2016年5月14日(土)「64-ロクヨン-前編」

2016・映画「64」製作委員会・2時間01分

シネスコ・サイズ(上下マスクで上映、表記無し、デジタル?)/ドルビー・デジタル?(表記なし)

(一部、日本語字幕付き)

公式サイト
http://64-movie.jp
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昭和64年、少女誘拐殺人事件が発生するが、群馬県警は犯人を逮捕できず、未解決のまま平成14年、時効1年前を迎える。当時、担当刑事だった三上(みかみ、佐藤浩市)は、今は広報官として、事件や事故の情報を記者クラブの記者達に提供する役割を担っていた。ところが、交通事故の加害者の実名公表をめぐって大もめとなる。そんな時、警務部長の赤間(あかま、遠藤憲一)から呼び出され、警察庁長官が視察に来て、「64」事件の解決をアピールし、遺族の家に慰問に行くから事前に了解を取っておけと命じられる。それで被害者の家を訪ねると、事件の時のまま残された家は寂れ、妻に先立たれ、すっかりやつれた雨宮(あまみや、永瀬正敏)が出迎え、きっぱりと断られてしまう。「64」事件を思い出した三上は、当時一緒に捜査に当たった刑事たちのもとを訪ねてみることにする。

72点

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 これは…… ミステリーというよりドロドロした人間ドラマ。誘拐から殺人にいたる事件の謎解きは二の次で、単なるドラマを語るための設定という感じ。事件はタイトルが出る前のちょっと長めのアバンで描かれ、本編が始まるとすでに平成14年で時効1年前になっている。そしてその間に関係した人々に何が起こったか、そして今、特に警察内部で何が起こっているかが2時間をかけて描かれる。この前編では事件の進展は何もない。ミステリーとしては後編を見ないと何とも言えない。少なくとも前編はバランスが逆じゃないかなあ、と。ミステリーとして見るか、ドラマとして見るかで評価は変わってくるだろう。

 それでいて、ドロドロの人間ドラマはほんどの登場人物が偉そうで、居丈高で、上から発言で、感情を逆なでしイラつかせるキャラクターばかり。謝ったりするのは口先だけ。主人公は娘や妻に対しても、そして部下に対しても偉そう。警察の上司は部下に対して暴君のようだし。主人公が遺族の前で泣くのも、グッと来たが同意を得るための芝居のように思えて泣けなかった(泣いている人が結構いたようだが……)。そして、特に横暴に見えるのが記者クラブの記者達。最初からケンカ腰で、正義を振りかざして暴言を吐く。何様だと。嫌な空気、嫌な雰囲気満載。ドラマにどうにも感情移入しにくかった。

 原作を読んでいないが、こういう感じなのだろうか。「このミス」の第1位のはずだが。もちろん小説では面白くても、映画化すると面白くないということはあるだろう。本作はそれか。NHKでTVドラマ化され、なぜか劇場映画版はTBS製作。

 主演は佐藤浩市だが、ほんどの配役がスター・キャストで、それだけで大予算が必要だったのではないだろか。出過ぎ。散漫になる。やはり主要なキャストだけ有名俳優にて、あとはあまり知られていない人にした方が良かったと思う。

 佐藤浩市はとにかく良く映画に出ている。2015年に公開されたものだけで「アンフェアth end」(2015・日)など5本あって、ほかにTVムービーにも2本出ている。どの作品でもやっぱり佐藤浩市だ。強い個性。

 ほかに特に印象の残る出演者は、上司で権力指向のキャリア、警務部長の赤間を演じた遠藤憲一、新聞記者たちのリーダー的な存在でいつもケンカ腰の東洋新聞・秋川を演じた瑛太は、とにかく嫌らしくて感情を逆なでするうざい存在ですごかった。遠藤憲一は最近、残念なホラー「残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-」(2015・日)で見たばかり。瑛太は、見ていないが「殿、利息でござる!」(20156・日)に出ている。驚いたのは烏丸せつこ。引きこもりの元警察官の母親役だったが、まったくわからなかった。後から知って写真を見てもわからなかったほど。映画はよく出ているようだが、見ないジャンルのものばかりで……。

 原作は横山秀夫の累計発行部数130万部を越えるベストセラー「64(ロクヨン)」(文芸春秋)。この人の小説は「半落ち」(2003・日)、「出口のない海」(2006・日)、「クライマーズ・ハイ」(2008・日)、「臨場 劇場版」(2012・日)など、多くが映画化されている。

 脚本は、監督の瀬々敬久(ぜぜたかひさ)と、久松真一の2人。久松真一はTVの人のようで、映画は本作の前に、渡辺淳一原作の「きみに届く声」(2008・日)を書いているらしい。

 監督は脚本も兼ねる瀬々敬久。自主映画から助監督を経て監督になった人。ピンク系の「未亡人 初七日の悶え」(1993・日)などを撮るようになり、その後GacktとHYDEが出た近未来無国籍SFアクション「MOON CHILD」(2003・日)や、「フライング☆ラビッツ」(2008・日)、「感染列島」(2008・日)、「ストレイヤーズ・クロニクル」(2015・日)などを撮っている。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は前席指定。ムビチケカードで確保して、当日は10分前くらいに開場。ほぼ中高年で、高齢者が多い印象。男女比は最初男性が多かったが、最後には半々くらいに。まあ、こんなものだろう。最終的には157席に6.5割くらいの入り。まあ、この内容だとこんなものだろう。後編でストーリーが動きそうなので、後編はもっと入るかも。

 スクリーンはビスタの、それも1.66のヨーロッパ・ビスタくらいで開いていて、気になった予告編は…… 「超高速参勤交代 リターンズ」はどうなんだろう。柳の下に2匹目はいるか。9/10公開。

 上下マスクの「真田十勇士」は中村勘九郎主演、堤幸彦監督作品。コメディっぽかったが、「天空の蜂」(2015・日)撮った人だからなあ…… ボク的には「大帝の剣」(2006・日)みたいなら良いかも。9/22公開。

 上下マスクの「後妻業の女」は大竹しのぶのブラック・コメディで、新予告に。結構、下ネタがあるようでエロかった。はたして。オール・スター・キャストか? 8/27公開。

 1.66ビスタに上下マスクで本編へ。このシネスコ・サイズ上映はレンズを使っていないのだろうか。しかも画質が、昭和64年の話だからか、古くさい感じだったなあ。うむむ。


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