2016年3月26日(土)「砂上の法廷」

THE WHOLE TRUTH・2016・米・1時間34分(IMDbでは93分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田理枝/シネスコ・サイズ(表記無し)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://gaga.ne.jp/sajou/
(音に注意。全国の劇場リストもあり。情報少。)

1匹狼の敏腕弁護士リチャード・ラムゼイ(キアヌー・リーヴス)は、17歳まで6カ月の1人息子マイク・ラシター(カブリエル・バッソ)が、父親で大物弁護士のブーン・ラシター(ジム・ベルーシ)を殺したという第1級殺人の弁護を引き受けることになる。そこでアシスタントとして若手女性弁護士のジャネル(ググ・ンバータ=ロー)を雇う。ところが、マイクはリチャードにさえもまったく何も話さない。それでもブーンはリチャードの先輩弁護士で、リチャードは家庭の内情はよくわかっていた。モーテルの1室を事務所として使い、裁判が始まると、弁護側が不利のまま裁判は進んで行くかに見えたが……。

74点

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 また、ミステリーではやってはならないコピーを採用。「94分、あなたは騙され続ける」って、ダメだって。こう言ってしまうことで、せっかく緻密に構築されたミステリーが、先入観を持って見られてしまうために、面白くなくなってしまう。人は反動的に騙されまいと身構えて見てしまうのだ。

 それがなければ、映画自体はなかなか面白いミステリー。ただ、裏切られた感は強く残る。つまり後味があまりよろしくない。騙されて気持ちよく終わるわけではない。むしろ残念な気持ちに。それでメジャー系で公開されなかったのだろう。アート系のそれもジジババ劇場での公開。

 なかなか良くできた法廷ミステリー。誰が本当の犯人なのか。徐々に被害者のダーク・サイドが明らかになり、家族の内情が明らかになり、事件に関わった人々の本当の顔があらわになって、とても面白い。主人公いわく「法廷では誰でも嘘をつく」。そしてそれがこの物語のキーとなっている。

 演出技法としては、実際に起こったらしい映像と、法定での証人の証言を対比するやりかた。どちらも本当かどうかはわからない。しかし映像と証言が微妙に違ったり、のり代というか余白があることから、証人の解釈に違いがあるのではないかと思わされる。この辺がうまい。

 主演はキアヌー・リーヴス。基本的には良い人そうな雰囲気を持っている人。本作の前に日本では殺し屋を演じたハード・アクションの「ジョン・ウィック」(John Wick・2014・米)に出ており、まったく違うキャラクター。まあその前の「47 RONIN」(47 Ronin・2013・米)は酷かったけど。映画にガンガン出ていて、新作が5〜6本控えている。

 ビックリしたのは容疑者となる息子の母で、主人公の雇い主、ロレッタを演じたレニー・ゼルウィガー。歳を取って、誰だかわからなかった。美人は美人なんだけど、容貌が変わり過ぎ。「オートマタ」(Automata・2014・ブルガリア/米ほか)のアンダーグラウンドのロボット博士を演じていたメラニー・グリフィスしかり、「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」(Mr. Holmes・2015・英/米)のローラ・リニーしかり。西洋女性にありがちな、速い老化と劇的な変化で、同じ人だったとは思えないほど。その衝撃。それでも、まだレニー・ゼルウィガーはセクシーな感じは残っていたけど。「ブリジット・ジョーンズの日記」(Bridget Jones's Diary・2001・英/仏/米ほか)の人とはねえ。最後に見たのは日本の劇場未公開の西部劇「アパルーサの決闘」(Appaloosa・2008・米)だったか。8年経ったが、それでも……。

 大物弁護士のブーン・ラシターはジム・ベルーシ。みごとに悪党面でイメージにピッタリ。ただ、しばらく見かけていなかった印象。最後に見たのは、SF時間逆行ミステリー「リバース」(Retroactive・1997・米)だったような。有名なのは「K-9/友情に輝く星」(K-9・1988・米)や「カーリー・スー」(Curly Sue・1991・米)あたり。ボク的には「リバース」とともに、人生やり直しファンタジー「MR.デスティニー」(Mr. Destiny・1990・米)も好きだなあ。

 脚本はニコラス・カザン。「波止場」(On the Waterfront・1954・米)などの映画監督エリア・カザンの息子だ。ギャング映画「モブスターズ/青春の群像」(Mobsters・1991・米)や、後味の悪い「悪魔を憐れむ歌」(Fallen・1997・米)などダークなバイオレンス系を書いている。しかし、真反対のようなSFファンタジーの感動作「アンドリューNDR114」(Bicentennial Man・1999・米/独)も書いている。本作はその中間的な感じか。

 監督は1964年生まれの女性監督、コートニー・ハント。監督デビュー作となる「フローズン・リバー」(Frozen River・2008・米)で、脚本も書いてサンダンス映画祭でグランプリを獲得したらしい。残念ながら見ていない。その後「LAW & ORDER:性犯罪特捜班」(Law & Order: Special Victims Unit・1999〜・米)などTVを手がけ、本作に至るらしい。今後も期待できそうだが、とりあえず新作はないようだ。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。ただムビチケカードを買った時点では、同じ名前の劇場の3館の内どこで上映するかわからず、まあ良いかと買ったら、2番目に酷いところだった。座席がフラットでスクリーンが低い。前の席にちょっと座高の高い人が座ったら、字幕が読めなくなる。こんなとこで全席指定にするなよ。しかも中央に通路がないので、中央の席に座るのは大変。遅れてくると多くの人に迷惑をかけることになる。

 ドキドキしたが、今回は幸いにも前席が座高の高いヤツではなかったので助かった。まるでギャンブルだ。20分前くらいに着いたら、すでに開場済み。観客層は中高年というか、ジジババ劇場らしく、かなり老寄り。この劇場は平均年齢がかなり高い。中年層は1/3から1/4くらい。男女比はほぼ半々。

 最終的には201席に9割くらいの入り。これはすごい。もっと良い劇場でやってくれたらもっと入っていたのではないだろうか。関係者が6〜7人。多いって。

 スクリーンはビスタで開いており、明るいまま案内を上映。なかなか見にくい。その後半暗になってCMへ。気になった予告編は…… 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」は「ローマの休日」(Roman Holiday・1953・米)の脚本家の実話らしい。面白そうだが、この系列の劇場じゃあなあ。7月公開

 「帰ってきたヒトラー」は本物のヒトラーがタイムスリップして現代に現れ、物まね芸人として本人を演じ、人気を得て行くというコメディらしい。6月公開。

 「神様メール」は本当の神様がブリュッセルに住んでいて、その娘が人々の余命を一斉メールしてしまったことから世界中が大パニックになり、娘が世界を救う旅に出るというコメディらしい。見たいけど劇場がなあ……。5/27公開。

 上下マスクの「マクベス」は正統派のシェイクスピア劇らしい。マイケル・ファスベンダーとマリオン・ミティヤールの顔合わせ。なんと配給は吉本興業とか。5/13公開。

 「ヘイル・シーザー」はコーエン兄弟の最新作。ジョージ・クルーニーやジョシュ・ブローリン、スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタムらの豪華な顔合わせ。ハリウッドの撮影所から大スターが消えて、それをスターの卵達が探すというものらしい。面白そうってか、すごそう。5/13公開。

 上下マスクの「追憶の森」は新予告に。だんだい内容がわかるようになってきた。これまたすごそうな感じ。4/29公開。

 スクリーンのマスクが少し上下と、左右に広がってシネスコ・サイズになって本編へ。


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