2016年5月21日(土)「ガルム・ウォーズ」

GARM WARS: THE LAST DRUID・2016(©は2014)・加/日・1時間33分(IMDbでは102分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA、表記なし)/ドルビー・デジタル(表記なし)

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)
公式サイト
http://garmwars-movie.com/jp/
(全国の劇場リストもあり)

惑星アンヌンでは、かつて神に仕えていた者たちが8つの部族に別れ、やがて覇権争いが起こり、大気も大地も荒れ果てしまった。その結果3つの部族が残り、ブリガ族は空を制し、コルンバ族は陸を制し、クムタク族は情報技術に長けていた。そして、最終決戦が始まろうとしていた。戦士達は皆クローンで、睡眠巣と呼ばれる装置のある部屋で作られていた。そんな中、生き残りのドロイド族と聖なる犬のグラを連れたクムタク族の老人ウィド(ランス・ヘンレクセン)と、コルンバ族のタンク・ドライバー、スケリグ(ケヴィン・デュランド)、ブリガ族のパイロット、カラ23(メラニー・サンピエール)が出会い、新しい未来を求めて一緒に旅をすることになる。

74点

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 押井監督の実写映画は、アニメと違って自主映画的な雰囲気が強い気がするが、「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」(2015・日)あたりからそんな雰囲気が控えめになってきて、本作でも割と普通な作りになったような気がするものの、やっぱりあちこちに押井節が満載。これが受け入れられる人は評価が高いだろうし、受け入れられない人は評価が低いのではないだろうか。IMDbでは4.8点の厳しい評価。ボクは面白かった。

 印象としては押井監督集大成なんではないかなと。まず主役が女性である点。極端な話アニメの「うる星やつら」(1981〜1986・日)シリーズもそうだろう。「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995・日)シリーズはもちろんそうだ。ゲーム的戦争物としては「Avalonアヴァロン」(2000・日)も女主人公で、雰囲気が本作と良く似ている。それは「アサルトガールズ」(2009・日)にもつながり、衣装や世界観をなす色使い、ちょっとセピア調、もよく似ている。戦争という点では「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」(2008・日)ともつながり、空軍の感じはそのままだ。レトロフューチャーな生物機械っぽいけど。また、引きの絵で鳥が飛んでいる雰囲気、そして冒頭からナレーションなどで頭で処理し切れないほどの膨大な量の情報を浴びせられるところなどは「イノセンス」(2004・日)そのまま。巨大なロボットが現れる点では、舞台の「鉄人28号」(2009・日)だ。

 見ていないが、無国籍な感じはそのまま「東京無国籍少女」(2015・日)なのかもしれない。それは「イノセンス」風の挿入歌にも現れている。ちょっと中華な雰囲気の雅楽っぽい曲で、コーラス(?)の歌詞は英語だ。

 ちょっと3D-CGの雰囲気などがゲームっぽいのは狙いかもしれない。かつて実話を基にした実写映画「パール・ハーバー」(Pearl Harbor・2001・米)について押井監督に伺った時に、「爆弾にカメラを付けて落としたようなショットは、ダメでしょ。戦争をゲームのようにしてしまう」というようなことをおっしゃっていた。それを本作で使っている。本作は実話の映画化ではない。とすれば、あえてそこを狙ったということになる。

 話の構成としては、お互い敵同士の3部族を代表するような3人が一緒に旅をすることになり、そして真実を追究しようと力を合わせるという、ちょっとハリウッド的ロード・ムービー。ところが、押井監督作品はプロットは似ていても、同じにはならない。押井節が満載。漫画原作やTVシリーズの劇場版が多い邦画界にあって、完全オリジナル作品というのは大きな意味、意義があるだろう。

 カラはメラニー・サンピエール。カナダ生まれの女優で、主にTVで活躍してきたらしい。たぶん日本で劇場公開されたものはないようだ。金髪と黒髪の違いはあるが、なんとなく「Avalonアヴァロン」の女優マウゴジャータ・フォレムニャックに似ている気がするのはボクだけか。

 クムタク族の老人ウィドはランス・ヘンレクセン。この人が出たおかげで重みが出た気がする。いい味出してるなあ。しかしもう76歳。「エイリアン2」(Aliens・1986・英/米)で注目され、大きな役をやるようになったようだが、B級も良く出ている。凶悪犯罪を超能力を使って解決に導くTVドラマ「ミレニアム」(Millennium・1996-1999・米)で主役を演じ、強烈な印象を残した。第1シーズンは面白かったなあ。最近はTVが多いようで「キャッスル 〜ミステリー作家は事件がお好き(シーズン3)」(Castle・2012・米)に出ていた。劇場作品で最後に見たのは、ビデオだったがエド・ハリスが監督した西部劇「アパルーサの決闘(未)」(Appaloosa・2008・米)。今後もガンガン出る模様。すごい。

 コルンバ族のタンク・ドライバー、スケリグはケヴィン・デュランド。この人もカナダの人で、殺し屋群像劇「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2007・英/仏/米)で良い味を出していて、「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)では憎たらしさが良く出ていた。そしてダーク・ファンタジー「レギオン」(Legion・2010・米)では見事な悪役。ほかにもメジャーな作品に出ていて、最近は、誘拐監禁事件を描いた「白い沈黙」(The Captive・2014・加)で不気味な役を演じていた。

 聖なる犬のグラはもちろんバセット・ハウンド。

 原作、脚本、監督は押井守。最近は「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」(2015・日)を手がけており、その後「東京無国籍少女」は限定公開。

 音楽はほとんどの押井作品を手がける川井憲次。銃はSFプロップだが、同じライフルでも種族でデザインが違っており、実銃がベースになっているのか、薬莢がガンガン出ていた。ウェポン・ラングラーはアンドリュー・キャンペル。カナダの人のようで、TV映画が多い感じ。劇場作品は日本で公開されていないようだ。

 公開2日目の字幕版初回、六本木の劇場は全席指定で、ムビチケカードで金曜に確保。当日は15分前くらいにはもう開いていた。観客はほぼ中高年で、やや高寄り。17〜18人いて女性は3人。最終的には124席に20〜30人くらいの入り。もっと入っても良い作品だと思うが。

 スクリーンはビスタで開いていて、気になった予告編は…… 「貞子VS伽椰子」はまあ冗談のような組み合わせだが、なんとMX4Dで上映って。もはや、なんでもありか。6/18公開。

 上下マスクの「SCOOP!」は福山雅治主演のパパラッチ映画らしい。10/1公開。

 上下マスクの「怒り」は渡辺謙主演のミステリーらしい。「悪人」系? 9/17公開。公式サイトはクッキーをオンにしないと何も表示されない。

 またまた絵だけが凄い上下マスクの「ミュータント・ニンジャ・タートルズ シャドウズ」が公開される。絵はカッコいいが、出演者がみんなバカに見える。予告ですでにくだらない感じが……どうなんだろう。8/26公開。

 上下マスクの「X-MENアポカリプス」は新予告に。一部のキャラクターが演者が代わっているのは気になるが、絵は凄い。8/11公開。

 少しだけ上下マスクの「インディペンデンス・デイ:リサージェンス」は宇宙人の技術を使った戦闘機(?)で侵略者たちに攻撃を仕掛けるようすが描かれているが、現在でもドロー技術がこんな進んでいるのだから、未来社会では戦闘機に生身の人間が乗らないのではと思ってしまうけど…… 7/9公開。

 上下マスクの「10クローバーフィールド・レーン」は、あの何も出ない、流行に乗った残念なPOV映画の続編ということになるのだろうが、今度は何かが出そう…… 6/17公開。

 上下マスクの「アウトバーン」はカー・アクションと銃撃戦でできた超B級という感じだが、ベン・キングスレーとアンソニー・ホプキンスが出ているので、ただのアクションではないような…… 6/10公開。

 スクリーンが左右に広がって本編へ。


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