2015年11月28日(土)「黄金のアデーレ 名画の帰還」

WOMAN IN GOLD・2015・英・1時間49分

日本語字幕翻訳:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri)/(表記無し。IMDbではドルビー・デジタル)

(英12A指定)

公式サイト
http://golden.gaga.ne.jp
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

1998年、オーストリア出身で、アメリカのロサンゼルスで小さなブティックを経営しているマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、姉が亡くなり、葬式に参列してくれた友人のバーバラ・シェーンベルク(フランシス・フィッシャー)から遺品の相談ため、息子の弁護士のランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)を紹介してもらう。マリアはかつて第二次世界大戦の時、ナチスの奪われたグスタフ・クリムトに描かせた伯母アデーレの絵が、戦後、オーストリア国立ベルベデーレ美術館に展示されていることから、親族を代表してオーストリア政府に返還を求めたいと言う。ちょうどオーストリア政府は、国のPRも兼ね、ナチスに奪われた美術品などの返還に応じる表明をしていたのだ。ランディは独立に失敗し、どうにか新しい弁護士事務所に就職したばかりで、絵の価値が1億ドルをくだらないことを知ると、上司に訴えてオーストリア出張の許可を得る。

74点

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 感動的な物語。しかも実話の映画化。ナチに強奪された絵を親族を代表して1人の女性が取り戻そうとする一途な気持ちが、辛い過去の思い出と共に描かれることで、良く伝わってくる。そして売れない弁護士が、自分のアイデンティティを見つめ直し、私財を投げ打って奮闘し、成長する物語も重なり、実に良くできたお話になっている。国家のPRと役人たちの頑なさと、ナチス・ドイツの恐ろしさが、敵としてバランスよく存在し、駆け引きがドキドキの展開となっている。うまいなあ。

 そして、パッとしない若い弁護士と、高貴な生まれの気の強い年老いた女性との関係も実に面白い。しかも、どちらもルーツはオーストリア人という共通点がある。やはり何と言ってもヘレン・ミレンがピタリとはまっている。ピッタリのイメージ。

 画面の色が、現代は鮮やかな色で、辛い記憶はちょっと赤みがかった古い感じのモノトーン調のカラー、伯母のアデーレとの思い出は黄金がかったセピア調を帯びているという演出も良かった。しかも映画は本物の黄金から始まる。クリムトがアデーレの絵に金箔を貼って行くのだ。うまい!

 ネタとしては、第二次世界大戦中のナチスによる名画の強奪(宝飾品や調度品も含まれているが)であり、これは同時期に日本で公開された「ミケランジェロ・プロジェクト」(The Monuments Men・2014・米/独)ともつながる。

 主人公夫婦がナチスから逃れ脱出するシーンは、かなりドキドキした。実に際どい。いつ捕まって連れ戻されるかわからない状況の描き方が秀逸。




【ただいま執筆中。少々お待ちください】


 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にたまったポイントで座席予約。当日は10分前くらいに開場。観客層はほとんど中高年。まう第二次世界大戦絡みの話だからなあ。最初男性が少し多めの感じだったが、最終的に男女比は半々くらいに。3分前くらいに6割ほどが埋まったが、たぶん184席に6.5割くらいの入り。まあ地味な作品なのでこんなものか。

 気になった予告編は…… むき出しのシネスコ・スクリーンの四角枠付き「パディントン」は新予告。直立二足歩行の小さなクマが、何の違和感もなく実写シーンに溶け込んでいる。雰囲気としては「スチュアート・リトル」(Stuart Little・1999・独/米)のような感じ。よりリアルだったけど。やっぱり悪役はニコール・キッドマンなんだ。「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(The Golden Compass・2007・米/英)みたいにならないと良いけど。1/15公開。

 四角の枠付き「シーズンズ 2万年の地球旅行」は何回見ても映像の持つ力が半端ない。圧倒される。すばらしい高画質で、しかもものすごく動物達に近く、決定的瞬間が捕らえられている。一体どうやって撮ったんだろう。1/15公開。

 枠付き「ブリッジ・オブ・スパイ」も新予告に。だんだん内容がわかるようになってきた。なかなかドラマチックな展開で、しかもアクションも結構あるらしい。これは見たいかも。1/8公開。

 枠付き「海難1890」は過去と現在に繋ぐ物語になるようだ。一部の人には良く知られた話なので、コテコテのお涙ちょうだい物語になるのかと思ったら、王道ではあるけれど1890年のエルトゥールル号の事故の話だけでなく、1985年のテヘラン邦人救出劇も絡ませてあると。確かに予告だけでも泣きそうな感じが。いまトルコは大変なことになっているようだけど…… 12/5公開。

 枠先の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は新予告に。最初の予告だと黒人のキャラクターがメインのような感じだったが、今度の予告を見ると白人の若い女性がメインのような雰囲気。一体どんな話になるんだろう。R2D2とC3POはどこにいってしまったの? 12/18公開。

 場内が暗くなって、映写機のマスクが左右に広がってフルのシネスコ・サイズになって本編へ。


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