2016年4月23日(土)「フィフス・ウェイブ」

THE 5TH WAVE・2015・米・1時間52分

日本語字幕:丸ゴシック体下、チオキ真理/シネスコ・サイズ(デジタル、with ARRIマーク、ALEXA)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASAT、SDDSも)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.5thwave.jp/site/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

アメリカ、オハイオ州に突然巨大な物体が現れ、人々はアザーズと名付ける。それは10カ月ほど空に浮遊したのち、突然電磁パルスを発して全世界が停電。自動車や飛行機なども動かなくなり、水道も止まってしまう。さらに地震を発生させ、世界中で津波が発生、沿岸地域と島のほとんどが壊滅した。さらに鳥インフルエンザが発生し、人類の多くが感染し死亡してしまう。高校生のキャシー(クロエ・グレース・モレッツ)は母を失い、父と弟のサム(ザッカリー・アーサー)の3人で家を出て、生き残った人々が集まっているキャンプに行く。しばらくして、動かないはずの車でヴォーシュ大佐(リーヴ・シュライバー)率いるライト・パターソン基地の一隊がやってきて、大人と子供に分けて、先に子供を保護するとバスに乗せて連れ去る。しかしキャシーのみが乗り遅れて残されてしまい、大人たちが皆殺しに去れるところを目撃、1人逃げ出す。

68点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーむ、これは……。まるでTVドラマのパイロット版のような感じ。映画としてはかなり低予算。特殊効果も最初の津波のシーンだけで、あとはほとんど無し。予告にあったシーンだけ。お手軽。脚本も、原作はあるようだが、練り込まれていない感じで、どうにも納得できない展開。しかも、ディテールがあるようで、ほとんどストーリーに関係のない、なくてもいいような内容のないものばかりで、主人公達の感情もほとんどまったく伝わってこない。退屈、眠い。物語も中途半端で、結局ほとんど何も展開していない。ただ姿をまったく見せない宇宙人らしきやつらが侵略してきたというだけ。あえて言えば、画質はなかなか良く、絵もきれいで、音はクリアで迫力がある。

 なにしろスクリーンがビスタのままのマスク上映だ。マスクは映写機で付けているのか、もともとフィルムにあるのか、シネスコ・サイズなのにレンズを使っていない感じアリアリ。つまりTV感覚なんでは。話は何も解決していない。起承転結で言えば「起」のみ。ここから物語が始まる。無駄なエピソードもTVと考えれば、まああっていいかと。24回くらいの連続ものなら、そんなこともあるだろう。

 ありがちなパータンと展開。登場人物もステレオタイプばかり。TVドラマに良く出てくる人物、キャラ大集合。始まったら結末がわかるようなTV的ストーリー。1話じゃ何も起こらない。「24 TWENTY FOUR」(24・2001〜・米)なら速い展開だけど、本作はそうじゃない方。「V」(V・1983・米)とかの、よくある宇宙人侵略もの。新しさはまったく無し。見どころは、主役のクロエ・グレース・モレッツのみ。有名人が出てなかったら、たぶん誰も見ないのでは。IMDbでは5.2点の低評価。

 主演はクロエ・グレース・モレッツ。「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)で注目されたものの、その後あまりパッとしない感じ。デンゼル・ワシントンのアクション「イコライザー」(The Equalizer・2014・米)の娼婦はなかなか良かったが、それでこれか……。この人の出演料で予算を使い果たしたか。このあと4本が製作中で、挽回してくれることを祈りたい。使っていた銃はEOTech付きのM4カービンと、父から渡されたM1911オート。

 ほかに有名俳優は「スポットライト 世紀のスクープ」(Spotlight・2015・米/加)のリーヴ・シュライバーのみ。あとは印象に残らなかった。

 驚くのは、プロデューサーに「完全なるチェックメイト」(Pawn Sacrifice・2014・米/加)の製作と主演のトビー・マグワイアが名を連ねていること。彼はどこへ行ってしまうんだろう。

 この内容で原作があったとは意外だが、同名の小説1本しか書いていない模様。うーん、これで次が……。脚本にしたのはスザンナ・グラント、アキヴァ・ゴールズマン、ジェフ・ピンクナーの3人。クレジット順だとすると、最終的にまとめたのは女性で、ハーレクイン的になってしまったのだろうか。

 スザンナ・グラントは過去になかなか面白かったおとぎ話ロマンス「エバー・アフター」(EverAfter・1998・米)、オスカーを受賞した女性が巨大企業を訴える実話の映画化「エリン・ブロコビッチ」(Erin Brockovich・2000・米)、動物ファンタジーの児童書の映画化「シャーロットのおくりもの」(Charlotte's Web・2006・米/独)、話題になった実話の映画化「路上のソリスト」(The Soloist・2009・英/仏/米)などを手がけている。まあこのジャンルは向かなかったということなんだろう。

 アキヴァ・ゴールズマンは「ビューティフルマインド」(A Beautiful Mind・2001・米)でアカデミー脚色賞を受賞した人。製作も多いが、脚本ではほかに「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米/独)などのSFアクション、「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code・2006・米/マルタほか)などのミステリーなども書いている。TV では「FRINGFE/フリンジ」(Fringe・2008〜2013・米/加)シリーズを手がけている。映画で監督もしたものでは、ボクは感動したミステリーSFファンタジー・ラブ・ストーリー「ニューヨーク冬物語」(Winter's Tale・2014・米)などを書いている。もうちょっと予算があって、脚本はこの人メインで良かったのでは。

 ジェフ・ピンクナーは主にTVの製作総指揮をやっていた人で、「エイリアス/2重スパイの女」(Alias・2001〜2006・米)シリーズや、「FRINGFE/フリンジ」シリーズを手がけている。映画は残念な「アメイジング・スパイダーマン2」(The Amazing Spider-Man 2・2014・米)の原案と脚本。うーむ。

 監督はイギリス人のJ・プレイクソン。2本の短編の後、クライム・サスペンス「アリス・クリードの失踪」(The Disappearance of Alice Creed・2009・英)で監督デビューしたらしい。見ていないのでわからないが、それが評価されて本作につながるらしい。どうなんだろう。

 しかし、どうもこうなった原因は、これを映画にしようとしたプロデューサーたちにあるような気がする。

 ほかに銃はS&WのM64の4インチ、P226、ベレッタM9、訓練に使われるペイント・ガンなど。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで金曜に確保。当日は13〜14分前に開場。関係者が7〜8人いて、アンケートの案内を配っていた。回答はWEBでやるらしい。でもこの出来じゃ答える気にもならない。観客層は中高年というより、老寄り。それも、ほぼ男性。オバさんは数人。最終的には157席の5.5割ほど行っただろうか。5割くらいだったかもしれない。今後は減る一方だろう。

 スクリーンはビスタで開いており、気になった予告編は…… 上下マスクの「ロスト・バケーション」は、島、岸、サメ、というサバイバルか。7/23公開。公式サイトはまだない模様。

 上下マスクの「ゴーストバスターズ」は新予告に。女性4人組みのゴースト・バスターズはどうなんだろう。ふざけてるようにも見えたし……。ただあの曲はアガる。わくわくする。8/19公開。前売りでLEDライトがもらえるらしい。

 ビスタのまま暗くなって、まるで予告のように上下マスクのまま本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ