2016年5月22日(日)「ヘイル、シーザー!」

HAIL, CAESAR!・2016・米/英/日・1時間46分

日本語字幕:手書き風書体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも)

(米PG-13指定)
公式サイト
http://hailcaesar.jp
(全国の劇場リストもあり)

1950年代のハリウッド。大手映画会社キャピトル・ピクチャーの製作部長エディ・マニックス(ジョシュ・ブローリン)は、禁煙の誓いを破っただけで教会に懺悔に行くような男だが、トラブル解決能力に長けていた。多くの作品を同時に抱えながら、俳優達の個人的なトラブルから、ゴシップがらみのマスコミ対策、脚本のおける宗教的な問題まで、さまざまなトラブルをひとつずつ解決していた。ある日、ラブル解決能力に目をつけたロッキード社からヘッドハンティングの声がかかる。揺れ動くマニックスだったが、そんな時、歴史大作「ヘイル、シーザー!」の主演俳優ベアード・ウィットロック(ジョージ・クルーニー)が誘拐される。

72点

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 てっきりスター誘拐事件を、他の映画に出演しているスター達が協力して解決するというドタバタコメディ・タッチのミステリーかと思ったら、大手映画スタジオの製作部長の大変な仕事と、映画人としてのプライドみたいなものを描いたものだった。金はかかっている。豪華。

 ただそのドラマ部分も弱く、ただ単に昔のスタイルの映画を真似していろいろ撮ってみたかったというだけの趣味的なもののような感じもする。わざとスカーレット・ヨハンソンのような世界的美女に「オナラが出た」とか汚いセリフを言わせたい、という監督のサディスティックな欲望を満たしただけのような気もしたが。

 ようするに大金と労力を注ぎ込んで、有名スター達を集めちょい役で使って、高いクオリティの絵を撮って、とても退屈でほとんど意味もない作品を作ったと、そんな印象。力のある成功者にしかできないお遊び、と言ったら言い過ぎだろうか。コメディの部分もたぶんネイティブの人でないと笑えないようなものばかりで、場内はほとんどシーンとしていた。笑っていたのは外国の女性1人だけ。これがもし他の監督の企画だったら、絶対に通らないだろう。

 ハリウッド華やかなりし頃が懐かしいとか、良いよねえという人は面白いかもしれない。IMDbでは6.6点の高評価。ボクはダメだった。そんな素養はない。退屈だったぁ。

 主要な登場人物は製作部長エディ・マニックスのジョシュ・ブローリン。つい最近「ボーダーライン」(Sicario・2015・米)に出ていた。そのちょっと前には実話の映画化「エベレスト3D」(Everest・2015・英/米/アイルランド)。どれもまったく雰囲気が違う。そして超大作からB級まで、いろんな作品に出ている。うまいからみんな出て欲しいのだろう。すごいなあ。

 あとは、ほとんど顔見せ、カメオ出演的な配役。誘拐される大物俳優にジョージ・クルーニー、水中レビューの女王にスカーレット・ヨハンソン、歌う水兵映画の主演俳優にチャニング・テイタム、大根役者に翻弄される映画監督にレイフ・ファインズ、双子の芸能記者にティルダ・スウィントン、もう1人の監督にクリストファー・ランバート、ベテラン女性編集者にフランシス・マクドーマンド……といった具合。みな主演をはれる人たちだ。

 時代を反映して、ほとんど全員がタバコを吸う。今からすると驚き。みんなこんなにタバコを吸ってたんだと。

 監督・脚本・編集は、ジョエル・コーエン、イーサン・コーエンの兄弟。「ミラーズ・クロッシング」(Miller's Crossing・1990・米)や「ファーゴ」(Fargo・1996・米/英)、「ノーカントリー」(No Country for Old Men・2007・米)など超絶的に素晴らしい名作も多いが、どうかなというものもある。最近は「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spies・2015・米/独/印)の脚本を担当している。本作は製作も兼ねているから実現できたのか。

 公開10日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は、アナウンスがよくわからずウロウロ。空港の搭乗案内のような「開場中」とか「上映中」とかわかる案内板がないので、とにかくわかりにくい。新しい劇場なのに。アナウンスが流れた時にいないとアウト。不親切。12〜13分前くらいに係の人に聞いたら入れるという。

 観客層は、入場の時点で10人ほどいて、ほぼ中高年。女性3人、若い人1人。ほとんどこの構成で、最終的に128席に30人ほどの入り。これは……。まあ、これでも良く入っている方かも。

 気になった予告編は…… 四角の枠付き「キング・オブ・エジプト」はどうもコメディ・タッチというか、おふざけというか、嫌な予感。キャッチ・コピーも「映画館で〈古代エジプト〉をアトラクション体験」だもんなあ。内容はないってことか。「プリンス・オブ・エジプト」というアニメ映画もあったし、映画化もされた「プリンス・オブ・ペルシャ」というゲームもあったよなあ。危険な香り。9/9公開。

 左右マスクの「帰って来たヒトラー」は現代にヒトラー本人が現れるというとんでも映画。基本コメディのようだが、次第に怖い展開になっていくらしい。6/17公開。劇場次第かな。

 ジョディ・フォスターが監督した上下マスクの「マネーモンスター」は、被害者がTVスタジオを乗っ取り陰謀を暴くというパターン。病院占拠とか、ビル占拠とか、よくあるパターンだが、監督とジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという顔合わせが良い。銃はM84か。6/10公開。

 上下マスクの「サウスポー」はボクシング映画。だめボクサーの復活と親子の物語らしい。これも良くあるパターンだが、ジェイク・ギレンホール、レイチェル・マクアダムス、フォレスト・ウィテカーという顔合わせに、監督がアントワーン・フークワ。ただ予告はとんでもなく暗い。うむむ。6/3公開。

 暗くなって、左右マスクで本編へ


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