2015年12月12日(土)「海難1890」

KAINAN 1890・2015・日/トルコ・2時間12分

(製作:東映/木下グループ/東映ビデオ/電通/讀売テレビ/クリエイターズユニオン/ぴあ/イノベーションデザイン/ノーリツ鋼機/読売新聞社/朝日放送/毎日新聞社/BSフジ/MXエンターテインメント/北日本新聞社)

日本語字幕:手書き風書体下/シネスコ・サイズ(表記無し)/音響不明

(日G指定)(一部日本語字幕付き上映もあり)

公式サイト
http://www.kainan1890.jp
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

1889年7月14日、トルコはヨーロッパの圧力を受ける中、威信を示すためにも、極東にある日本の天皇への答礼という危険な旅に軍艦「エルトゥールル号」を派遣する。618名を乗せた艦は無事、1890年6月7日に横浜港に到着。明治天皇にスルタンの親書を渡すと、土産物などを買って帰航しようとするが、ここで乗組員がコレラに感染するという事件が起き、延期されることに。ようやく帰国の途につくことになった時は9月15日で、台風の季節と重なってしまった。そして9月16日、エルトゥールル号は和歌山県樫野崎沖で座礁、エンジンが爆発し沈没してしまう。座礁現場となった小さな島の漁村では、総出で救出に当たり、69名を助け出す。

72点

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 1985年のイラン・テヘラン邦人救出劇のときにネットなどで話題になった実話の映画化。確かに感動的。またここまでのディテールは知らなかったから、その点でも見る価値はある。

 ただ、1890年の海難事故がメインでありながら、感動するのは1985年のイラン・テヘラン邦人救出劇の方。

 気になったのは、1985年のテヘラン邦人救出劇でのトルコ語の日本語字幕が予告と違っていて、はっきりエルトゥールル号の事件のことを言わず、「はるか昔トルコの英雄達が祖国に帰ることができた」としか言わないのが気になった。日本人に助けられたではない。それでなぜ日本人を助けてくれたかというと、映画の流れでは、取り残された日本人を助けることができるのは自分たちしかいないからという感じになっている。昔の出来事はあんまり関係ない。ただ、トルコ人の幼い子供がエルトゥールル号ことを書いた本を持っていたようだったが……。予告では「昔、日本人に助けてもらった。今度は我々が助ける番だ」というような感じだったと思う。トルコ人は学校の授業で習い、誰でも知っている話らしいけど……。

 そして、明治期の日本のパートは、どうにもお芝居臭いというか、作り物臭い。何だか古い映画か、舞台の芝居を観ているような感じ。順番守ってセリフを言ったり、セリフを言う人がわざわざ主人公に寄って来たり、ちょっと大げさなセリフ回しだったり。村人の顔が無意味に汚れていたり…… いかにも時代劇がかっていて、作られているなあ、演じているなあと。だから逆に感動しにくかったのかも。

 一方、テヘラン邦人救出劇は現代劇なので、もう少しリアリティある感じだった。なんだか別人が作ったみたい。トルコの人たちが空港で日本人のために道を空けるシーンは感動的だった。あやうく涙が流れそうに。日本のパートは臭かったかなあ。

 メインのキャストとなるのは、エルトゥールル編とテヘラン救出編の両方に出ている忽那汐里とケナン・エジェの2人。忽那汐里はTV・CMでよく知られる帰国子女。「許されざる者」(2013・日)で娼婦を演じていた。

 ケナン・エジェはエルトゥールル号乗組員の将校ムスタファと、テヘランのトルコ大使館員ムラトを演じていた。アメリカ生まれながら、現在はトルコにもどってTVや舞台、映画をやっているという。

 意外だったのは、あのNHKの国民的ドラマ「おしん」(1983・日)でヒロインを演じた小林綾子が村人役で出ていたこと。あと他にもたくさん、オールスター・キャストのように出ているが、特に印象に残る人はいなかった。

 脚本は小松江里子。TVの脚本を多数手がけており、その中にはNHKの大河ドラマ「天地人」(2009・日)もある。「花燃ゆ」(2015・日)も作でクレジットされている。映画では最近「利休にたずねよ」(2013・日)を書いているが、見ていないので何とも言えない。本作を見る限り、なんだか舞台みたいだなあという印象。

 監督は田中光敏。CMから映画の世界へ。デビュー作は「化粧師KEWAISHI」(2001・日)。「利休にたずねよ」も手がけているが、ボクが見たのは「火天の城」(2009・日)のみで、それも時代劇のパターンにはめて作ったような印象だった。テヘラン救出編でも監督しているのだろうか。エルトゥールル編のトルコ・パートは? どうも国内パートと雰囲気が違った。現地スタッフに撮らせたとか……俳優達はほとんとぜ日本語をしゃべらないわけだし……ことに現代版のテヘラン救出編は割と良いような気がしたけど…… どうなんだろう。

 銃は、テヘラン救出編で、かなり使い込まれて塗装のはがれかかったG3ライフル、UZIサブマシンガンなどが出ていた。

 音響は何を使っているのかわからなかったが、良く音も回っていた。

 ラスト、エンド・クレジットも終わった後、ビデオ・メッセージがあり、現トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・ウルドアンが登場。驚いた。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は早朝8時30分からの上映。全席指定で、ムビチケカードで確保し、当日は15分前くらいに開場。観客層は予想通り、中高というより高寄り。最初8人で女性は2人。やがて若い人もチラホラ来たが、5分前くらいで16人ほどのほとんどは中高年、そのうち女性6人。最終的には88席に25〜30人ほど。これはかなりの苦戦だろう。

 気になった予告編は…… 四角の枠付き「世界から猫が消えたなら」は佐藤健主演。ティーザーなので、まったく内容がわからない。悲恋ものっぽいが、5/14公開。

 枠付き「アイアムアヒーロー」は、何だか「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)のような印象のゾンビ感染パニック・ムービー。また漫画の原作で、主演は大泉洋、共演に有村架純、長澤まさみ。4/23公開。

 左右マスクの「さらばあぶない刑事」はついに本当の最後だろうか。期待していいのかどうか、よくわからない。1/30公開。

 枠付き「クリード チャンプを継ぐ男」は新予告に。親友の息子に力を貸してやって、自分は病気で倒れるってか。12/23公開。

 場内が暗くなって、映写機のマスクが左右に広がって、本編へ。


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