Gun・2000・米)の監督・脚本、トム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)の脚本を手がけた後、アクション・ミステリー「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏/伊)の脚本を書いて、再びトム・クルーズと組みアクション「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)の監督・脚本を手がけている。さらに、残念なファンタジー「ジャックと天空の巨人」(Jack the Giant Slayer・2013・米)の脚本をはさんで、三たび、トム・クルーズの「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(Edge of Tomorrow・2014・米/加)の脚本を書いている。トム・クルーズの見せ方は知り尽くしているということか。

 銃は、冒頭、イーサンが捕まったとき謎の女イルサが持っていたのはP226のサプレッサー付き。シンジケートの男達はAKS74U。キューバではイーサンがガバメントを、突入部隊がM4カーピンを使用。劇場でイルサがフルートから組み立てる狙撃銃は映画オリジナル・デザインだと思うが、マガジンはM1カービンのようだった。シンジケートのボスがイルサを撃とうとするのはたぶんグロック。

 マスター・アーマラーはサイモン・アサートン。キャリアは長く1981年からクレジットされているようだが、話題の大作だと「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)ではすでにマスター・アーマラー。銃もなかなか良かった「コールド・マウンテン」(Cold Mountain・2003・英/米ほか)や「ミュンヘン」(Munich・2005・仏/加/米)を手がけていて、トム・クルーズとは「ワルキューレ」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で仕事をしている。やはりチーム・トム・クルーズか。最新作は戦車映画「フューリー」(Fury・2014・米/中/英)。わりとリアルでありながらレアな銃を持ってくる人のようだ。本作でもちょっとひねって欲しかった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケで確保。当日は10分前くらいに開場。20代くらいの若い人から中高年まで、比較的幅広い観客層。男女比も最初はほぼ半々くらい。最終的に男女比は4.5対5.5くらいでやや女性が多くなった。さすがトム・クルーズ。予告が始まってもぞろぞろと人が入ってきて、580席がほぼすべて埋まった。すばらしい。

 スクリーンはシネスコで開いており、明るいまま始まった予告で気になったのは…… 四角い枠付きの「天空の蜂」は新予告。果たしてアクションがどうか。9/12公開。

 枠付きの「ピクセル」も新予告に。面白そうだが、悪ふざけになっていなければいいが。9/12公開。

 枠付きの「ビッグゲーム 大統領と少年ハンター」は、夏休みの子供向けっぽい感じが。サミュエル・L・ジャクソンといえどヤバいかも。8/15公開。

 スクリーンの映写機側のマスクが広がって、シネスコになって本編へ。中国の製作会社らしいロゴが2つ。1つはアリババだった。


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