2015年10月11日(日)「マイ・インターン」

THE INTERN・2015・米・2時間01分

日本語字幕翻訳:大きめ手書き風書体下、岸田恵子/ビスタ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/myintern/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

妻に先立たれた70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)は、さまざまな習い事や運動をしたりして悠々自適の暮らしを送っていたが、ある日、NYの高齢者対策プログラムの一環で、65歳以上を対象としたインターン(見習社員)募集の張り紙を見つけ、応募する。運良く自己紹介ビデオが人事担当者に気に入られたベンは、インターネットのファッション・サイトの会社へ就職する。その会社は、1児の母で、社員からキツイと評される社長のジュールズ(アン・ハサウェイ)が1年半前に立ち上げ、現在では従業員数200人以上の規模にまで規模を拡大させた新興会社だった。服装もノー・ネクタイで自由な気風の会社に、スーツでびしっと決めて出社したベンは浮いており、ジュールズの直属として配属されるが……。

76点

1つ前へ一覧へ次へ
 さわやかで明るいコメディ。上質で上品。たぶんデートにもピッタリ。描かれていることは、凄い勢いで変わって行く現代社会を舞台に、高齢者問題や世代ギャップ、そして良くある仕事と家庭のバランス崩壊、夫婦の危機などだが、重くない。基本的に出てくる人は良い人ばかり。いじ悪なヤツとか、ひねくれてるヤツ、野心ぎらぎらのヤツとかはいない。もちろん、それぞれに問題は抱えているが、みんなそれなりに前向きに努力している。だから、観客が身につまされ日常のゴタゴタを思い出してうんざりというようなことはない。

 反面、出来過ぎで、こんなきれい事で話がまとまるはずがないと思う人もいるかもしれない。現実感がないというか。それでも、本作はファンタジーでコメディなのだ。この理想的な良い世界観を楽しめばいいのではないだろうか。

 たぶん、この楽しい感じは世界観もさることながら、主人公の老人のキャラクターと、そして演じる名優、ロバート・デ・ニーロによるところが大きいのではないだろうか。物事の言い様が絶妙。相手を傷つけない言い方、押しつけがましくない言い方が、とてつもなく素晴らしい。脚本と演出と演技の完璧なマッチング。

 劇中、ジュールズがベンに「なぜ適切なタイミングで、適切なアドバイスが出来るの?」というようなことをいうが、まさにこの映画はそんな雰囲気。それが楽しめる。面白いのはベンの設定で、引退前は電話帳を繰る会社で部長を務めていたというのだ。すると若い同僚が驚いて、今はみんなネットで調べるから使わないと。中には知らないものも。確かに、日本でも見なくなった。そして逆にベンが若い同僚に聞く。「なんでシャツを外に出すんだ?」しかし映画の中ではジェネレーション・ギャップはすべて良いほうに働き、観客を含めてみんながベンのことを好きになる。運転手となったベンがジュールズを送って行くと、ジュールスが「」と日本語で言い、その後二人の挨拶となる。いいなあ。

 ベンとジュールスが2人で見るTVの映画は「雨に唄えば」(Singin' in the Rain・1952・米)。ジュールズの会社では最初DELLのPCがほとんどだが、後半はほとんどがMacになる。部門の違いなのだろうか。

 ベンはロバート・デ・ニーロ。まあ名優中の名優。デビューしたのは1960年代だから50年以上第一線で活躍していることになる。1943年生まれだから、72歳。映画の設定より2歳年上。最近は悪役はほとんどなく、本作では実に良い人ぶり。「キリングゲーム」(Killing Season・2013・米/ベルギー/ブルガリア)ではジョン・トラボルタを相手にアクションを演じていたし、「リベンジ・マッチ」(Grudge Match・2013・米)ではシルベスター・スタローン相手に自身のパロディも入れた老いたボクシング選手を、「ラストベガス」(Last Vegas・2013・米)では痛快コメディと、実にいろんな役をこなしている。年齢を考えたら驚異的だ。素晴らしい。

 女社長のジュールズはアン・ハサウェイ。これまた役にぴったりのイメージ。たぶん一番当たり役は「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米/仏)だろう。多少残念な作品もあるが、だいたい良い作品に恵まれている感じ。「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)では薄幸の女性を演じてアカデミー賞助演女優賞を獲得。しかしアクションの「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)のキャットウーマンもまた抜群に素晴らしかった。そしてハードSFの「インターステラー」(Interstellar・2014・米/英)では実に感動的だった。女性は本作の衣装にも注目だろう。

 コミカルなキャラクターのマッサージ師、フィオナはレネ・ルッソ。ファッション・モデル出身で、有名なのは「リーサル・ウェポン3」(Lethal Weapon 3・1992・米)だろう。ボク的には「トーマス・クラウン・アフェアー」(The Thomas Crown Affair・1999・米)も良かった。「ショウタイム」(Showtime・2002・米/豪)でロバート・デ・ニーロと共演している。つい最近パパラッチを描いた「ナイトクローラー」(Nightcrawler・2014・米)に出ていたようだが、小劇場公開で見ていない。

 製作・監督・脚本はナンシー・マイヤーズ。プロデューサと脚本家としてキャリアをスタート。コメディ系の人で、古くはゴールディ・ホーンの「プライベート・ベンジャミン」(Private Benjamin・1980・米)を製作・脚本。1949年生まれの66歳。ロバート・デ・ニーロとあまり変わらない。それで、こんなエロ・ギャグも書けるとは素晴らしい。監督は、とても面白かった「ファミリー・ゲーム/双子の天使」(The Parent Trap・1998・米)から。本作の前に「恋するベーカリー」(It's Complicated・2009・米/日)を撮っている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、たまったポイントで金曜にネットで確保。当日は12〜13分前に開場。観客層は若い人から中高年まで幅広く、女性が目立つ。男女比は4対6くらいで女性が多かった。女性が主人公のドラマだし、当然だろう。さらに若い人の方が多く、たぶん2/3くらいが若い人。最終的には232席が9.5割くらい、ほぼ埋まってしまった。この出来からすれば当然だろう。口コミでまだ広がるかも。見て損はない。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は…… 四角の枠付きの「バットマンvsスーパーマン」は新予告。スーパーマンが「マン・オブ・スティール」(Man of Steel・2013・米/加/英)のヘンリー・カヴィルで、バットマンがベン・アフレック。どっちが悪役なのかわからなかったが、新予告ではどうもスーパーマンが悪い雰囲気…… 2016の3/25公開。

 枠付き「リトル・プリンス」はたぶん新予告。3D-CGなのか、人形アニメなのかはっきりしなかったが、面白そう。ただ完全に子供向けの感じもちょっと……。はたして。11/21公開。

 枠付き「PAN」も新予告に。素晴らしい映像と、エキセントリックなヒュー・ジャックマンがすごい。面白そう。10/31公開。

 映写機の左右マスクのまま本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ