2015年10月24日(土)「トランスポーター イグニッション」

THE TRANSPORTER REFUELED・2015・仏/中/ベルギー・1時間36分

日本語字幕翻訳:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル(エンド・ロールでは見つけられなかった)

(仏U指定)(一部IMAX上映もあり)

公式サイト
http://tp-movie.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1995年、フランス、コートダジュール。娼婦たちがたむろする建物にロシア人のカラゾフ(ラシャ・ブコヴィッチ)をリーダーとするグループが現れAKを連射し警護の男達を皆殺しにすると、以後は俺たちが取り仕切ると宣言する。15年後、プロの運び屋フランク・マーティン(エド・スクレイン)は、謎の金髪美女アンナ(ロアン・シャバル)の依頼を断ろうとするが、父のフランク・シニア(レイ・スティーヴンソン)が人質になっており、仕方なく受けることに。その仕事は銀行の前でアンナと荷物を拾って指定の場所に届けるというものだったが、現れたのはアンナのほかに2人の同じ格好をした金髪美女ジーナ(ガブリエラ・ライト)とキャオ(ウェンシア・ユー)で、フランクは人じゃなく荷物という約束だったと動こうとしないが……。

71点

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 やっぱりリュック・ベッソン作品。IMDbでは4.9点の低評価。俳優さんが変わってしまったことで、キャラクターも変わってしまい、同じ作りの作品に説得力を持たせられなくなってしまった感じ。とにかく頭が悪いとしか思えない展開。暴力じゃなく、もっと頭を使えよ、とボクでも突っ込みたくなってしまうバカさ加減。

 冒頭も、駐車場で高級車を狙うチンピラ5〜6人と素手で戦うという、まった同じオープニング。しかしジェイソン・ステイサムじゃないので同じ印象にはならない。スマートさもちょっとしたサーカス的な雰囲気も、コミカルな感じもない。ただのケンカ。以下すべてがこの調子。ストーリーも良くあるパターン。やっぱりこのシリーズはジェイソン・ステイサムのキャラクターで持っていたのだ。それが本作で確認できた。そしてそれが収穫。

 ほぼ全編アクションシーン。必要のない場面であえて暴力を使い、事件を大きくし、たくさんの人を傷つける。必要もなくパトカーを壊しまくる。そしてハラハラドキドキの感じは、心臓の鼓動のようなリズムの音楽を全編に渡ってベタで付けることで出しているという、音で怖がらせるホラー映画と一緒。まあ、これも演出の1手法だろうけど……。

 確かに撮影は大変だったろうと思う。道路を封鎖し、何回も同じことをやって、ちょっとずつ撮影して行く。アクションはドラマの何倍も撮影が大変だ。予算は莫大になるし撮影できる場所も少ない。見どころはそこ。エンディングのスタッフ・ロールでも「トラフィック・コントロール」にたくさんの人の名前がリストされていた。しかし、ラストは犯人を崖の上に追いつめて……って、日本のTVサスペンス・ドラマのクライマックスかっ! 007を撮りたかったのか、そんなシーンも随所にある。成功はしていないが。

 主役のフランク・マーティンはエド・スクレイン。残念ながらまったくイメージじゃない。配役ミスか。むしろ同じ役目をする別人という設定の方がまだ良かったのでは。まあリュック・ベッソン作品だが。イギリス生まれで、TVの「ゲーム・オブ・スローンズ 第三章:戦乱の嵐-前編-」(Game of Thrones・2013・米)に出演して注目されたらしい。映画では似たような中世もの「バトルフィールド」(Sword of Vengeance・2014・英)に出ているらしいが、限定公開で見ていない。ただ、期待は大きいようで、新作が2本ほど控えている。

 フランクの父シニアはレイ・スティーヴンソン。この人も作品でキャラクターがまったく違って見える。本作はとても残念な感じ。「パニッシャー:ウォー・ゾーン」(Punisher: War Zone・2008・米/加/独)とか「ザ・ウォーカー」(The Book of Eli・2010・米)は良かったし、最近の「ビッグゲーム 大統領と少年ハンター」(Big Game・2014・フィンランド/英/独)も悪役として良かった。

 脚本は製作も兼ねるリュック・ベッソン、アダム・クーパー、ビル・コラージュの3人。リュック・ベッソンはとにかく作りすぎで、1本1本が薄い。ただ、たまに「96時間」(Taken・2008・仏)の1作目のように当たりがあるから、無視も出来ない。

 アダム・クーパー、ビル・コラージュは2人で活動しているそうで、面白かった犯罪コメディ「ペントハウス」(Tower Heist・2011・米)で注目され、リドリー・スコット監督の「エクソダス:神と王」(Exodus: Gods and Kings・2014・英/米/西)の脚本を手がけることになったらしい。まったくジャンルが異なるが…… その結果が本作か。残念。

 監督はカミーユ・ドゥラマーレ。リュック・ベッソン製作・脚本の作品の編集を手がけ、ポール・ウォーカーが出たというだけの残念なリメイク「フルスロットル」(Brick Mansions・2014・仏/加)で監督デビュー。普通ならあの作品で次があるとは思えないがリュック・ベッソン・マジックで本作も監督と。

 銃はマフィアがAK、冒頭の駐車場で襲ってくるチンピラがシルバーのM92(INOX?)、オンナガP230か232のサプレッサー付き。ほかに定番のグロック、P226や、Px4、MP5K、90TWOなども登場。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に前売り券を劇場まで持って行って当日券と交換して確保。電車賃を考えたら当日券とほとんど変わらない。ネットから確保できればいいのに。

 当日は12〜13分前に開場。観客層は若い人が少しで、メインは中高年。女性は1/5〜1/4くらい。最終的には226席に6.5割くらいの入り。スタジアム形式の劇場なのに、運悪く前の席に背の高い(つまり座高も高い)外人さんが座って、初めてこの劇場で頭が邪魔で字幕が見えなくなった。やっぱり真ん中寄りは逃げられないのでいかんなあ。

 スクリーンはビスタで開いていて、予告編の前に、例の映画っぽいペプシのCM「桃太郎キジ編」が上映されたが、大きなスクリーンで見てもまったく違和感なし。ヘタな映画よりよっぽどクオリティが高い。ぜひ1本の映画として見たい。

 上下マスクの「エヴェレスト神々の山嶺」は日本版の方。かなりウエットな感じが気になる。ハリウッド作品とは大きく違う。絵のクォリティも大きな差がある。ハリウッドはきれいでクリア、解像度も高い。3/12公開。

 上下マスクの「007スペクター」は新予告に。ついにアクション・シーンが。ただサイトはなく、FacebookかTwitterのみの模様。

 上下マスクの「コードネームU.N.C.L.E.」も新予告に。TVとは正反対の暗さ。これで面白くなるのか? 11/14公開。

 スクリーンのカーテンが左右に広がって(締まりが有って良い!)、「映画泥棒」のあと暗くなって本編へ。


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