2015年9月26日(土)「アントマン」

ANT-MAN・2015・米・1時間57分(IMDbではディレクターズ・カット版は132分)

日本語字幕翻訳:手書き風書体下、森本 務/日本語字幕監修:テリー伊藤/ビスタ・サイズ(1.85、デジタル、Arri ALEXA、Panavision)/ドルビー・デジタル、ドルビーAtmos(IMDbではDATASAT、SDDSもあり)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映もあり)

公式サイト
http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html
(全国の劇場リストもあり)

1989年、科学者のハンク・ピム教授(マイケル・ダグラス)は、自身が発見したピム粒子を応用した原子間の距離を縮める技術を開発するが、理論がメンバーに盗まれたとして国際平和維持組織「シールド」を抜けると、その技術開発を凍結し秘匿してしまう。そして現在、情報工学の学位を持つスコット・ラング(ポール・ラッド)は、勤務していた企業がぼったくりをしていることを知り、会社のシステムに侵入して被害者に損害分を返したことで有罪となり、刑務所に収監され、ようやく出所の日を迎えていた。迎えに来ていたのは、刑務所で知りあったルイス(マイケル・ペーニャ)。その後スコットは31アイスクリームの仕事を得るが、犯罪歴がばれてクビになってしまう。実は、スコットには別れた妻との間に幼い娘キャシー(アビー・ライダー・フォートソン)がおり、元妻に養育費が払えないことで娘との面会も拒絶されていた。そこで、ルイスの誘いに乗って、犯罪者仲間のカート(デヴィッド・ダストマルチャン)とデイヴ(ティップ・“T.I.”・ハリス)とともに、地下にお宝を隠していて、留守にしているという富豪の家に侵入することに。同じ頃、ピム教授が設立したピム・テック社では、ピム教授の助手だったダレン・クロス(コリー・ストール)が社長となり、ピム粒子の研究から独自に縮小技術を開発、それを生物にも応用しようとしていた。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 思ったよりコメディ寄りで、ほかのマーベル作品に比べると軽い。その分、見終わったあともスッキリさわやかな感じだが、何も残らない感じも。デート・ムービー的には最適かも。TVのファミリー・ムービー的でもあった。TV的正統派ヒーロー・ムービー。ちょっと懐かしい感じもあり、安心して見られる。絶対、悲惨なことにはならず、ハッピー・エンドで終わるという。だから、あまりハラハラ、どきどきもしない。

 たぶんリアルに描くと、主人公は追いつめられると犯罪に逃げるタイプで、犯罪に誘い込む悪い仲間たちもいる。刑務所に入っていたことがわかると仕事をクビになり、離婚して娘にはなかなか合えず、しかも元妻の再婚相手が警察官という、実に悲惨な話。これを明るくさわやかに描いているのだから、凄い才能なんだろう。リアルを期待する人には評価は低いかもしれないが、楽しさを期待する人にはたぶん受けるだろう。IMDbでは7.7点の高評価。

 これが成立したのは、主人公を演じるポール・ラッドのキャラクターも大きいのだろう。おバカキャラではないし、誠実そうに見え、ちょっと外れたことはやるがバカはしない。そてハンサム(イケメン)で、優しくて、娘思いで、意外と決めるところはカッコいいし、とっさの判断が素晴らしく頭も良い。そのイメージにピッタリ。さわやか。

 他のマーベル・コミックとリンクする部分も多く、「アベンジャーズ」(The Avengers・2012・米)シリーズとも重なっている。実際ファルコンも同じ役者で出てくるし、ラストにはアベンジャーズからアントマンに声が掛かり、ラストのラストではキャプテン・アメリカも登場して、「我々だけか」との問いにファルコンが「もう一人いる」と答えて、「アントマンはもどってくる」の文字で終わる。劇場を出て行く時、後ろの方で女性が「もう「アベンジャーズ」とかとの関連が多くて、見てないとわからない感じになってきたね」と言っていた。確かに、その通りの感じ。製作者側は、この点に少しは留意したほうが良いのではないだろうか。本作もシリーズに取り込まれそうだが。

 スコット・ラングはポール・ラッド。コメディ系の作品が多い人で、しかもスティーヴ・カレル系やベン・スティラー系、アダム・サンドラー系で、日本では受けない作品がほとんど。結果、ほとんどが日本劇場未公開で、たくさんの作品に出ているにも関わらず、日本ではほとんど知られていない。公開されたものだと「ナイトミュージアム」(Night at the Museum・2006・米/英)、「40歳の童貞男」(The 40 Year Old Virgin・2005・米)、「寝取られ男のラブ♂バカンス」(Forgetting Sarah Marshall・2008・米)などが並ぶ。本作のプロモーションで日本にも来ていたそうで、日本のバラエティなどの出た映像を見ると、とても良い人のようだが、本作がブレイクのきっかけとなるか。

 相棒のルイスはマイケル・ペーニャ。「クラッシュ」(Crash・2004・独/米)や「ザ・シューター/極大射撃」(Shooter・2007・米)の名優で、つい最近もブラッド・ピットの単車戦映画「フューリー」(Fury・2014・米/中/英)に出ていた。その人が、このライトなコメディ・タッチ。さすが名優としか言い様がない。おバカなチンピラにしか見えない。

 ハンク・ピム教授はマイケル・ダグラス。「ウォール・ストリート」(・2010・)のあと病気治療でしばらく映画を遠ざかっていたようだが、本作では元気な姿を見せてくれている。「恋するリベラーチェ」(Behind the Candelabra・2013・米)はTVムービーらしいが日本ではアート系で劇場公開され、評価も高かったらしい。大人のファンタジー「ラストベガス」(Last Vegas・2013・米)も面白かったし、だいたい良い作品に出ている。

 ハンク・ピム教授の娘、ホープはエヴァンジェリン・リリー。人気TV「LOST」(Lost・2004〜2010・米)シリーズのケイトを演じた人。映画では爆弾処理班を描いた「ハート・ロッカー」(The Hurt Locker・2008・米)やロボット格闘技「リアル・スティール」(Real Steel・2011・米/印)、「ホビット 竜に奪われた国」(The Hobbit: The Desolation of Smaug・2013・米/ニュージーランド)シリーズにもタウリエル役で出ている。

 助手だったダレン・クロスはコリー・ストール。人気TVシリーズ「LAW & ORDER:LA」(Law & Order: Los Angeles・2010〜・米)で現場の刑事を演じていた人。映画では「ミッドナイト・イン・パリ」(Midnight in Paris・2011・西/米/仏)やジェレミー・レナーの「ボーン・レガシー」(The Bourne Legacy・2012・日/米)、最近だとリーアム・ニーソンの「フライト・ゲーム」(Non-Stop・2014・英/仏/米)に出ていた。悪役とは意外だったが、なかなか怖そうで良かった。

 今回のスタン・リーの出演場面は、ラストの美術館のドリンク・コーナーのバーテンだった。

 興味深かったのは、すべてルイス(マイケル・ペーニャ)の声で再現シーンが語られるシーン。絵としては本人たちが出ているのに、声はすべてルイス。独特のチンピラ風の口調なのに、口がピッタリ合っていた。特に女性なんか男口調の乱暴な言葉遣いで、思わず笑ってしまった。

 アントマンはマーベル・コミックの世界のあちこちに登場するキャラクターらしい。だから当然「アベンジャーズ」ともつながっていると。原案は脚本も担当しているエドガー・ライトとジョー・コーニッシュ。

 エドガー・ライトは痛快ポリス・コメディの「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏/米)や「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(Scott Pilgrim vs. the World・2010・米/英/加/日)の脚本・監督で、最近は「ワールド・エンド酔っ払いが世界を救う」(The World's End・2013・英/米/日)を撮っているが、小劇場での公開で見ていない。あまり話題にもならなかった感じだが、たぶんタイトルが「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」(The Hangover・2009・米/独)シリーズみたいで損をしている部分もあるのではないだろうか。この人の作品の放題は残念なものが多い。とにかくコメディ系で手腕を発揮する名手と言って良いだろう。

 ジョー・コーニッシュ。TVで脚本や監督をやっていて、劇場映画は「アタック・ザ・ブロック」(Attack the Block・2011・英/仏)がデビュー作らしい。ボクはてっきりカエルのフロッグだと思っていたのだが、違った。小劇場での公開で見ていない。その前に3D-CGの気色悪い残念な「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」(The Adventures of Tintin・2011・米/ニュージーランド)の脚本を書いている。

 脚本はほかに、日本では劇場未公開の「俺たちニュースキャスター(未)」(Anchorman: The Legend of Ron Burgundy・2004・米)のアダム・マッケイ。この人は製作の方が多い感じだが、監督作品は「俺たち……」以外、聞いたことがないようなものばかり。たぶんコメディの人なのだろう。残念ながら日本劇場未公開作品が多い。

 監督はペイトン・リード。「チアーズ!」(Bring It On・2000・米)や「恋は邪魔者」(Down with Love・2003・米/独)などを撮っているが、どれも小劇場の公開で見ていない。ボクが見たのは「イエスマン “YES”は人生のパスワード」(Yes Man・2008・米/豪)くらい。なかなか前向きで面白かったものの、メインの仕事はTVのようだ。よく本作の監督に抜擢したなあと。本作の成功で多分映画の仕事が増えるだろう。

 銃は、未来ラボで縮小して見せるのがM1919マシンガン。アベンジャーズのファルコンが持っていた2挺の小型サブマシンガンはイングラムかと思ったら、imfdbによるとシュタイアSPPらしい。ピム・クロス社のセキュリティはM4やタボールTAR-21、グロック。ほかにM92のシルバー、テーザー銃も出てくる。

 公開9日目の通常2D版の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は15分くらい前に開場。観客は20代くらいの若い人がやや多めで、中高年まで幅広い感じ。ただ男性多めで、女性は半分ほど。最終的に老若比は4対6くらいで若い人が多く、122席の9割ほどが埋まった。キャパが小さいから入りが良いとは言い切れないところ。微妙。

 スクリーンはカーテンなしの角丸シネスコむき出し。やや湾曲している。気になった予告編は…… また「東京国際映画祭」が開催されるそうで、まあ学生でもないと見られない感じだが、10/10から。

 左右マスクの「orange-オレンジ-」は、やっぱり漫画の映画化らしく。未来の自分から手紙が届いた少女の話とか。ただ、クッキーがオンでないと何も表示されない。12/12公開。

 左右マスクの「俺物語!!」も漫画の映画化。かなり暑苦しい男のコメディらしい。こちらもクッキーがオンでないと表示されない。10/31公開。

 四角の枠付きの「図書館戦争THE LAST MISSION」は終わったと思ったはずのまさかの続編。10/10公開だが、前のままの予告。

 枠付き「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は前の予告とたいして変わらないが、予告でも素晴らしい画質。絵がきれい。そしてわくわくする音楽。長いシリーズなのでジェネレーション・ギャップはあると思う。新たな3部作か。ボクは1977年からの3部作で終わっているので…… あれを超えて欲しい。12/18公開。セブンイレブンで前売り先行販売。限定スター・ウォーズ新聞付き。

 枠付き「エベレスト3D」は実話の映画化。ちゃんと3D撮影したらしい実際の映像が凄い。それだけではなく、有名俳優も出ている。悲惨な話っぽいが、どうなんだろう。11/6公開。

 枠付き「メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮」は前作も良かったし、面白そうな雰囲気。10/23公開。

 枠付きの「ジョン・ウィック」はキアヌー・リーヴスが殺し屋を演じるアクション。なかなか凄そう。キアヌーは前作の「47RONIN」(47 Ronin・2013・米)があまりに酷かったので、これで挽回できるか重要な作品。評判は良いらしい。10/16公開。

 左右マスクの「ピッチ・パーフェクト2」は、最初女の子映画でビッチかと思って、ワル女の映画かと思っていたら、完璧なピッチの方で、アカペラでコンテストに挑む女の子たちの青春ムービーだった。こういうエンタ系の映画の演出はアメリカにかなうところはないだろう。カッコいい。思わず見たくなる。ただ続編だけど。10/16公開。

 枠付き「ファンタスティック・フォー」は新起動版。予告では超人になる過程がちょっとあって、前回までのものとは違う模様。意外と面白いかも。10/9公開。

 枠付き「ドローン・オブ・ウォー」は、話題のドローンがテーマの戦争映画。イーサン・ホーク主演で、パイロットなのに地上勤務で、ゲームのように敵を殺すようすが描かれる。うむむ。10/1公開。


1つ前へ一覧へ次へ