2015年8月23日(日)「日本のいちばん長い日」

THE EMPEROR IN AUGUST・2015・松竹/アスミック・エース/テレビ朝日/木下グループ/WOWOW/巖本金属/読売新聞/中日新聞・2時間16分

シネスコ・サイズ(デジタル? 表記なし)/ドルビー・デジタル

(一部、日本語字幕版もあり)

公式サイト
http://nihon-ichi.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1945年4月、鈴木貫太郎(山崎努)は、昭和天皇(本木雅弘)から直接、「首相として組閣して欲しい」と頼まれ、承諾する。鈴木はもっとも難しい陸軍大臣に、徹底抗戦派の阿南惟幾(あなんこれちか、役所広司)を指名する。陸軍省は「本土決戦」を条件に承諾するが、内閣発足後の5/25に航空機250機による東京大空襲があり、東京はほとんど焼け野原となり、海軍省は焼け落ち、宮殿も焼け落ちてしまう。7/27には連合軍からポツダム宣言が発表され、日本は降伏を迫られるも、ソ連が入っていないこと、期限が書かれていないとなどを理由に黙殺する。ところが8/6広島に原子爆弾が投下される事態となり、鈴木は最高戦争指導会議で意見がまとまらないことを逆手にとり、ルールを破って天皇の判断である「聖断」を仰ごうとする。8/9には長崎にも原爆が投下され、ソ連が参戦するに及び、天皇はポツダム宣言を受諾するしかないとする。戦争終結へ向け動き出す最高戦争指導会議だったが、陸軍は本土決戦を主張し、クーデター派と、過激派に分裂する。

74点

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 さすが「突入せよ!「あさま山荘」事件」(2002・日)の原田真人監督。「突入せよ!「あさま山荘」事件」のような会議を中心とした展開はわかりやすく、面白く、小さな笑いもありながら、緊張感もあってリアルな展開で見せる。実際にこんな展開だったんだろうなという印象。たぶんオリジナル版というか、最初の映画化である岡本喜八版「日本のいちばん長い日」(1967・日)と比べると、その後新証言などで明らかになった事実も盛り込み、天皇の役割がずっと大きなものになっている。

 ただ、構成が前半が会議中心のドラマ的なのに対して、ラスト30分くらいがアクション・パートとなっていて、違うものを2つ繋いだような感じもした。ドラマ・パートは戦争中であり、常に空襲もあるのに、戦争っぽい感じがしない。その意味での緊張感はない。ところがアクション・パートはいきなりきな臭くなり、青年将校たちは何をやるかわからないヤバい雰囲気になり、血なまぐさい戦争映画になる。気持ち悪いくらい。そして暴走の怖さ。

 岡本喜八版「日本のいちばん長い日」では、玉音放送盤探しが大きなパートになっていて、緊張感もあって強く印象に残ったが、本作では小さなエピソードの1つになってしまった感じ。前半のドラマ・パートをどれだけ楽しめるかで評価が変わってくるかもしれない。ボクは「突入せよ!「あさま山荘」事件」のように楽しめた。

 群像劇的な構成なので、たくさんの出演者がいて、それぞれ有名俳優が演じている。印象に残ったのは、昭和天皇を演じた本木雅弘、首相鈴木貫太郎を演じた山崎努、内閣書記官長の迫水久常を演じた堤真一、そして陸軍大臣阿南惟幾を演じた役所広司ら。役所はつい最近「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(2011・日)で主役の山本五十六を演じていたなあ。ちょっとかぶる感じ。

 また、出番は少ないが、東部軍管区の司令官、田中静壱を演じた木場勝己も存在感があった。あと東条英機はスキンヘッドだから麿赤兒かと思ったら、違った。麿赤兒は侍従長を演じていた。演じていたのは中嶋しゅうという人。舞台を中心に活躍している人らしいが、なんだか雰囲気がそっくり。

 岡本喜八版では、昭和天皇を松本幸四郎、首相鈴木貫太郎を笠智衆、内閣書記官長の迫水久常を加藤武、陸軍大臣阿南惟幾を三船敏郎が演じている。本土決戦を主張し反乱を起こす青年将校、松坂桃李が演じた畑中少佐は黒沢年男が演じていた。

 原作は、1967年の岡本喜八版は大宅壮一編の「日本のいちばん長い日」で、本作の原作は半藤一利著の「日本のいちばん長い日決定版」(文春文庫)。

 脚本・監督は原田眞人。「突入せよ!「あさま山荘」事件」もそうだが、「金融腐食列島〔呪縛〕」(1999・日)や面白かった「KAMIKAZE TAXI」(1995・日)なども主演は役所広司。ホラーの「伝染歌」(2007・日)も面白かったし、「クライマーズ・ハイ」(2008・日)も素晴らしかった。最近では「駆け込み女と駆け出し男」(2015・日)も監督・脚本を手がけているが、見ていない。

 使われていた銃は、一般兵士がたぶん三八式歩兵銃、若手将校は九四式自動拳銃、コルト32オート、FN M1910。機銃掃射するマシンガンは九九式軽機関銃だったか、九ニ式重機関銃だったか、メモし忘れた。松山ケンイチ演じる警備隊長の佐々木武雄はモーゼルC96を持っていた。銃器特殊効果はBIG SHOTの納富貴久男。Vシネの「タフ」(1990・日)あたりから、ずっと原田眞人監督作品に関わっている。

 公開16日目の初回、ずいぶんと経つのに初回は8時30分開始。ムビチケで金曜に確保して、当日は10分前に開場。予想通りほとんど中高年で、男女比は7対3くらいで男性が多かった。最終的には278席の4.5割くらいが埋まった。これは素晴らしい。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は…… 左右マスクのスタンダード「黒衣の刺客」はこの劇場でもやるらしい。でも前売り券はなし。9/12公開。

 左右マスクの「残穢ざんえ-住んではいけない部屋-」はチラシでは恋愛物か女の戦い物かと思ったが、主人公は女性小説家で、一通の手紙が届いて、心霊現象が起きているというので、調べ始めるという話らしい。かなり怖そう。1/30公開。

 「合葬」は幕末の彰義隊を描く時代劇。9/26公開だが、ムビチケはもちろん前売り券もない模様。どうなってる? やばいのか。

 映写機側のマスクが左右に広がって、本編へ。


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