2016年4月24日(日)「レヴェナント:蘇えりし者」

THE REVENANT・2015・米/香/台/加・2時間37分(IMDbでは156分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、ARRIマーク、ALEXA)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、ドルビー・サラウンド7.1、12トラック・デジタル・サウンド、IMAX6トラックも)

(米PG-13指定、日R15+指定)(IMAX上映もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/revenant/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1823年アメリカ。毛皮会社に雇われたヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)率いるマウンテンマンたち一行を案内していたヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)と息子のホーク(フォレスト・グッドラック)。しかし先住民のアリカラ族の土地に入っていたため突然、一行は彼らの襲撃を受け、大きな被害を受けながらもボートでからくも脱出する。しかしアリカラ族は酋長の娘ポワカがさらわれており、執拗に追ってくる。グラスの忠告で船を捨て、陸路に移った一行だったが、子連れのグリズリーに遭遇し、グラスは瀕死の重傷を負ってしまう。ヘンリー隊長はグラスの出血が多く、長くはないと判断し、息子のホークと隊員のジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)、ジム・ブリジャー(ウィル・ポールター)に特別ボーナスを出すと言って、最期を看取って埋めてやるようにとその場に残す。ところが、グラスはなかなか息を引き取らず、あせったフィッツジェラルドはグラスを窒息させようとするも、ホークに見られ、刺し殺してしまう。そして、アリカラ族の追っ手が来たからグラスを埋めて逃げるしかないとブリジャーを説得し、生き埋めにして、本隊の後を追う。しかし、グラスは死なず、執念ではい出ると、息子の復讐を果たすため、フィッツジェラルドの後を追う。

87点

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 圧倒された。ものすごい映画。アメリカでマウンテンマンの時代に本当にあった話。それを自在なカメラ・ワークで、しかもたぶん広角系のレンズでグッと演技者に寄って撮っているので、臨場感がスゴイ。音声もクリアーで、環境音はとても立体的。デジタルならではの、美しい星空、朝焼け、夕焼け、もや…… 圧倒的。大自然の荘厳さが伝わってくる。

 そして、自在に動き回るカメラは2D上映でも目が回るので、IMAXで見たら気持ち悪くなるかも。しかも、ほとんど1カットの長回しに見えるシーンが多い。カメラが木の真上から降りてくるとインディアン(先住民と呼ぶことが多くなったが、たぶんあえて劇中ではそう呼んでいる)が落馬し、それを白人がライフルのストックで殴ると、頬から血が流れるなど、一体どうやって撮ったのかわからないほど手の込んだシーンがてんこ盛り。この冒頭のマウンテンマンたち一行がインディアンに襲われるシーンは、言葉を失うほど。馬と一緒にカメラも崖を落ちるし、水の中まで潜ってしまうし、川を流される。スゴイなあ。

 主人公が熊に襲われるシーンも臨場感たっぷりで、恐ろしい。子連れのクマには近寄ってはならないと教わった。それを画にしたリアルさ。当時の非力な前装式のフリントロック銃で、グリズリーを倒せるものだろうか。その爪を持っていることは、倒した証しで、人々から尊敬されるという話も聞いた。特に先住民には。それがちゃんと描かれている。

 壮絶なサバイバルと凄絶な殺し合い。とてもリアル。タフでなければ生き残れない。こういう時代があった。とてもボクは生き残れない。すぐ死んでしまうだろう。

 ただ、一般的なアメリカの人々には衝撃的な内容で、あまり受けが良くないのかもしれない。結局、白人達が先住民の土地に侵入して、毛皮を獲るために乱獲して、先住民も次から次へと惨殺し、勝手に国を作ったと。彼らは先住民を野蛮人と呼んだが、先住民の村を焼き払い、女を誘拐して連れ回して陵辱する。一体どっちが野蛮人なのか。それでもこういう映画を作れるのもまたハリウッドなのだ。

 「事実に基づく物語」とあるが、実は、本当にあったことは“American Rifleman”誌の2016年5月号の記事によると「1823年、ヒュー・グラスというマウンテンマンが、熊に襲われたが生き延びた」ことだけだという。それを基にマイケル・パンクが創作して2002年に「レヴエナント 蘇えりし者」という小説にした。それをさらに脚本化しているわけで、これで「事実に基づく物語」と呼んで良いのかどうか。実際には復讐の物語などなかった……。それと映画の出来が良いこととは無関係だが。

 銃は“American Rifleman”誌によると、当時の銃はライフル銃ではなく、前装式の滑空銃身のフリントロック、マスケット銃。そして実際はどうかわからないが、原作ではJacob Anstadtが作ったオクタゴン・バレルの“ライフル”を、馬上で操作しやすい銃身長36インチ(約91cm)のショート・ライフルとし、精度が高く、.53口径、黒色火薬200グレインのフル・チャージで200ヤードの射程と書いているらしい。しかし実際には、当時の銃は銃身長が42〜46インチ(約110〜120cm)で平均で80m程度の有効射程だったとされる。だから“American Rifleman”誌では、作者のマイケル・パンクは銃に詳しくないとしている。

 製作サイドは原作に書かれているJacob Anstadtに近いものとして、Joseph (Jacobじゃない) Angstadt (Anstadtじゃない)人が現代で作り上げたマスケット銃2挺を購入し、もったいないことに、原作に合わせて銃身を切断したという。またトム・ハーディ、ウィル・ポールター、ドーナル・グリーソンら主要キャストが使う銃はマスケット銃だったが、エキストラが使う銃はスプリングフィールドM1873トラップドアに、ハンマーとフリズン(打ち金)を取り付けたハリウッド式マスケット銃だったということだ。武器係はジェレミーMuir、武器コーディネーターはライアン・ステーシー。

 

【ただいま執筆中。少々お待ちください】

 公開2日目の初回、通常字幕版の初回、新宿の劇場は全席指定。ムビチケカードで確保し、当日は12〜13分前に開場。映画の内容から中高年ばかりかと思ったら、さすがにアカデミー賞の力か、若い人から中高年まで、幅広かった。男女比はほぼ5.5対4.5くらいで、やや男性が多い感じ。最終的には、プレミアム席には誰も座らなかったようだが、200席に6.5割くらいの入り。これからもっと増えそうな感じだ。

 気になった予告編は…… 四角の枠付き「ズートピア」は、すでに上映中なのに予告するというやり方。日本語版で、新予告。おもしろそう。

 枠付き「グランド・イリュージョン見破られたトリック」は驚かされたヒット作の続編。ティーザーなので内容は良くわからないが、ほとんど前回と似たような感じ。公式サイトでは、やっちゃいけない広告を展開している。「あなたは必ず、ダマされる。」って、サブ・タイトルとも矛盾するだろ。ハードルが高くなって、観客も身構えるから楽しめなくなるって! 9月公開。

 枠付き「マネーモンスター」は、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツの顔合わせ。TVが絡んでくるマネー・ゲームらしい。犯人の銃はベレッタのM84か。監督は来日が決まっているジョディ・フォスター。6/10公開。

 枠付き「スノーホワイト氷の王国」は新予告に。なんだか「アナ雪」の要素が入っているようで、ちょっとヤバい気もするが……5/27公開。

 枠付き「デッドプール」も新予告に。ヒーローらしからぬ、ちょっと悪な主人公はなかなか過激で面白そう。銃と忍者刀か。6/1公開。

 HULUのCMがあったあとで暗くなって本編へ。


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