2015年10月10日(土)「ファンタスティック・フォー」

FANTASTIC FOUR・2014・米/独/英/加・1時間40分(IMDbでは102分)

日本語字幕翻訳:丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビーAtmos(IMDbではドルビーとドルビー・デジタルも)

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/f4/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2007年、小学5年のリード・リチャーズ(オーウェン・ジャッジ)は将来の夢を発表する授業で、量子力学を応用した「物質転送装置」の発明を宣言し、教師からもっと現実的な夢にしろと注意される。しかしすでに装置の大半はでき上がっており、ジャンク・ヤードの同級生ベン・グリム(イヴァン・ハンネマン)から交換機をもらうと、装置に組み込み実験を開始する。すると町内を停電させてしまうが、ミニカーをどこかに転送することには成功する。7年後、科学フェアーでリード(マイルズ・テラー)とベン(ジェイミー・ベル)は共同で改良型の「物質転送装置」を発表、会場にいたバクスター財団のストーム博士(レグ・E・キャシー)と養女のスー(ケイト・マーラ)の目に留まり、リードは財団の学生研究員としてスカウトされる。財団でも「物質転送装置」を開発しており、ストーム博士は養子のジョニー(マイケル・B・ジョーダン)と、さらに天才的な才能の持ち主で、ちょっと変人のビクター(トビー・ケベル)を引き込み、ついに「クァンタム(量子)ゲート」を完成する。財団はすぐに政府と組んで人間の転送を行おうとするが、開発したビクターとリードとジョニーの3人は、自分たちが最初に行くべきだと、密かに計画を練る。

72点

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 IMDbでは4.1点というとんでもない低評価。そこまで酷いとは思わなかったが、なぜリメイクした? 前2作があんなに酷かったのに。ボク的には前2作よりは良いような気がする。ただ、スター俳優が出ていないため、華はほとんどない。とても地味。その分の予算をSFXに費やしたのだろうか。SFXは素晴らしい。

 たぶん、メイン・キャラクターの4人が超能力を得る過程をていねいに描いて、観客が感情移入しやすくしようとしたのではないだろうか。その部分に半分以上の時間がかけられている感じ。出だしは良い感じなのだが、異次元だか、どこかの宇宙だかの辺りになるといきなり大ざっぱになってきて、脱出する際、砂が入ったポッドにいたベンは岩石男になり、炎が入ってきたポッドにいたジョニーはヒューマン・トーチになったと。手足というか体の伸びるリードは何が原因? しかも行っていないで、到着時の爆発に巻き込まれただけのスーが透明になれるのはなぜ? 近くにいたほかの人も透明にならないと……。そして、惑星に取り残されたビクターは宇宙服のような防護服と一体化しかかっていてって、どうにも納得しにくい。

 しかも、すぐに能力の全容がハッキリするし、難なくコントロールするようになるし、戸惑いもベン以外にはほとんどないし。前説に時間をかけすぎて、その部分を描く時間がなくなってしまったのかも。そんな印象。せっかく前半はていねいな作りなのに、後半が駆け足とは惜しい。また前作がその部分は描いていたといえば描いていたか。

 たぶん映画にしやすい漫画(コミック)と、しにくい漫画があるのではないだろうか。漫画としては成立していて楽しめるのに、実写化すると途端に陳腐になって説得力がなくなって楽しめなくなるものがあって、本作は多分それなのだ。腕や足が伸びたり、全身から火を吹いたり(どうやって外を見ているんだ?)、岩石の人間って……。前2作でそれがわかったんじゃなかったのか。

 スーのケイト・マーラは「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)でたぶん注目された人。その後「トランセンデンス」(Transcendence・2014・英/中/米)などにも出ているが、本作も含め役と作品に恵まれない感じ。

 たぶん一番有名なのは岩石男ベンのジェイミー・ベル。名作「リトル・ダンサー」(Billy Elliot・2000・英/仏)でデビューした人だ。その後も「デス・フロント」(Deathwatch・2002・英/独)や「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)など面白い作品に出ている。最近見たのはSFアクション「スノーピアサー」(Snowpiercer・2013・南ア/チェコ/米/仏)あたり。ハズレもあるがおおむね作品に恵まれているのではないだろうか。本作は変身してしまうと誰かわからず、出番は少ない感じ。

 中心人物のリードはマイルズ・テラー。J.K.シモンズがアカデミー助演男優賞を受賞した「セッション」(Whiplash・2014・米)に主演しているらしいが、見ていないのでなんとも。ちょっと地味な雰囲気で、主役としてはどうなんだろう。

 原作は製作総指揮も務めるスタン・リーと、すでに亡くなってしまったがジャック・カービーのコミック。脚本は、監督でもあるジョシュ・トランク、ジェレミー・スレイター、サイモン・キンバーグの3人。ジェレミー・スレイターは本作の前に日本劇場未公開のSFホラー「The Lazarus Effect」(2015・米)を書いているらしいが、ほぼ新人。この次に現在製作中のハリウッド・リメイク版の「デスノート」を書いているようだ。

 サイモン・キンバーグはプロデューサーとしての仕事の方が多いようだが、書いたものではヒットした「Mr.&Mrs. スミス」(Mr. & Mrs. Smith ・2005・米)や、日本では劇場公開されなかったが面白かった続編の「トリプルXネクスト・レベル」(xXx: State of the Union・2005・米)、大ヒットした「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)シリーズ、高く評価された「X-MEN:ファイナル・エディション」(X-Men: The Last Stand・2006・加/米/英)以降、などを書いている。ただ残念な「ジャンパー」(Jumper・2008・米/加)や「Black & White/ブラック & ホワイト」(This Means War・2012・米)も書いているが。

 監督はジョシュ・トランク。超能力を得た若者の暴走を描いた「クロニクル」(Chronicle・2012・米)で注目された監督だ。ただダメ映画のシンボルのようなPOVで、ボク的には残念な作品だったが、低予算なのにSFXの合成技術は見事だった。そこからこんな大きな作品を任せられるとは。早すぎたのかどうだったのか、縛りの少ない別の作品で見てみたい気もするが……。

 ラストのクァンタム・ゲートとつながったブラックホールのシーンは、何だか「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(Avengers: Age of Ultron・2015・米)に似ている気がした。スケールは「アベンジャーズ」の勝ち。

 スイス・アーミー・ナイフは、今はなきヴェンガー(ウェンガー)だったような。銃は兵士がM4を装備していた。

 いつもどこかに出ているスタン・リーはどこにいたのかわからなかった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は10〜12分前くらいに開場。観客層はほとんど中高年というか高寄りで、しかもほとんどオヤジという感じ。最終的に若い人もポツポツときたものの数人で、女性は2〜3人、157席に40人くらい。これはビックリ。作るべき映画じゃなかったのでは? 「2」も企画されているらしいが、止めておいたほうが良いような。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いていて、気になった予告編は…… ものすごく怖かったTVムービー「女優霊」(1995・日)の中田秀夫監督による左右マスクの「劇場霊」より「残穢」のほうが怖そうな印象。予告編の作り方なのか、本編もなのか。「劇場霊」は11/21公開。

 ほぼ暗くなってから始まった予告では、左右マスクの「アース・トゥ・エコー」は「エクスプローラーズ」(Explorers・1985・米)のような雰囲気の作品のようだが、なんとも画質が悪い。どうしたのだろう。ビデオ作品なのか、予告だけなのか。前売り券も作っていないようだし……。10/24公開。

 四角の枠付き「ブリッジ・オブ・スパイ」は新予告に。ソ連とアメリカが捕らえられたスパイの交換をする話のようだが……。2016の1/8公開。

 「ブリッジ……」の先に一瞬だけ映像が流れて、仕切り直して上映された枠付きの「オデッセイ」も新予告に。シリアスなSFもので、たった1人だけ火星に置き去りにされた男と、彼を助けに行く物語のようだ。予告からかなり重めで、辛い感じで、泣きそうに。監督は名匠リドリー・スコット。2016の2/5公開。

 シネスコのまま暗くなって、左右マスクで本編へ。


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