2016年9月25日(日)「ハドソン川の奇跡」

SULLY・2016・米・1時間36分

日本語字幕:手描き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(2.39、IMAXは1.90、デジタル、Arri Alexa 65、Arri Alexa IMAX)/ドルビー・デジタル(IMDbではドルビーATMOS)

(米PG-13指定)(IMAX上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/hudson-kiseki/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2009年1月15日、ニューヨークのラガーディア空港を飛び立ちシャーロットへ向かったUSエアウェイズ1549便は、離陸直後、鳥の群れに突っ込み両エンジンが停止する。管制塔からはラガーディア空港にもどるように指示が出たが、サレンバーガー機長(トム・ハンクス)は不可能と判断、進行方向にあるタテターボロ空港も無理と判断し、エンジンの再起動が出来ないことから、ハドソン川に不時着させることを選ぶ。着水と同時に水上バスのフェリーや沿岸警備隊、NYPD、FDNYが駆けつけ、乗客、乗務員全員を救出するが、直後から機長の判断に疑問の声が上がり、国家運輸安全委員会(NTSB)の公聴会が開かれることになる。

86点

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 感動した。イーストウッドは凄い。名監督だと思う。トム・ハンクスもぴたりとハマっている。副機長のアーロン・エッカートも素晴らしく、2人の関係も素晴らしい。そして機長の奥さんのローラ・リニーも電話でしか登場しないのに存在感があったし、夫との関係もリアルでありながら良い感じなのだ。素晴らしい。すぐに助けに向かうフェリーや沿岸警備隊、NYPD、FDNYも本当に良い。冷静に大きな声で「ヘッドダウン」と指示を出し続けるキャビン・アテンダントたちも実に立派。しかもこれはドラマではなく、記憶に新しい実話なのだ。

 ラスト、サリー機長が言う「その時出来ることを、乗客も、乗務員も、レスキューの人々も、全員が、全力でやって、全員が生還できた」と。あやうく涙が出そうになった。実にハラハラドキドキで、真相を追うミステリーのような部分もあり、そしてヒーローがヒーローだったという物語。エンド・ロールでは、引き上げられた機体が展示される博物館でのパーティーらしき実際の映像で終わる。みんな絆でつながっているとサリーがスピーチ。すごいなあ。日本にも、こういうパイロットの人はいるだろうか。つい、自分をさておき、そんなことを考えてしまった。自分も後悔のないよう、いつでも全力を尽くさないとなあ。

 予告から、ちょっとデンゼル・ワシントンの「フライト」(Flight・2012・米)を連想してしまったのだが、まったくそんなことはなかった。似たような状況に追い込まれる部分はあるけれど、製作者の立ち位置(視点)が違うからなのか、ちっとも重苦しい感じはせず、そんなに嫌な思いもしない。ここで悩まされるのは、機長と副機長、そしてヒーローを疑わなければならない国家運輸安全委員会(事故調査委員会、NTSB)のメンバーたちだ。

 飛行機のシーンはとてもリアルで、アメリカの国内線に乗ったような気になる。ベテランのキャビン・アテンダントたちがいて、実にこんな感じ。だから、たぶん事故になっても、彼らスタッフはこのように冷静に導いてくれるのではないかと思える。回りにいる船がすぐに現場に救助に向かう。飛行機が沈んでしまう前に、全員を救助してくれる。

 サレンバーガー機長はトム・ハンクス。つい最近「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spies・2015・米/独/印)に出ていたが、2000年代に入ってからは製作が増えて、出演作はいまひとつの感じ。出演作で良かったと感じたのは「ターミナル」(The Terminal・2004・米)くらいだろうか。「キャプテン・フィリップス」(Captain Phillips・2013・米)は悪くないけれど、実話だし楽しい話ではない。楽しめる作品というと「トイ・ストーリー3」(Toy Story 3・2010・米)のウッディの声かなあ。トム・ハンクスのキャラって楽しいイメージがあるんだけど。

 副操縦士ジェフ・スカイルズはアーロン・エッカート。ちょっとB級のイメージがある人で、戦う男のイメージもある。「世界侵略:ロサンゼルス決戦」(Battle Los Angeles・2011・米)や「陰謀のスプレマシー」(Erased・2012・米/加ほか)、「エンド・オブ・ホワイトハウス」(Olympus Has Fallen・2013・米)などがそれ。つい最近は続編の「エンド・オブ・キングダム」(London Has Falle・2016・英/米/ブルガリア)に出ていた。本作ではとても正直で良い人。ぴったりはまっている。

 サリーの妻ローリーはローラ・リニー。つい最近、残念な「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影〈シャドウズ〉」(Teenage Mutant Ninja Turtles: Out of the Shadows・2013・米/香ほか)にNYPDの局長役で出ていた。印象に残ったのは「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」(Mr. Holmes・2015・英/米)の方。リアリティがあった。

 原作は、機長だったチェズレイ・“サリー”・サレンバーガーと、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙のコラムニスト、ジェフリー・ザスロー共著の"Highest Duty"。脚本にまとめたのはトッド・コマーニキ。日本で劇場公開されたものだと、ハル・ベリーのサスペンス「パーフェクト・ストレンジャー」(Perfect Stranger・2007・米)を書いている。

 監督は製作も兼ねる名匠、クリント・イーストウッド。いろいろ撮っているが、最近で良かったのはやっぱり「グラン・トリノ」(Gran Torino・2008・米/独)かなあ。本作の前にはイーストウッド史上最大のヒット作と言われる「アメリカン・スナイパー」(American Sniper・2014・米)を撮っている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜ムビチケカードで確保。当日は20分前に開場。やはりほぼ中高年で、若い人は少々。これまた、やはり、女性のほうが若い感じ。男女比は6対4で男性が多かった。最終的には184席の9割ほどが埋まった。見た人のクチコミでもっと増えるかも。

 気になった予告編は…… 四角の枠付き「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」は、今どきのタイトル。主演は福士蒼汰。原作は100万部突破の恋愛小説らしい。12/17公開。

 枠付き「マダム・フローレンス」は実話の映画化。音痴なのに夫の金の力でカーネギー・ホールで歌ったという女性の話らしいが、ティーザーなのでよくわからない。主演は名優メリル・ストリープ、その夫にヒュー・グラントという顔合わせ。いつからか良くわからず、調べたら12/1公開。

 やっと暗くなって、映写機のマスクが左右に広がり、本編へ。


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