2016年6月4日(土)「ヒメアノ〜ル」

2015・日活/ハピネット/ジェイ・ストーム・1時間33分

ビスタ・サイズ(デジタル?、表記なし)/ドルビー・デジタル(?、表記なし)

(日R15+指定)
公式サイト
http://www.himeanole-movie.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ビル清掃会社のアルバイト岡田(濱田岳)は、先輩の安藤(ムロツヨシ)から、カフェのアルバイトの女の子ユカ(佐津川愛美)との間を取り持ってくれと頼まれ一緒にカフェに行くが、そこには安藤がストーカーではないかと疑う金髪の男がいた。実はその男は岡田の高校時代の同級生、森田(森田剛)で、同じ同級生のホテルマン和草(駒木根隆介)を脅し毎月金を振り込ませてそれで生活していた。岡田がユカに安藤の気持ちを伝えると、逆に告白され、こっそり付き合うことに。それを知ったストーカーの森田は、岡田を殺すから手伝えと和草を呼び出すが、ビビった和草はフィアンセの久美子(山田真歩)に警察に行くというが、2人で森田を殺そうと提案される。

80点

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 ヘタなホラー映画なんかより、何倍も怖い映画。ゾッとする。そして、前半というか、相当長いアバンはかなり笑えるコメディと、かなりリアルでエロい恋愛もの。ラストは強烈な悲劇で、ズキンと胸の奥に響く。

 笑えて、エロくて、怖くて、最後に哀しい……。

 度を越した高校生のイジメ。ここまででなくても、大なり小なり、たぶんイジメはどの学校にもあるだろう。昨今の少年犯罪を見ていると、こんな状況もあったのかなと思わされる。アメリカでも日本でも、多分世界中どこでも。

 だから映画でも良く取り上げられていて、イジメが多くの事件の元凶になっているのではないか。最近だと「ソロモンの偽証」(2015・日)がイジメを描いていた。そのあとの強烈な「僕だけがいない街」(2016・日)も問題提起していて、それはDVというか幼児虐待だったが。「白ゆき姫殺人事件」(2014・日)や「麒麟の翼劇場版・新参者」(2012・日)もイジメが描かれていたような。

 イジメはもっと重大なことと捕らえて、ちゃんと解決しなければいけない。たぶんいじめる側の考えている程度と、いじめられる側の程度には大きな隔たりがあるのだ。本作では誰も助けてくれなかったことで、イジメの被害者は完全に壊れてしまっている。もはや常識で捕らえることが出来ない。

 脚本も良いが、監督の演出がまた素晴らしい。ウンコや失禁、オナニー、生理、コンドームなど、普通は描かないことをストレートに描き、それらが効果を上げている。そして刃物はちゃんと刺さり、シャツから血がにじんでくる。リアル! 怖過ぎ! それでいて前半のコメディ・パートと恋愛ものパートもちゃんと立派に成立している。ハッキリいってヘタなコメディやラブ・ストーリーものを越える。

 そして、森田を演じたV6のアイドル、森田剛がスゴイ。あまりに自然で、あまりに怖い。あまりに過激で子供には見せられないが、大人は見ておくべき映画だろう。酷い映画と逆で、出演者がみんな名優に見えた。

 公式サイトによると、「ヒメアノール」とは造語で、アノールはトカゲの1科で、ヒメはちいさいもののこと。つまり猛禽類の餌となる小型の爬虫類のことなんだそう。

 ごく普通っぽい「良い人」岡田は濱田岳。イメージにピッタリ。コメディ・キャラであることを強烈に印象づけられたのは「鴨川ホルモー」(2009・日)。その後「ゴールデンスランバー」(2009・日)で逆に殺し屋キャラを演じて見事だった。ちょっと気弱キャラの「予告犯」(2015・日)もはまり役。1988年生まれということなので28歳か。

 森田は森田剛。とにかくキレたチンピラみたいな演技は見事としか言いようがない。マジで怖い。演技じゃなく本当なんじゃないかと錯覚してしまうほど。ボクは演技を初めて見たが、TVをメインに映画にも意外と出ているらしい。ラストのセリフが心に染みた。他のキャラの演技も見てみたい気がした。

 ユカは佐津川愛美。これまたかわいいキャラを、大胆にヌードになって演じている。本作を見ていると女優は大変な仕事だなあと思える。2005年の「蝉しぐれ」(2005・日)から活躍しているというから、もうベテランに近い。TVにも良く出ているが、映画では最近「グラスホッパー」(2015・日)に出ていたらしいが、いまひとつ印象に残っていない。「貞子vs伽椰子」(2016・日)にも出ているらしい。本作では観客の心もつかまないと恐怖が伝わりにくくなるわけで、見事に成功している。今後もバンバン活躍して欲しい。

 うっとうしくて面倒くさい先輩安藤をコミカルに演じているのはムロツヨシ。まあ見事なコメディ・キャラ。ベテランという感じだが、意外にも映画は「サマータイムマシン・ブルース」(2005・日)が最初らしい。

 原作は、2008年から2010年にかけてヤングマガジン(講談社)に連載された、古谷実の同名漫画。公式サイトには「カルト的注目を浴びつつ、暴力的描写から映画化は不可能だと言われてきた」とあった。

 見事な脚本と監督は吉田恵輔(よしは異字体の方)。素晴らしい才能。学生時代は自主映画を制作し、プロの現場では照明からのたたき上げ。2008年に書いた小説「純喫茶磯部」を自ら映画化したんだとか。コメディ系が多いようで、基本、脚本も自分が書くと。「ばしゃ馬さんとビッグマウス」(2013・日)や漫画原作の「銀の匙 Silver Spoon」(2013・日)も撮っているが、どれも見ていない。基本がしっかりしているから、本作のようなホラー系の作品でもリアルに撮れるのだろう。ちゃんとホラーを撮れる人は大物になる。「エルム街の悪夢」(A Nightmare on Elm Street・1984・米)シリーズや「13日の金曜日」(Friday the 13th・1980・米)シリーズの面白かったものを撮った監督は、皆のちに大作を撮っている。今後の作品に期待したい。ぜひまた別ジャンルで。

 銃は警官から奪う、たぶん2インチのチーフスペシャル。ちゃんと5発で弾がなくなっている。頭への着弾など高度な特殊効果も使っている。手がけたのはBIG SHOT。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、たまったポイントで座席を確保。当日は15分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広かったが、若い人が明らかに多かった。たぶん2/3くらい。これは漫画が原作だったからだろうか。女性は1/3くらい。最終的に184席に3.5割くらいの入り。ちょっと少ない気がするが、この暴力表現だとしようがない気もする。でも大人は見ておくべき。ただ、MX4Dスクリーンの横のスクリーンだと、振動が伝わってきて不快。一瞬自身かと思ってしまうほど。気持ち悪い。

 気になった予告編は…… 四角の枠付き「デスノートLight up the NEW world」は、東出昌大、池松壮亮、菅田将暉という顔合わせ。おもしろそうだが、アニメ的な英語タイトルが気にかかる。英語タイトルって。10/29公開。

 左右マスクの「ガンツ:オー」は実写かと思ったら3D-CGアニメらしい。すごそう。ただ雰囲気がゲームのデモ画面のようで…… 10/14公開。

 枠付き「スーサイド・スクワッド」はしばらく見なくなっていたが、再び復活した感じ。とてもおもしろそう。クイーンの曲が前面に使われており、ミュージック・ビデオのよう。カッコイイ! 特にエロいおネエちゃん、いいなあ。期待が募る。9/10公開。

 枠付き「ダーク・プレイス」は、幼い時に起きた殺人事件で、つい兄を見たといってしまった妹の物語らしい。うむむ。シャーリーズ・セロンか。6/24公開。

 暗くなって、左右マスクで本編へ。


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