2016年8月14日(日)「ジャングル・ブック」

THE JUNGLE BOOK・2016・英/米・1時間46分

日本語字幕:手描き風書体下、古田由紀子/ビスタ・サイズ(1.85、デジタル、Arri ALEXA)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、DATASATも)

(英PG指定、米PG指定)(日本語吹き替え版、IMAX版、3D上映、4D上映もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movie/junglebook.html
(全国の劇場リストもあり)

インド。ジャングルに入り込んだ父と子がトラのシア・カーン(声:イドリス・エルバ)に襲われる。父は子をかばって命を落とすが、松明で抵抗しシア・カーンに酷いやけどを負わせる。生き残った子は黒ヒョウのバギーラ(声:ベン・キングスレー)に拾われ、オオカミのアキーラ(声:ジャンカルロ・エスポジート)率いる一族に託される。その子はモーグリ(ニール・セティ)と名付けられ、母のラクシャ(声:ルピタ・ニョンゴ)がオオカミとして育てた。しばらくして、乾期となって飲み水の確保も難しくなったある日、みんなの水飲み場でモーグルとシア・カーンが出会ってしまう。復讐に燃えるシア・カーンはオオカミにモーグリを引き渡すように言うが、乾期には戦ってはいけないというジャングル・ルールによって、ことは終結する。モーグルは自ら出て行くことを申し出、アキーラは「人間の村に行けば守ってもらえる」と教え、送り出す。バギーラが人間の村まで連れて行くことになるが……。

82点

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 主人公のモーグリ以外、ジャングルの環境までもがすべてCGという驚異の映画。しかし、ストーリーは典型的なハリウッドの冒険談パターン。優しい母親、守り導いてくれる慈父、復讐で凝り固まった暴力的な異常者、誘惑してくる色っぽい悪女、口八丁のいい加減な詐欺師、そして勢力拡大を狙うマフィアのボス…… これらがすべて動物で演じられているわけだ。そこにほとんど違和感はなく、スッと受け入れられるところが、この映画のすごいところ。普通は嘘臭くて、無理なはずなのだが、そこはディズニー・マジックというやつなのだろう。

 CGはリアルで、実写としか思えないほど。葉は風にそよぎ、水面のせせらぎやしぶきがまぶしく光る。水の透明感と、濡れた毛の感じ、滴の輝きなど、本当にリアル。それなのに、動物が言葉をしゃべって、しかも歌っても、違和感がないなんて。よく感情が伝わってきて、感動する。あやうく涙が出そうになった。

 逆に言うと、動物達がコテコテの内容を演じるから、許せるのかもしれない。人間がすべて演じたら、ありふれすぎたストーリー展開に、作り過ぎというか出来過ぎと感じるのかも。しかも、キャラクターもコテコテ。これが本当の人間だったらやりすぎというくらい。でも動物だからやり過ぎに感じない。むしろ魅力的。いい味を出している。まあトラの悪いこと。オオカミの優しいこと。クマの愉快なこと。オランウータンの狡いこと。

 ただ、ジャングルってオオカミがいて、トラがいて、ゾウもいて、クマもいるの? そうか、舞台はインドのジャングルなんだ…… インドゾウだった? 合っているのだろうか。まあ、合っていなくてもファンタジーだからいいんだけど。

 唯一の出演者モーグリはニール・セティ。なんと劇場長編映画は初めて。インドとアメリカのハーフだそうで、ニューヨーク生まれ。全世界で行われたオーディションで選ばれたらしい。

 声の出演では、トラのシア・カーンにイドリス・エルバ。傑作アニメ「ズートピア」(Zootopia・2016・米)や「ファインディング・ドリー」(Finding Dory・2016・米)でも声をあてている。実写では最近「ザ・ガンマン」(The Gunman・2015・米/西)に出ていた。黒ヒョウのバギーラに「アウトバーン」(Collide・2016・英/独)のベン・キングスレー、クマのバルーに「ミケランジェロ・プロジェクト」(The Monuments Men・2014・米/独)のビル・マーレー、オオカミの母ラクシャに「それでも夜は明ける」(12 Years a Slave・2013・米/英)のルピタ・ニョンゴ、エロいヘビのカーに「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(Captain America: Civil War・2016・米/独)のスカーレット・ヨハンソン、サルのボスのキング・ルーイに「ミッドナイト・ガイズ」(Stand Up Guys・2012・米)のクリストファー・ウォーケン、オオカミのボス、アキーラに「マネーモンスター」(Money Monster・2016・米)のジャンカルロ・エスポジート、といった具合で超豪華。

 原作はもちろん、インド生まれのイギリス人作家ルドヤード・キプリングの同名古典文学。脚本はジャスティン・マークス。日本のゲームの映画化で残念だった「ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー」(Street Fighter: The Legend of Chun-Li・2009・加/印/米/日)を書いた人だ。あれよりははるかに良い出来に見える。

 監督は製作も兼ねるジョン・ファヴロー。役者でもあり、コメディ系の作品に出ていた印象が強い。メジャーなところではSFパニック「ディープ・インパクト」(Deep Impact・1998・米)や、キアヌ・リーヴスの傑作スポ根「リプレイスメント」(The Replacements・2000・米)、ベン・アフレックのちょっと残念なコミック・ヒーローもの「デアデビル」(Daredevil・2003・米)など。最近では「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(The Wolf of Wall Street・2013・米)にも出ていた。監督作品だと、SFファンタジー・アドベンシャーの続編「ザスーラ」(Zathura: A Space Adventure・2005・米)、有名なところでは「アイアンマン」(Iron Man・2008・米)シリーズ、SFウエスタン「カウボーイ&エイリアン」(Cowboys & Aliens・2011・米)など。

 公開4日目の初回、新宿の劇場は全席指定。金曜にムビチケカードで確保して、当日は15分前くらいに開場。やっぱり3Dが優先のようで、2D版は小さなスクリーンでの上映。観客層は若い人から中高年まで幅広く、最初、20人くらいいて女性は3〜4人。最終的には女性が増えて1/3くらいまでいっただろうか。117席に4割くらいの入り。これはちょっと少ないなあ。みんな3D狙いか。

 気になった予告編は…… 左右マスクの「四月は君の嘘」は、これまでにもたくさん作られている漫画原作の青い春ラブ・ストーリー。アニメでもおかしくない感じ。9/10公開。

 四角の枠付き「ローグ・ワン スター・ウォーズ」は、音楽だけでも盛り上がる感じ。しかも大冒険の雰囲気がプンプン。フォレスト・ウィティカーにドニー・イェン。AT-AT、えっ、ダース・ベイダー? 12/16公開。

 枠付きの「キング・オブ・エジプト」は日本語吹き替え版での予告。どうも内容が明らかになるに従って、残念な感じがどんどんしてきた。大丈夫か? 主人公がオバカそうに見えるんだけど。9/9公開。

 同じくオバカそうなのが、枠付きの「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:シャドウ」特殊効果はすごいけど、くだらなそうな。マイケル・ベイだし。8/26公開。

 暗くなって、映写機の左右マスクで、古い感じのお城からディズニーのお城になって、本編へ。


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