2015年10月31日(土)「PAN〜ネバーランド、夢のはじまり〜」

PAN・2015・米/英/豪・1時間52分(IMDbでは111分)

日本語字幕翻訳:手書き風書体下、藤沢睦美/シネスコ・サイズ(デジタル、by Panavision)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、DATASATも)

(米PG指定)(日本語吹き替え版、3D上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/pan/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ある夜、ロンドン、ケンジントン公園の孤児院にピーターと手紙のつけられた男の子が置き去りにされる。12年後、第二次世界大戦が始まり、食料が配給となるなか、孤児院の院長は配給をくすねており、さらに孤児を売り飛ばしているという噂があった。すると孤児院に海賊旗を掲げた夜、海賊船がやってきて孤児たちをさらい始める。ピーター(リーヴァイ・ミラー)も捕らわれ、ネバーランドへ連れて行かれる。海賊のボスは黒髭(ヒュー・ジャックマン)で、さらわれてきた者たちは妖精の粉末を鉱山から掘り出す作業をやらされていた。

72点

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 うーむ、これは…… 悪くないのに、感動が薄く、途中ミュージカルのようなパートになって眠くなり気を失いそうになった。

 現実世界はモノトーンで重苦しい雰囲気。一方、ネバーランドは明るく、色鮮やかで生き生きした感じ。そしてお金のかかったセット、驚くべきビジュアルの数々。見事な合成技術。クリアで立体的な音響効果。そして有名俳優たち。みんなそれぞれ素晴らしい。

 ただ、どこかで見たような気がするところもあった。「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(Star Wars: Episode I - The Phantom Menace・1999・米)あたりのアミダラというか、「落下の王国」(The Fall・2006・米/印)みたいなヘア・スタイルとか、「アバター」(Avatar・2009・米/英)のようなストーリー展開、ラストに船がもどってくるのは「スター・ウォーズ」(Star Wars・1977・米)のハン・ソロか。

 たぶん、冒頭の現実世界からファンタジーに寄りすぎていたのではないだろうか。第二次世界大戦のシーンではスピットファイアーまで出しておきながら。まるで絵に描いたような、カリカチュアライズされすぎた孤児院の院長あたりから、やりすぎ。大人だと多くの人が引いてしまうのではないだろうか。こんなヤツいないよと。子供向き、専用ということなら良いかもしれないが。ラストは突き抜けて、宇宙まで行ってしまったような。行き過ぎだろ。「スター・トレック」(Star Trek: The Motion Picture・1979・米)のヴォイジャーか。

 そしてその孤児院のパートが、なにやら思わせぶりで、ファンタジーの世界とつながるようなものがいくつかちりばめられている感じがして、スレた観客はラストに「結局、主人公の夢でした」というオチになるのではないかと思ってしまう。「ネバーランドは夢だ。永遠に冷めない夢だ」という黒髭のセリフもあるし。これが楽しめない要素のひとつかも。

 たぶん最大のものは、ティンカーベル、フック船長、タイガー・リリー、スミー、ワニが出てくるものの、それぞれのキャラクターが一般的な「ピーター・パン」とは大分違うこと。なにしろフック船長とピーターは相棒みたいになっている。さすがに悪者としてのインディアンは出てこず、被害者としての先住民で、悪役は海賊黒髭と海賊たち。ピーター・パン誕生の物語なのでウェンディたちはいない。

 ピーターはリーヴァイ・ミラー。世界中で行われたオーディションで選ばれ、本作でメジャー映画デビューを飾った新人。

 黒髭はヒュー・ジャックマン。頭をスキンヘッドにし、不気味なメイクで下品な悪党になり切っている。本作の前に「チャッピー」(Chappie・2015・米/メキシコ)でも悪役を演じている。「ニューヨークの恋人」(Kate & Leopold・2001・米)の王子様役がウソのようだ。

 フック船長は本作では主人公を助ける良い人。演じたのはギャレット・ヘドランド。「トロン:レガシー」(TRON: Legac・2010・米)で主人公を演じていた人だ。

 タイガー・リリーはルーニー・マーラ。ハリウッド・リメイク版の「ドラゴン・タトゥーの女」(The Girl with the Dragon Tattoo・2011・米/スウェーデン/ノルウェー)で主演した人。ただ残念なことに、その後パッとしなかった。印象がまったく違ってビックリ。

 ピーターの母メアリーは、ほんのちょっとしか出ないがアマンダ・サイフリッド。前はセイフライドと言っていた気がするが、とにかく最近よく見かける。毎回書いている気がするが、ちょっと「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)・2014・米)のエマ・ストーンと似ている。最近作は残念な「デッド2」(Ted 2・2015・米)や、見ていないが「パパが遺した物語」(Fathers and Daughters・2015・米/伊)。

 脚本はジェイソン・フュークス。基本は俳優で、TVなどの脚本を3〜4本書いている。本作の前に日本劇場未公開となった続編アニメ「アイス・エイジ4 パイレーツ大冒険(未)」(Ice Age: Continental Drift・2012・米)を書いている。うむむ。

 監督はジョー・ライト。長編劇場作品のデビュー作「プライドと偏見」(Pride & Prejudice・2005・仏/英/米)で高い評価を受け、その後も「つぐない」(Atonement・2007・英/仏/米)や「路上のソリスト」(The Soloist・2009・英/仏/米)など話題作を手がけている。ボク的には少女の殺し屋を描いた「ハンナ」(Hanna・2011・米/英/独)が面白かったが、「アンナ・カレーニナ」(Anna Karenina・2012・英)など文学路線の監督がいきなりファンタジーとは。合わなかったのかも。

 銃は、黒髭が彫刻入りのデコレーションされたシルバーのパーカッション・ピストル2挺拳銃。部下の海賊たちはパーカッションのライフル。

 翌日が映画の日で、一律1,100円で見られることから混雑が予想されるため、公開初日を選択。初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで座席を確保。当日はたぶんアニメの「ガンダム」の初日でもあり、劇場は大混乱。すごいなあ。映画の日と重なっていたら、どうなっていたんだろう。

 10分前くらいに開場となって場内へ。子供向けの内容なのに観客層は若い人もいたが少しで、メインは中高年。最初、20人くらいいた内、女性は5〜6人。字幕版だったからか、子供はいなかった。朝早めなこともあり、最終的には301席に50〜60人。明日の映画の日に見ようという人が多いのかも。こんなに少ないことはないだろう。

 スクリーンはシネスコで開いており、気になった予告編は…… 予告ではよくわからない邦画、左右マスクの「愛を語れば変態ですか」は、どうも、誰でも愛する女の話らしい。11/28公開。

 四角の枠付き「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」はまだ古いティーザー予告で、内容はよくわからないが、どうもスーパーマンが悪役のよう。ただベン・アフレックが演じるバットマンのマスクがちょっとぼってりしてダサい感じも…… そして3D上映があるのはちょっと不安材料。3/25公開。

 四角の枠付き「クリード チャンプを継ぐ男」はロッキー・シリーズの最新作になるらしい。スタローンが、かつてのライバルアポロの息子を鍛え上げるのだとか。しかも、ロッキーが病気? うむむ。どうなんだろう。アポロの名字がクリードだったんだ。12/23公開。

 3D-CGと人形アニメらしい四角の枠付き「リトルプリンス 星の王子さまと私」は新予告に。なかなか面白そう。3D上映もありかあ。11/21公開。

 四角の枠付き「コードネームU.N.C.L.E.」はまもなく公開なのに、まだ古い予告のまま。あまり期待されていないのか、出来が悪いのか。予告では女子の1960年代のファッションが素敵だが、どうにもダークな雰囲気が流れていた…… 11/14公開。

 映写機のマスクが左右に広がってシネスコになり、暗くなって本編へ。


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