2016年8月6日(土)「シン・ゴジラ」

SHIN GODZLLA・2016・東宝・2時間00分

シネスコ・サイズ(デジタル? 表記なし)/ドルビー・デジタル?(表記なし)

(一部日本語字幕上映もあり)(IMAX版、3D・4D上映もあり)

公式サイト
http://www.shin-godzilla.jp/
(全国の劇場リストもあり)

ある日突然、東京湾に未確認巨大生物が現れる。政府は危機管理センターを設置して対処するが、総理(大杉漣)が上陸の可能性はないと発表した途端、上陸。しかし総理は初めてとなる自衛隊の防衛出動に同意せず、東京に大きな被害が出る。ところが巨大生物は突然動きを止め、変態すると、海へと帰ってしまう。そんなところへアメリカから上院議員の娘で日系二世の特使、カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)が送り込まれてきて、生物はアメリカで研究していて行方不明となっている日本人のマキモト教授によると、古代の神になぞらえコードネーム「ゴジラ」と名付けられたもので、放射能をエネルギー源としている可能性が高いという。海へ戻ったのは放熱のためではないかと。内閣官房副長官の矢口(長谷川博巳)をリーダーとする対策チームは、採取された細胞を分析し、凝血剤を経口投与して殺処分する作戦を立てる、そんなとき、ゴジラは再び川崎から上陸。サイズが2倍くらいに大きくなっている。そしてついに総理も自衛隊の出動を決心するが……。

72点

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 うーむ、これは…… 。ゴジラ映画というより、巨大未確認生物騒動記という感じ。しかも「シン」に「新しい視点」という意味を込めたようで、いままでのように事件に巻き込まれた人物の側から描いたのではなく、自然災害的に捉え、対処しようとする為政者側から描いたものだった…… だから、ほとんどが会議、会議、会議…… 登場人物もほとんど政治家ばかり! これって、まるで「天空の蜂」(2015・日)のよう。印象としては、全体の8割くらいが会議、ゴジラが暴れるのは2割くらい。これで3D化したり、4D化して意味があるんだろうか。飛びだす会議室?

 しかし!「事件は会議室で起こってるんじゃない! 現場で起こっているんだ!!」。怪獣映画なのに怪獣を見せないで、会議ばっかりだらだらと延々見せられて「ゴジラだっ」って言われてもなあ。しかも、リアルさのない政治映画という感じもあって、最近都知事選で、多くの政治的駆け引きや、あてこすりや、小学生みたいな嫌がらせ、対立やらを見せられて、嫌気が差していただけに、お金を払って映画でまで同じもの(だいぶ嘘っぽいが)を見せられたくない気もした。

 たしかに着ぐるみじゃない3D-CGによるゴジラは合成も素晴らしく、一部を除いて生物ッぽく、実在感もあって見事だった。特殊効果はすごい。世界レベル。しかし、どうしたことか、画質が全体にビデオっぽく、いかにも邦画らしい浅い色。力強さがなく、中性的で、感情がこもりにくい。解像度もあまり高くない感じ。うむむ……。怪獣映画にこの画質は向いていないだろう。

 主人公らしい長谷川博巳演じる内閣官房副長官の矢口のキャラもあまりピンと来ないしウソ臭いが、さらに輪をかけて酷いのが石原さとみ演じる米国特使のカヨコ・パタースン。石原さとみは「巨人」に続けて貧乏くじを引いたというか、爆弾を踏んでしまったというか。お気の毒としか言いようがない。過剰なセリフを早口でいうのは、押井守監督の演出の真似だろうか。そしてキャストが多すぎて、クレジットは50音順って。名前が(仮)だったり、演説途中で(中略)とかって字幕を出す不要な演出は、リアルさを損なうだけだのような……。

 キャストはとにかく多い。公式サイトでは単なる一覧表になっているほど。端役でも有名な人を使って豪華だが、これだと散漫になりやすい。本作はその罠にはまっている気がする。主要キャストは1人で、内閣官房副長官、矢口を演じた長谷川博巳。TVの「家政婦のミタ」(2011・日)あたりから注目されるようになり、良い人キャラだが、「MOZU」(2014・日)のエキセントリックな殺し屋役も意外と良かった。しかし「進撃の巨人」(2015・日)シリーズは大変残念で同じ人とは思えないほど。本作もかなり残念。事件の渦中にいながら、まるで他人事のように淡々としたキャラクター。ヘタにしか見えない。

 同じく爆弾を踏んだのが石原さとみ。「進撃の巨人」よりはましだが、酷いキャラ。イーオン(AEON)で学んだのか、英語は悪くないのだが、どうにも引っかかる感じで、印象は良くない。TVの「霊能力者 小田霧響子の嘘」(2010・日)なんか抜群に良かったのに。

 脚本はTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(1995〜1996・日)の脚本・監督の庵野秀明。うーむ、この脚本で良いのか。そういえば「ヤシマ作戦」っぽい場面、曲があったなあ。

 監督は3人いて、総監督が脚本も手がけた庵野秀明、監督・特技監督が樋口真嗣、准監督・特技統括が尾上克郎。いったいどういう役割分担になっているのだろうか。准監督って?樋口真嗣監督は「ローレライ」(2005・日)、「日本沈没」(2006・日)、びっくりの「隠し砦の三悪人THE LAST PRINCESS」(2008・日)、「のぼうの城」(2011・日)、と来てとどめの「進撃の巨人」(2015・日)前後編。尾上克郎准監督は「ローレライ」「日本沈没」で特撮監督を務め、「隠し砦の三悪人THE LAST PRINCESS」で第2班監督、「のぼうの城」と「進撃の巨人」で再び特撮監督を務めた人。

 キャッチ・コピーも良くわからなかった。現実対虚構。どういう意味だろう。しかも現実にニッポンのルビ、虚構にゴジラのルビ。ますますわからない。

 銃は、AH-1Sに搭載された20mmバルカン砲、AH64アパッチの30mmチェイン・ガン、自衛隊は89式小銃。戦車や自走砲の大砲に反動があったのは良かった。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保して、当日は15分前くらいに開場。プレミアム席もあるTCX仕様、ATMOS対応の大きなスクリーンでの上映。観客層は若い人から中高年まで幅広かったが、中心は若い人たち。しかもほぼ男性。女性は1割ほど。最終的には499席に4.5割くらいの入り。朝一にしてはなかなか。さすが話題作。でもこれから伸びるんだろうか。プレミアム席には9人ほどが座っていた。

 気になった予告編は…… 四角の枠付き「何者」は就活を描いた青春ものらしい。主演は佐藤健。10/15公開。

 四角の枠付き「SCOOP!」は新予告に。ようやく内容のわかるものに。パパラッチと弟子、福山雅治と二階堂ふみの顔合わせ。意外と面白いのかも。10/1公開。

 左右マスクの「ジャングル・ブック」も新予告。日本語の歌で、ミュージカルっぼいまとめ。8/11公開。

 ロビーではトム・クルーズの「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)の続編「ジャック・リーチャー」の予告をやっていた。カッコイイ! トム・クルーズは銃の撃ち方が巧いなあ。1作目を日本で適当なタイトルを付けるから、変なことになっているが、間違いなく続編。なぜ場内の予告で流さないのだろう。11/11公開。

 暗くなって、TCXのデモのあと本編へ。


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