2015年10月18日(日)「白い沈黙」

THE CAPTIVE・2014・加・1時間52分

日本語字幕翻訳:手書き風書体下、岸田敬子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル

(加PG指定、米R指定)

公式サイト
http://shiroi-chinmoku.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

カナダのナイアガラの滝のすぐ近くの町で、アイススケート選手を目指す9歳の娘と、ホテルの客室係をしている妻のティナ(ミレイユ・イーノス)とつつましやかに暮らすマシュー・レイン(ライアン・レイノルズ)は、ある日、娘のスケートの練習帰りに、テイクアウトのパイを買いに店に寄った数分の間に、娘が消えてしまう。すぐに警察に連絡し誘拐を主張するが、まったく何の証拠も残っていなかった。幼い子供の事件を専門に扱うニコール・ダンロップ(ロザリオ・ドーソン)が率いるチームが担当することになるが、新たにチームに加わったジェフリー・コーンウェル(スコット・スピードマン)刑事は父マシューの仕業ではないかと疑いの目を向けてくる。何の手がかりも得られないまま8年が経過したある日、別居していたレイン夫妻に警察から呼び出しが来る。ネット上の怪しいクラブの映像に、娘に似た画像が見つかったというのだ。妻のティナはしぶしぶ警察に行くが、夫のマシューは警察をまったく信用しておらず、かたくなに1人独自の捜索を続けており、警察には現れない。

74点

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 リアルな設定で、実話かと思ったがそうではなかったらしい。しかし特にアメリカならいかにもありそうな感じ。TVの刑事・警察ものシリーズなら必ず1回は取り上げるテーマ。とにかく怖いし、家族というか夫婦が崩壊して行くさまが説得力があり、捜査をする警察も、専門チームがいながら、思い込みで捜査するヤツっているよなあと。被害者である父親自身が疑われるという悲劇。もちろん父親が犯人ということもあり得るだろう。しかし刑事の態度が酷すぎる。観客も疑われているような気分になる。妻も離れて行き、その気分も観客は味わう。決して楽しい映画ではないが、絵空事ではなく、ひしひしと身に迫ってくるような恐ろしい映画。ただIMDbではわずか5.9点という低評価。

 犯人の背景や考えなどを一切描かないことで、より一層怖さが増す。普段は上品で、まったくそのそぶりも見せない。しかし実際にはありえないほど異常。人間とも思えないほど。感情が欠落しているのか。そして、こんな変質者はどこにでもいると。怖いなあ。

 監禁というテーマでは、日本の漫画が原作の「オールド・ボーイ」(Oldboy・2003・韓)にも通じるものがある。恐ろしい犯罪だ。最近は日本でも監禁という犯罪があり、アメリカではもっと昔から問題になっていたようで、決して物語と安心することは出来ない。実際にありえる話。

 マシュー・レインはライアン・レイノルズ。「ブレイド3」(Blade 3・2004・米)は良かったがその次のリメイク「悪魔の棲む家」(The Amityville Horror・2005・米)は残念で、「[リミット]」(Buried・2010・西/米/仏)は1人芝居という斬新な作品だったが、DCコミックスの「グリーン・ランタン」(Green Lantern・2011・米)は大変残念な作品。アクションの「デンジャラス・ラン」(Safe House・2012・米/南ア/日)はそこそこ面白かったのに、「ゴースト・エージェント/R.I.P.D.」(R.I.P.D.・2013・米)は前売り券も作られないという扱いで、良い悪いが交互にあるような感じ。最近だとなかなか良い本作の後、これまた良さそうな「黄金のアデーレ 名画の帰還」(Woman in Gold・2015・英)で重要な役を演じているらしい。

 妻のティナはミレイユ・イーノス。つい最近シュワルツェネッガーの特殊部隊もの「サボタージュ」(Sabotage・2014・米)に隊員役で出て、ガンガン銃を撃っていた人。男勝りのアクションも、悩める母親も、同じようにリアルに演じられる。すごいなあ。ほかに「L.A.ギャングストーリー」(Gangster Squad・2013・米)やブラッド・ピットの「ワールド・ウォーZ」(World War Z・2013・米/マルタ)に出ていて、アトム・エゴヤン監督とは「デビルズ・ノット」(Devil's Knot・2013・米)で仕事をしている。

 女性刑事のニコール・ダンロップはロザリオ・ドーソン。SFコメディ「メン・イン・ブラック2」(Men in Black II・2002・米)で注目された人。最近だと「シン・シティ復讐の女神」(Sin City: A Dame to Kill For・2014・米)に出ている。

 ダメ刑事ジェフリー・コーンウェルはスコット・スピードマン。ダメな感じが良く出ていて、それはうまいということなんだろうけれど、印象は良くない。「アンダーワールド」(Underworld・2003・英/独ほか)に出ていた人。それ以降、あまり見かけた気がしない。

 不気味な犯人、ミカはケヴィン・デュランド。悪役が多い人で、最近だと残念な「ノア約束の舟」(Noah・2014・米)に出ていた。アトム・エゴヤン監督とは「デビルズ・ノット」で仕事をしている。

 ホテルの支配人には、つい最近「ドローン・オブ・ウォー」(Good Kill・2014・米)に出ていたブルース・グリーンウッド。

 脚本は、原案と監督も兼ねたアトム・エゴヤンとデヴィッド・フレイザー。デヴィッド・フレイザーはTVムービーの人で、主にカナダでスリラーや犯罪ものを書いてきたらしい。長編劇場映画の脚本は本作が初めてのよう。

 アトム・エゴヤンはエジプト生まれのカナダ育ち。ボクが見たのは官能ミステリー「秘密のかけら」(Where the Truth Lies・2005・加/英)。本作の前に「デビルズ・ノット」を撮っている。なんか居心地悪い感じと怖さがこの人のテイストだろうか。

 銃は刑事がたぶんグロック、謎の女もグロックのようだったが、一瞬でよくわからなかった。特殊部隊はMP5だったような。

 公開3日目の2回目、銀座の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。しかし、この劇場は床がフラットで、前の席に座高の高い人が座ると下に出る字幕が読みにくくなる古い劇場。こういうところで全席指定にするなんて。というか、劇場を作り直さないといけないのでは。もしくは吹替版だけ上映するとか。こういうところは、できるだけ中央寄りの席を避けること。サイド寄りの席なら頭をずらせばどうにか字幕は見られる。

 20分前くらいに着いたら、前回が終わって観客が出たところ。掃除が終わり次第入れるという。観客層は若い人もチラホラいたがメイン中高年。女性は1/3ほど。最終的には201席の8割くらいが埋まった。暗いないようにしては良い入り。驚いた。

 まあ、ここの予告もタイトルがなかなか出なかったり、公開日が一瞬だったりする。いらいらが募り、ストレスがたまる。スクリーンはビスタで開いており、気になった予告編は…… 上下マスクの「マリーゴールド・ホテル」はインドのホテルに集まる欧米人の老人たちの話のようで、そこにある日、彼らよりはちょいと若めのリチャード・ギアが現れると。もっと早くタイトルを出せよ。ラストに一瞬じゃ意味がないだろ。3月公開。

 上下マスクの「パディントン」はまるで実写のようなぬいぐるみのクマが大冒険をするらしい。ああ、あのクマね。ティーザーなので内容は不明。1/15公開。

 カーテンのマスクが左右に広がって、シネスコ・サイズになって完全に暗くなって本編へ。


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