2015年10月25日(日)「ギャラクシー街道」

2015・フジテレビ/東宝・1時間50分(All Cinemaでは109分)

シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル(表記なし)

(日本語字幕版もあり)

公式サイト
http://galaxy-kaido.com
(全国の劇場リストもあり)

2265年、スペースコロニー「うず潮」と地球を結ぶスペース幹線道路、ルート246666は通称「ギャラクシー街道」と呼ばれ、かつてはにぎわっていたが、今はスーパー・ハイウェイができてすっかり交通量も減り、寂れてしまっていた。そのギャラクシー街道にあるハンバーガー・ショップ「サンドサンドバーガー・コスモ店」も老朽化が進み、店長は地球へもどってやり直したいと帰還の申請を出していたが、今日も訳ありの客がポツポツとやって来ていた。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーむ。これは…… 印象としては1場構成の舞台のような感じ。なおかつミュージカルっぽい。それも、悲惨なパターンを明るく描くというタイプの。本作はSFという形になってはいるが、ロマンティック・コメディというより、ドロドロの人間ドラマ。たぶん、そのまま日本の場末のさびれた街道沿いのレストランの話にしたら、お涙ちょうだいの演歌的な作品になっていたはず。そのためか、ほとんど笑えない。小さく数人が声を出して笑ったのが2〜3回。

 辞めたがっているレストランの店長と、浮気を疑われている妻、やる気のないふてぶてしい店員、店長の元恋人、ぽん引き、娼婦、汚くて嫌われている男、三角関係の警備会社の上司と部下、街道をお取りつぶしにしようと調査している役人……などなど、ネガティブな登場人物ばかり。舞台は寂れた街道(それでもよく客が来るのだが)。見た目だけは奇抜でコメディという設定になっているが、どうしてどうして、かなりドロドロ。相談相手として登場するコンピューターのキャラ、堂本博士も、結局何もアドバイスせず、面白いことも言わない。……見終わると、ものすごく疲れる。湯あたりしたような気分。長い110分。

 しかし、画質は素晴らしく、解像度は高く、色も濃く、コントラストもくっきりして力強い絵。日本映画には珍しい感じ。セット美術も、コテコテの日本の雰囲気を狙っていて、レトロフューチャーな味のある仕上がりで良かった。音もちゃんとサラウンドになっていたが、やや不自然で、いかにも作った感じだったのは残念。

 三谷作品なので、いつものようにオールスター状態の群像劇式。メインは香取慎吾と綾瀬はるかの夫婦で、そこに夫の元彼女の優香、妻に横恋慕する遠藤憲一が絡んでくると。おかしかったのは、いつもふてくされている店員の大竹しのぶと、スペース国土交通省の役人の空想が実体化したしゃべらない白塗りの男の浅野和之。マルセル・マルソーみたい。

 カンに障るキャラが多いのだが、中でも突出していたのが、スペース・コールガールのイルマ。ミラクルひかること田村梨果が演じているが、とにかくキャラが酷い。演技がうまいこともあってそれが倍増している。

 もちろん監督・脚本は三谷幸喜。本作の前の映画といえば「清須会議」(2013・日)か。ボク的には「ステキな金縛り」(2010・日)が面白かったが、最も笑っておなかが痛くなり、涙まで出たのはNHKで放送された舞台、役所広司の「巌流島」かなあ。

 セットは良かった。舞台的な感じもするが三谷作品はいつもセットが凝っている。美術は北川深幸、コンセプト・デザインは種田陽平。北川深幸は三谷監督が手がけたWOWOWのTVムービー「大空港2013」(2013・日)の美術も担当しているという。種田陽平は大ベテランで、「キル・ビル」(Kill Bill: Vol. 1・2003・米)など海外作品にも多く関わっている。美術が素晴らしかったアニメ「思い出のマーニー」(2014・日)の美術監修も行っているらしい。多くはこの人のおかげか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は40分前くらいにビルの入り口が開いた。全席指定で、ムビチケカードで確保して、15分前くらいに開場。観客層は若い人が少しで。メインは中高年。男女比は5.5対4.5くらいで、やや男性の方が多かった。若い女性で遅れてくる人が多かったような。最終的には580席に4割くらいの入り。これから増えるだろうか。ちょっと微妙。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は…… 左右マスクの「サヨナラの代わりに」は予告を見る限り女性版「最強のふたり」(Intouchables・2011・仏)という印象。感動的ではあるが、どうなんだろう。11/7公開。

 左右マスクの「杉原千畝」はとても感動的な感じなのに、主人公が幼い子供と見つめあって「うん」とうなずく、みたいなわざとらしいカットが鼻について、作った感がしてしまった。実話なのに……。12/5公開。

 映写機のマスクが左右に広がって、シネスコになって本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ