2016年4月30日(土)「アイアムアヒーロー」

I AM A HERO・2016・東宝/エイベックス・ピクチャーズ/小学館/電通/WOWOW/博報堂DYメディアパートナーズ/ジェイアール東日本企画/KDDI/TOKYO FM/日本出版販売/小学館集英社プロダクション/ひかりTV/GYAO!・2時間07分

シネスコ・サイズ(表記無し)/表記無し(ドルビー・デジタル?)

(日R15+指定)(一部日本語字幕付きもあり)

公式サイト
http://www.iamahero-movie.com
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15年ほど前、新人賞を受賞した漫画家の鈴木英雄(すずきひでお、大泉洋)は、その後、ヒット作に恵まれず、松尾先生(まつお、マキタスポーツ)のアシスタントをずっとやっている。同棲中の彼女、黒川徹子(くろかわてつこ、片瀬那奈)からは、もう待てないから出て行ってと言われていた。そして、正式な所持許可証を取って所持していたショットガンとともに追い出される。ちょうどその頃、血液感染でゾンビのようになる新しい感染症が発生し、爆発的に広がる。ネットなどの情報では、感染者に噛まれると感染し、頭を完全に破壊しないと倒すことは出来ないという。アシスタント仲間も、先生も皆感染し、タクシーで校外に逃げ出そうとすると、官僚らしい千倉(ちくら、風間トオル)と、女子高生の比呂美(ひろみ、有村架純)も乗り込んでくる。英雄と、赤ちゃんに噛まれて半分だけ発症したが正気を保っている比呂美は、ネットで標高が高いと感染しないという情報を得て、歩いて富士山を目指す。そして途中でアウトレットモールを見つけ、必要なものを調達するため中に入るが……。

74点

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 うーむ、凄いバイオレンス。血しぶき飛びまくりで、ゾンビが相手とは言えやり過ぎの感じも。ちょっと気持ち悪くなるほど。そして、そっちにシフトしすぎて、物語というか、ドラマがまったく見えてこない。感じるのは、やっぱり傑作ゾンビ映画「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)かよ、ということ。指定も同じR15+だし。

 ゾンビモノの定番といえば、ショッピング・センターだろう。本作では代わりにアウトレット・モールが登場する。物資を補給したりするのには、こういう場所が必要というわけだ。これも定番。ただ、標高の高いところへ行くと感染しなくなるという情報もあり、富士山へ向かうところが新しい。それでも、頭を飛ばさないと殺せないとか、歩き方がおぼつかなくてゾンビっぽいし、かまれると感染するのも新鮮さはない。まあ、国際ルールを守ったというところか。

 印象としては、どんな状況でも「普通」から抜け出せない主人公の葛藤と成長を描いた感じなのだろうが、そこは薄く、どうにも続編があるような終わり方で、結局何も解決していない。プロローグ止まり。「フィフス・ウェイブ」(The 5th Wave・2015・米)じゃあるまいし。主要な登場人物の造形が、浅いというか足りないというか、物足りない感じも。アクションは素晴らしいのだが……。

 鈴木英雄は大泉洋。よく映画に出ている。雰囲気的には「探偵はBARにいる」(2011・日)がピッタリだったような気がする。本作ではコミカルな要素はほとんど排除されている。ボクは見ていないが最近だと「駆け込み女と駆け出し男」(2015・日)に出ていたようで、どんな役だったのだろう。本作では、常に控えめな感じが良く出ていて良かったし、なによりショットガンの構え方が本物っぽかった。ただショットガンも12番だとすると、反動はとんでもなく強烈で、ラストに連続100発くらい撃ちまくるが、できるかどうか。

 JK役の有村架純はピッタリで、とても自然な感じ。半分ZQNになって、感情を失ってからも印象に残る。つい最近「僕だけがいない街」(2016・日)にも出ていたが、いい雰囲気だった。見ていないが実話の映画化「映画ビリギャル」(2015・日)も良かったらしい。このかわいらしさはスゴイ。

 モールにいたヤブさんは長澤まさみ。ボクは宮部みゆき原作の「クロスファイア」(2000・日)とか、「ロボコン」(2003・日)の印象が強く、ちょうど有村架純みたいな雰囲気だったなあと。「岳-ガク-」(2010・日)あたりになると女子大生的なイメージ。本作は、役柄にも合うような落ち着いた感じで、すっかり大人になったなあと。

 怖かったインパクトで行くと、漫画家の先生、松尾のマキタスポーツと、モールのリーダー、伊浦の吉沢悠はとても良かった気がする。しっかり印象に残る。チンピラのサンゴの岡田義徳も

 あとは、まあ、日本映画に良くある有名俳優出まくりで、オール・スター状態。こういうのは雰囲気を壊すので好きではない。売れてはいないけれど、演技がうまい役者さんを、もっと積極的に使って欲しいなあ。その方が映画も集中して楽しめるし。

 原作は「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載中の花沢健吾の同名漫画。脚本は「図書館戦争」(2013・日)シリーズや、「俺物語!!」(2015・日)の野木亜紀子。「図書館戦争」もちょっと感情が伝わって来にくかったかなあ……。

 監督は「図書館戦争」でも野木亜紀子と組んでいる佐藤信介。「GANTZ」(2010・日)や「県庁の星」(2006・日)などの面白い作品を手がけているが、ボクが特に素晴らしいと思ったのは、ドニー・イェンがアクション監督をやって釈由美子をアクション・スターにした「修羅雪姫」(2001・日)。あの雰囲気が本作の殺戮シーンなどにも引き継がれているのだろう。

 本作のアクション・コーディネーターは下村勇二。「図書館戦争」や「GANTZ」などを手がけていて、「修羅雪姫」ではドニー・イェンの下でスタント・コーディネーターをやっていた。この人のアクションは素晴らしい。

 公式サイトによると、冒頭のZQNが増えてパニックになる街の様子は浜松でロケされたらしい。なかなかスゴイ撮影だ。そしてもっとスゴイのが、ショッピング・モールでの撮影。血糊が飛び散り、汚れ放題。本物のショッピング・モールは使えるはずもないし、まさかハリウッドのようにセットというのも考えられない。エンド・クレジットで韓国の名前が出ていたのおり、ひょっとしたらと思ったらやはり韓国で、閉鎖されたモールを使って撮影したらしい。そして高速でのカー・チェイスからの転倒、上下二連のショットガンを使ったガン・エフェクトも韓国撮影で、韓国のチームが担当しているんだとか。なるほどなあ。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当時は15分前くらいに開場。20代くらいの若い人が多く、老若比は5対5くらい。女性は最初1/5くらいと少なかったが、最終的には1/3くらいは行ったかもしれない。まあ、あまり女性向きではないだろう。127席はほぼ埋まったが、キャパが小さいので多くといえるかどうか。

 スクリーンはシネスコで開いており、半暗で始まった予告で気になったのは…… 四角の枠付き「ジェイソン・ボーン」は、もう一度マット・デイモンに戻るらしい。ティーザーなので内容はまったく不明。監督は第2作と第3作のポール・グリーングラス。えっ、トミー・リー・ジョーンズ? でもボクは第1作が好きだなあ。凄そうだけど。10/7公開。

 枠付き「デスノート」は別展開の物語らしい。新たに6冊のノートが地上に落とされるという。6つに事件が同時進行だうか。凄そう。10/29公開。

 映写機のマスクが左右に広がってシネスコ・フルサイズになって、古い1960年代のTOHOスコープのマークから「シン・ゴジラ」の新予告。7/29公開。IMAXとMX4D上映ありとか。

 ほかはだいたいいつもと同じ予告。


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