2015年9月27日(日)「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド」

2015・東宝/講談社/博報堂DYパートナーズ/日本出版販売/読売新聞社/朝日新聞社/JR東日本/KDDI/GYAO!・1時間28分

シネスコ・サイズ?(1:2.0〜2.2くらい、表記なし、REDデジタル?)/サウンド表記なし(ドルビー・デジタル?)

(日PG12指定)(IMAX版、4DX版、MX4D版、D-BOX版の上映もあり)

公式サイト
http://www.shingeki-seyo.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

外壁修復作戦で、巨人化し仲間を救ったエレン(三浦春馬)は、同化する寸前にうなじから取り出されたが、逮捕され、司令官のクバル(國村 隼)から銃殺されそうになる。しかし、そこに巨人が現れ、エレンを連れ去ってしまう。そこでアルミン(本郷奏多)が外壁の近くに不発弾があったことを思い出し、それを使えば外壁の穴は塞げると提案、調査兵団の生き残りは外壁の門前へと向かう。一方、エレンはシキシマ(長谷川博巳)に助けられ、全滅したはずのシキシマ隊と合流し、不発弾のところへ向かうことに。シキシマは政府の人間が巨人を操っているとして、内側の門を壊して、巨人たちに政府の人間を襲わせようというのだった。不発弾のところで両隊は鉢合わせし、壁の穴を塞がないと一般市民が大勢死ぬと調査兵団はシキシマ隊と戦うことに。

71点

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 前編同様、3D-CGはすごい。日本も世界ベレルまで行っている。ハリウッド作品にちっとも見劣りしない。

 ただ、大仰で芝居がかった文学的な臭いセリフと、いきなりくだけた感じの今どきの若者言葉を同居させる手法は、アニメなら成立すると思うが、実写ではどうにも違和感があって馴染まない。音楽も大げさで浮いている。しかも今回は、ずっとレトロフューチャーな感じの舞台だったところに、無理やり無機質なSF的世界まで持ち込んで、世界観は破綻してしまっている感じ。ラストの展開もどうにも筋が通っていないように思える。壁は壊したいのか直したいのか。銃で撃たれた傷口から煙は出てるし。ソウダさんは何が言いたかったんだ?

 しかも登場人物のほとんどが、絶叫するか、カッコつけるか、意味不明な笑いをするかのいずれかの感情表現のみで、よくある意味のない会話のやり取りに、説明的セリフでストーリーが展開する。どのキャラクターも魅力に欠けるというより、嫌な感じで、まったく共感もできなければ感情移入もできない。やたら演説をぶつキャラも多いし、歯が浮くような臭いセリフもバンバン飛び交う。観客の方が恥ずかしくて赤面しそう。特に酷いのが、石原さとみ演じる超ハイテンションな女ハンジと、長谷川博巳演じるキザの帝王シキシマ。リンゴかじりながら登場って、実写じゃ無理。いくら名優を使っても、みな演技がヘタに見える。学芸会か。

 しかもエレンとか、アルミンとか欧米系の名前なのにコテコテの日本人が演じているだけでも違和感があるのに、「門前」とか「シキシマ隊」とか「ソウダのとっつぁん(おっさん?)」とか日本的要素が多すぎ。人類は日本人だけか。とてもバランスが悪い。

 最終的に、前編98分、後編88分なら一緒にして3時間06分の長めの1本(インター・ミッション、休憩入れるとか)で良くない? もう前編のことは忘れてるし、88分のうち前編のあらすじが5〜10分入るわけだし。当然、前編で作り上げたテンションはなくなっている…… 前後編なんて、流行のようになっているが、デメリットがメリットを上回っていると思う。

 ガヤのセリフが妙に鮮明だったり、この辺のバランスも気になるが、サラウンドはよく回っていた。唐突に掛かる曲は1962年にリリースされたアメリカのオールディーズ「この世の果てまで(The End of the World)」。この映画のサブタイトルだからとしても、真っ白な無機質の部屋にある古いアメリカ製らしいジュークボックスから流れるのはいかにも唐突。良い曲だけど、世界観めちゃくちゃ。

 出演者はほぼ前編と同じ(死んでいないキャラは)。ただ後編のメインはほとんどシキシマの長谷川博巳になっていて、主人公と思ったエレン(三浦春馬)はほとんど活躍しない。ラストだけ。説明的なセリフが多いのに、輪をかけてシキシマ語りまくり。長谷川博巳はTVドラマ「家政婦のミタ」(2011・日)で注目された人で、コミカルな感じが良かったが、一転して「MOZU」(2014・日)シリーズでは怖い殺し屋を演じて、演技のうまさをアピールしていたのに……。サンナギの松尾論もひどい。TVの深夜番組から劇場版も作られた「SP警視庁警備部警護課第四係」(2007・日)シリーズではあんなに良かったのに。本作では子供っぽく、存在感もない。とても同じ人とは思えない。

 カメオ出演的な感じで、草なぎ剛がエレンの父親役で出ていて、樋口作品に良く出ているKREVAも兵士役で出ている。

 銃は、エレンを捕まえた部隊がM1カービンを使用。全滅したと思われていたシキシマ隊は大戦前の銃器を所持しているという設定で、FN MAG、ミニミ、M2ブローニング、RPGも装備。石原さとみ演じる兵器オタクっぽいハンジは地対空ミサイルのスティンガーのようなものを使う。ああ「霊能力者 小田霧響子の嘘」(2010)は良かった。

 原作は諫山創の同名漫画。脚本は前編と同様、渡辺雄介と町山智浩の2人。監督も樋口真嗣。当たり前だが、変更なし。

 不発弾ねえ。かつて「続・猿の惑星」(Beneath the Planet of the Apes・1970・米)でミュータント化した人類がコバルト爆弾を神としてあがめているというシーンがあったが、なんだかそんな感じもあるし、戦争映画でもそんなのなかったっけ?

 公開9日目の通常版、初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は10分前くらいに開場。観客層は、下は小学生くらいから中年までいたが、高齢者は少なかった。メインは20代くらいの印象。若い人が多い。男女比は、20人くらいいて女性が3〜4人というところ。最終的には女性がちょっと増えたものの、232席に35人くらいの入り。これはビックリ。少ないなあ。何かイベントでもあったのだろうか。まあ前編があれだったから……。

 スクリーンはシネスコで開いており、気になった予告編は…… 四角の枠付きの「ギャラクシー街道」は三谷幸喜のSFコメディで、雰囲気は昔のアメリカのTVアニメ「宇宙家族ジェットソンズ」(Jetsons・1962〜1963・米/加)みたいな雰囲気。古い予告のままだが大丈夫か。10/24公開。

 左右マスクの「バクマン。」は人気漫画の実写映画化らしいが、予告を見る限りどこが面白いのかさっぱりわからない。歳を取ったせいか。10/3公開。

 四角の枠付き「劇場版MOZU」はWOWOWから地上波でも放送されたTVドラマの映画化だが、映画っぽい作りで、期待させる。敵はビートたけしらしい。予告ですでに怖い。長谷川博巳はどうか。11/7公開。

 映写機のマスクが左右に広がって、映画泥棒の後、暗くなって本編へ。


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