2015年8月29日(土)「ビッグゲーム 大統領と少年ハンター」

BIG GAME・2014・フィンランド/英/独・1時間31分(IMDbでは90分、米版110分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田理枝/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri)/表記なし(IMDbではドルビー・デジタル)

(フィンランドK-12指定、英15指定)

公式サイト
http://biggame-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

フィンランドの山岳地帯で暮らす少年オスカリ(オンニ・トンミラ)は13歳の誕生日に、ハンターとして一人前になったことを証明するため、その地方の儀式として1人で森に入って狩りをしなければならなかった。ちょうどその時、ヘルシンキでの会議のためフィンランド上空を飛んでいたアメリカ大統領ムーア(サミュエル・L・ジャクソン)を乗せたエアフォース・ワンは、大統領警護官モリス(レイ・スティーヴンソン)の裏切りにより何者かによるミサイル攻撃を受ける。ムーアは脱出ポッドで脱出、機は墜落する。たまたま近くにいたオスカリは大統領を助け出すが、すぐに追っ手がやってくる。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 ハリウッド・スターを使ったフィンランド映画とは驚き。しかもほとんどストーリー展開までハリウッド・パターン。ただ子供向けに作っておらず、リアルに描こうとしているところもあり、コテコテではないので、ありそうな大人のファンタジーに仕上がっている。もっとわざとらしいかと思ったが、意外としっかり作られていて、楽しめた。ちょっと事件の背景や動機、目的などは分かりにくいが。そこに重点は置かれていないのだと思う。

 いいのは、ハンターとして一人前になる儀式、大人への成長という部分が押しつけがましくなく、自然なこと。そして父は13歳でクマを獲っていて、少年には大きなプレッシャーが掛かっていながら、根性はあるのに、弓も引ききれずヘナチョコなのがいい。つまり13歳らしい少年に設定されている。スーパー・ヒーロー的な活躍はしない。「森は自分に見あった獲物を与えてくれる」という教訓も真実味が感じられた。

 そして、悪役は徹底的に悪い。結構残酷だし、凶悪。アクションものはこうでないと。観客が思わず主人公たちを応援するようになるのが理想的。本作はちゃんと応援できた。最後に黒幕とおぼしき男が消えて、脅威が残るあたりはフィンランド・テイストなのだろう。

 とは言え、少年は地味で、たぶんサミュエル・L・ジャクソンが出ていなかったら、見なかったかもしれない。ただ、91分は短い。何のひねりもなく、スムーズに物語は流れて終わる。だから少年のがんばった感が薄い。アメリカ版の110分ものを見てみたいところ。

 主演の少年オスカリはオンニ・トンミラ。本作の監督のヤルマリ・ヘランダーの甥だそうで、フィンランドのヘルシンキ生まれ。父親のタピオを演じたのは、本当の父親のヨルマ・トンミラなんだとか。ちょっと雰囲気がイギリスの俳優で「メイズ・ランナー」(・2014・)に出ていたウィル・ポールターに似ている気がする。

 アメリカ大統領はサミュエル・L・ジャクソン。まあ、いろんな作品に出ている。そしてよく出てくれたなと。この人が出ていると、それだけで説得力が出るということはあるだろう。B級にも良く出ている感じだが、最近はニック・フューリーを演じているためか、SF系が多いような。近作はまもなく公開の「キングスマン」(Kingsman: The Secret Service・2014・英)。

 裏切り者のシークレット・サービス、モリスはレイ・スティーヴンソン。「パニッシャーウォー・ゾーン」(Punisher: War Zone・2008・米/加/独)で主人公を演じた人。デンゼル・ワシントンのSFアクション「ザ・ウォーカー」(The Book of Eli・2010・米)ではなかなかの悪役を演じていた。ただその後あまり作品には恵まれていない感じ。本作の前に残念なB級SF「ダイバージェント」(Divergent・2014・米)に出ている。本作は、なかなかの憎たらしさ。

 ほかにもハリウッド映画でよく見る将軍役のテッド・レヴィン、副大統領のヴィクター・ガーバー、顧問のジム・ブロードベントらが出演している。

 監督・脚本はフィンランドのヘルシンキ生まれのヤルマリ・ヘランダー。オンニ・トンミラで出た「レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜」(Rare Exports・2010・フィンランドほか)が発の劇場長編映画監督・脚本作品らしい。短編映画から広告業界へ進み、賞を受賞するなどして劇場作品へ行ったと。

 出てきた銃は、中東系の男達が折り畳みストックのAKSかAKMS。大統領機の脱出ポッドに入っているのがH&KのMP7で、「ボルトを引け」というギャグに使われている。シークレット・サービスのモリスは引き出し式ストックのMP5。アメリカ軍の特殊部隊はM4カービンだが、HK416もあったような……。

 公開15日目の初回(といっても、ほぼお昼)、新宿の劇場は全席指定で、金曜にポイントで確保。当日はアニメの新作で劇場は大混雑。次回を待つ人と、ドリンクなどを求める今セッションの列とがつながるほど。床も見えないくらい。すごいなあ。10分前に開場。さすがに2週目を過ぎると、もっとも小さい劇場での上映か。ただ子供向けのような予告とは裏腹に、メインは他の映画と同じく中高年。映画好きの中高年は何でも見るなあと。若い人も少しいた。女性は1/4ほど。最終的には115席の5割くらいが埋まった。ハリウッド大作でもなく、子供向け風に広告していたわりには良いほうではないだろうか。

 スクリーンはシネスコで開いていて、明るいまま始まったCMに続き、ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったものは…… 四角の枠付きの「アデライン 100年目の恋」は普通のラブ・ストーリーかと思ったら、1937年に自動車事故を起こした女性、アデラインが28歳のまま歳を取らなくなり、2014年の今も生き続けているというお話。ありがちではあるが、ハリソン・フォードやエレン・バーキンも出ている。これは見る価値ありかも。10/17公開。

 四角の枠付き「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 ディレクターズカット」はs゛うやら女パイロットの灰原零にスポットを当てた内容で、27分の映像が追加されているという。10/10公開。

 左右マスクの「アース・トゥ・エコー」はジュブナイルもの、子供のSFファンタジーらしい。少年たち、UFO……。ティーザーなのでよくわからないが、面白そうではある。10/24公開。公式サイトはまだない模様。

 映写機のマスクが左右に広がって、暗くなって、カメラ男のあと、松竹120年と出て本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ