2015年10月17日(土)「ジョン・ウィック」

JOHN WICK・2014・米・1時間41分

日本語字幕翻訳:大きめ丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA、HAWKレンズ)/ドルビー・デジタル(IMDbではAuro11.1も)

(米R指定、日R15+指定)(IMAX版、MX4D上映もあり)

公式サイト
http://johnwick.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

妻ヘレン(ブリジッド・モイナハン)のためにマフィアの殺し屋から足を洗ったジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)だったが、その最愛の妻を病気で失ってしまう。そして葬式の日、妻のプレゼントでデイジーと名付けられた子犬が届く。ジョンは妻の形見として大切に育てていたある日、趣味のクラシック・カーに乗ってガソリンを入れに行った時、ロシアン・マフィアの3人組が車を気に入り、譲れと脅してくるが、きっぱりとロシア語で断る。しかしその夜、覆面姿の3人組がジョンの自宅を襲撃し、ジョンを叩きのめし吠える犬を殺すと、車を奪って行く。翌朝、気付いたジョンは復讐を誓い、昔の仲間である盗難車を扱うギャングのオーレリオ(ジョン・レグイザモ)から、車を盗んだのがロシアン・マフィアのボスの息子ヨセフ(アルフィー・アレン)であることを聞き出す。そのボスとは、かつてのジョンのボスだったヴィゴ(ミカエル・ニクヴィスト)で、彼もまたオーレリオからジョンが息子の命を狙っていることを聞く。ジョンの実力を知っているヴィゴは手だれの部下を多数、ジョン暗殺のため差し向けるが。

76点

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 驚きのアクション映画。最初の1/5ほどがラブ・ストーリーのような調子で展開するメロドラマ部分で、それが終わるととたんにギアがガン・アクションに入ってテンポが変わり、息をも切らさぬ激しさで一気に最後まで見せる。セリフではなく主人公の行動で心情を語らせる。銃を向けてから、説明的にだらだらしゃべったりはせず、いきなりドカン。怖い。そこがうまい。

 導入のロシア・マフィアのチンピラさ加減も絶妙で、バカで、社会の害で、相応の罰を受けるべきパンクに思えるので、常軌を逸したほどの主人公の復讐劇が許せるのだ。つまり素晴らしい悪役。しかも、その後ろに絶大な力を持つマフィアのボスがいるわけで、これがまた怖い男で、大物なのに嘘つきで、せこいヤツ。うまい。

 さらに面白い仕掛けとして、NYのあるホテルがプロの殺し屋たちの定宿になっていて、情報や医者などのサポートをしてくれて、その代わり、ホテル内では殺し合いをしてはならないことになっているというもの。ちょっとマンガっぽいが、これがないと主人公はとても1人では戦えない。

 そんな主人公はまさに1マン・アーミーの戦いぶりで、1人で多数の命知らずのマフィアたちと戦い、それに勝利すると今度は複数のプロの殺し屋を投入され、窮地に陥る。見どころ満載。次から次へとピンチがやってくる。満身創痍。これもまたスゴイ。

 そして、敵か味方かわからない先輩殺し屋。腕利きで、しかもウィレム・デフォーが演じているから説得力がある。一体どっちだと。

 クライマックス・シーンから始まる映画は、そこで終わるか、そこから起き上がってもう一悶着あるかのいずれか。たしかデンゼル・ワシントンの「悪魔を憐れむ歌」(Fallen・1998・米)が最初のパターン。本作は違った。

 ジョン・ウィックはキアヌ・リーヴス。このためにかなりトレーニングを積んだようで、体のキレも良いし、銃の扱いも素晴らしい。マガジン・チェンジはもちろん、カービンからハンドガンへのトランジッションもあざやかに行って見せる。「47RONIN」(47 Ronin・2013・米)は中華なトンデモ映画だったが、本作は「フェイクシティ ある男のルール」(Street Kings・2008・米)ともつながる痛快アクション。これで評価を取り戻したのだろうか。まあアメリカじゃ「47RONIN」の評価はそれほど悪くなかったようだが(IMDbで6.3点!)。使っていた銃はカスタムらしいコンペンセーター付きのP30、HK416(imfdbによるとクローンのCA-415らしい。ロゴがちらっと映る)、バックアップにグロックのG26。また奪って使う敵のポンプ・ショットガン、ケルテックKSG。

 ロシアン・マフィアのボス、ヴィゴはミカエル・ニクヴィスト。衝撃のミステリー「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvinnor・2009・スウェーデンほか)シリーズで主演していた人。「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」(Mission: Impossible - Ghost Protocol・2011・米)にも出ている。ロシア人の悪役が多い感じ。

 ジョン・ウィックの先輩殺し屋マーカスはウィレム・デフォー。ジョン・ウィックを助ける良い役。「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire・1984・米)で注目された大ベテラン。最近は暗い映画「ファーナス/訣別の朝」(Out of the Furnac・2013・米/英)に出ていた。ボク的には「処刑人」(The Boondock Saints・1999・加/米)の女装刑事がたまらない。使っていたボルト・アクション・ライフルはルガーのM77だそうで、二脚とサプレッサー、大型スコープ付き。真ん中から分解できるタイプもあるのか。

 チンピラ感が良く出ていたボスの息子ヨセフはアルフィー・アレン、TVの「ゲーム・オブ・スローンズ 第一章:七王国戦記」(Game of Thrones・2011・米)シリーズに出ていたらしい。映画ではあまり見かけない感じ。使っていた銃はベレッタM92

 ほかにも有名俳優がちょっとだけ出ていて、妻ヘレンに「リクルート」(The Recruit・2003・米)のブリジッド・モイナハン、車屋のオーレリオに「3人のエンジェル」(To Wong Foo Thanks for Everything, Julie Newmar・1995・米)のジョン・レグイザモ、裏社会を取り仕切る男ウィンストンに「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」(Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides・2011・米/英)のイアン・マクシェーン、女殺し屋に「レギオン」(Legion・2010・米)の美女エイドリアン・パーキンス(使っていた銃はサプレッサー付きのワルサーP99とパイソン4インチ)、などなど。そして一番驚いたのは掃除屋のチャーリーが、歳を取っていて分かりにくかったが「コマンドー」(Commando・1985・米)のデヴィッド・パトリック・ケリーだったこと。憎たらしい役といえばこの人。老けたなあ。

 脚本はデレク・コルスタッド。劇場長編映画ではドルフ・ラングレンの「マキシマム・ブロウ」(The Package・2012・米/英)を書いている。よく任せたなあ。でも良い仕上がり。成功だったということか。

 監督はチャド・スタエルスキと、クレジットなしでデヴィッド・リーチ。チャド・スタエルスキはキック・ボクシングから、マーシャル・アーツのインストラクターを経て映画のスタントを始め、スタント・コーディネーターになった人。本作は監督進出第1作になる。

 デヴィッド・リーチはプロデューサーとしてクレジットされている。スタントマン出身なので、アクション・シーンを手がけたのかもしれない。殺陣師としてはカッコよかったリメイク・アクション「メカニック」(The Mechanic・2011・米)やSFアクション「TIME/タイム」(In Time・2011・米)、残念な「ミュータント・タートルズ」(Teenage Mutant Ninja Turtles・2014・米)やSFメロドラマ「ジュピター」(Jupiter Ascending・2015・米/英/豪)を手がけている。

 ほかに登場した銃は、定番のMP5、M4など。公式サイトではアクション監督とスタント・コーディネーターとクレジットされているが、IMDbでは第2班監督となっているダリン・プレスコット。スタント・コーディネーターとしてシュワルツェネッガーの「ラストスタンド」(The Last Stand・2013・米)や、デンゼル・ワシントンとノーク・ウォールバーグのアクション「2ガンズ」(2 Guns・2013・米)を手がけている。

 英語字幕は、出す位置や色にもこだわっているようで、興味深かった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は12〜13分前に開場。観客層はメインは中高年で、若い人が少し。女性はオバサンが多く、全体の1/4ほど。まあアクションだから当然だろう。最終的には407席の5.5割くらいが埋まった。これはなかなか。

 スクリーンはカーテンのないシネスコ角丸で、大きめ。迫力がある。そしていい音。気になった予告編は…… なんだか重い感じの日本映画は左右マスクの「人生の約束」。うーん。1/9公開。

 四角い枠付きの「007スペクター」はちょっと長めの新予告。公式サイトが見当たらず、フェイブックとツイッターがメインの模様。12/4公開。

 枠付きの「ハンガーゲームFINALレボリューション」は世界同時公開らしい。これで本当に最後なのだろうか。どうでもいいけど。どうして人気があるのかよくわからない。11/20公開。

 枠付きの「PANネバーランド、夢のはじまり」は新予告に。ヒュー・ジャックマンと。ピーター・パンを演じる少年リーヴァイ・ミラーのビデオ・メッセージ付き。面白そう。ピーター・パンがイギリス発音っぽい感じがいい。10/31公開。

 枠付きの「トランスポーターイングニッション」、えっ、TOHO系でも上映するの? しまった。東映系の紙の前売りを買ってしまったじゃないか。ムビチケカードで予約が出来たのに。まあ、リュック・ベッソンだけど。10/24公開。TVじゃ「この依頼、すべてがワナ」ってネタばらししちゃってるけど……。

 枠付きの「メイズ・ランナー2砂漠の迷宮」も新予告に。すごいビジュアル。面白そう。「ハンガー……」よりずっと面白いと思うが…… 10/23公開。

 場内が暗くなって、映写機のマスクが左右に広がって、本編へ。


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