2015年11月7日(土)「グラスホッパー」

GRASSHOPPER・2015・「グラスホッパー」製作委員会・1時間59分

ビスタ・サイズ(デジタル、ソニーCineAlta、パナソニックLUMIX GH4)/ドルビー・デジタル

(日PG12指定)(一部日本語字幕付き上映もあり)

公式サイト
http://grasshopper-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ハロウィーンの夜、渋谷のスクランブル交差点で、薬でトんだ男が車を暴走させ、多くの人が死亡する。その中に鈴木(生田斗真)の婚約者、百合子(波留)もいた。そして復讐を考え続けていた鈴木の前に「本当の犯人は別にいる。フロイラインを調べろ」というメモが届く。鈴木はキャッチ・セールスで健康食品を売るそのフロイラインの販売員として働き始める。ある日、鈴木が教師をやっていた時の教え子というメッシュの女の子(佐津川愛美)が現れ、事務所へ連れて行って商品を売りつけようとすると、社長の比与子(菜々緒)が飲み物に薬物を混ぜ眠らせてしまう。寺原会長(石橋蓮司)の息子のジュニア(金児憲史)のおもちゃにするという。その頃、寺原会長の依頼で殺し屋の鯨(浅野忠信)は事件を嗅ぎつけた記者を自殺させようとしていた。そして同じくナイフ使いの殺し屋の蝉(山田涼介)は、仲介屋の岩西(村上淳)を通して寺原会長の依頼で、渋谷で薬を売ろうとしていたグループを皆殺しにしようとしていた。

72点

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 これは「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・英/仏/米)のような印象。つまり殺し屋群像劇。コミカルな要素もかなりあったが、たぶんシリアスなドラマとして作っているのだろう。リアルな暴力満載で、血まみれで、悲惨で、ドロドロで、笑うに笑えない。微妙なバランスで「スモーキン・エース」になったかも。いずれにしても、予告の印象とはまったく違った。原作を読んでいた人には違和感はなかったかもしれないが、予告は一体なんだったんだろう。

 バイオレンス・シーンはかなり緊張感もあり、怖くていいのだが、思い出のシーンなどのソフトなラブ・ストーリー的ドラマ部分が、いかにも作りものっぽかった。いまひとつ。だから思い出してもあまり涙を誘わない。ぐっと来るのは1カ月後となるラストの再会シーン。

 特に良かったのは、菜々緒が演じる、組織の幹部で怪しげな健康食品を売る会社フロイラインの比与子。なかなかの迫力と怖さ。美女だけにそれが際立つ。役にぴったりは待っていた。

 巻き込まれる鈴木は生田斗真。最近映画に出まくりの印象。本作の前に「予告犯」(2015・日)が公開されていて、その前に見たのは同じ瀧本監督の「脳男」(2013・日)。しかしそのあと「土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官 REIJI」(2014・日)と「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」(2014・日)という長いタイトルの作品にも出ていると。おびえる感じが良かった気がする。

 まあ浅野忠信、波瑠、石橋蓮司、宇崎竜童、吉岡秀隆、麻生久美子など、オール・スターのようにたくさんの有名俳優が出ているが、強く印象に残ったのは、とんでもない殺し屋「蝉」を演じた「映画暗殺教室」(2015・日)の山田涼介。こんな約も説得力を持って演じられるんだ! そして仕事を仲介する岩西を演じた村上淳。見ていないが「新宿スワン」(2014・日)などに出ているらしい。憎めない悪役で、いい味を出していた。驚いたのはアダルトショップの経営者「桃」がミュージシャンの山崎ハコだったこと。凄いメイクで、不気味な感じだったが。「脳男」にも出ていたらしい。

 原作は140万部を突破したという伊坂幸太郎の同名小説。すでに「陽気なギャングが地球を回す」(2006・日)とか「Sweet Rain 死神の精度」(2007・日)、「重力ピエロ」(2009・日)などたくさか映画化されている。ボク的には「コールデンスランバー」(2009・日)が非常に面白かった。劇中登場するミュージシャン、ジャック・クリスピンは架空だそうだが、「コールデンスランバー」もビートルズの曲が1つのキーになっており、音楽がうまく使われている感じ。

 脚本は青島武。「あなたへ」(2012・日)で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞しているんだとか。プロデューサーもやっているようだが、どれも見ていないので何とも。

 監督は瀧本智行。助監督からたたき上げの人で、監督デビューは「樹の海」(2004・日)。「犯人に告ぐ」(2007・日)、や「はやぶさ 遥かなる帰還」(2012・日)、「脳男」などを撮っている。

 銃は比与子がPPKかPPK/S。ほかにチーフスペシャルのようなリボルバー。銃器特殊効果はビッグショット。

 一部画質が良くない。古い映画を見ているみたい。わざと荒らしているのだろうか。デジタル撮影のはずなので、フィルムの質感をだそうとしてこうなったとか。室内のシーンは解像度が高い感じだったが……。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は建物自体が20分前くらいに開場し、早い回の人がどっと自動発券機に群がったため、大混乱。10分前に開場になるんだから、もうちょっと考えろよと。どうにか発券してトイレに行ったら間もなく10分前となり開場。

 観客層は若い人から中高年まで幅広く、メインは若い人。男女比は3対7くらで女性の方が多く、特に若い女性が目立っていた。生田斗真狙いか、はたまた山田涼介狙いか。最終的には580席に7割くらいの入り。比較的時間が早かったにも関わらず、この入りはさすが。

 スクリーンはシネスコで開き、気になった予告編は…… やっぱりなかなかタイトルが出なくてイライラさせられる予告が多い。ラストにちょっとだけ公開日と一緒に出しても覚えられないって。左右マスクの「残穢」は新予告に。ちょうだいお化けの「劇場霊」よりずっと怖そう。そして謎解きも面白そう。1/30公開。

 左右マスクの「植物図鑑」はいかにもという感じの恋愛映画。この手の映画、最近多いなあ。6/4公開。

 四角の枠付き「秘密THE TOP SECRET」は、死者の記憶を映像化できるスキャナーで事件を解決して行くミステリーらしい。監督が「るろうに剣心」(2012・日)の大友啓史、生田斗真、岡田将生共演。2016年公開。


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