2016年10月9日(日)「君の名は。」

2016・東宝/コミックス・ウェーブ・フィルム/KADOKAWA/ジェイアール東日本企画/アミューズ/voque ting/ローソンHMVエンタテイメント・1時間47分

ビスタ・サイズ(デジタル、1.85)/ドルビー・デジタル(表記なし)


公式サイト
http://www.kiminona.com/index.html
(全国の劇場リストもあり)

ティアマト彗星が1000年ぶりに地球に接近する。最接近まで1カ月となった日、東京の男子高校生、立花瀧(たちばなたき、声:神木隆之介)は田舎の女子高校生になった夢を見る。一方、飛騨の田舎町に暮らす宮水三葉(みやみずみつは、声:上白石萌音)は、希望通り東京の男子高校生になった夢を見る。やがて二人は、抜け落ちている記憶があることに気付き、週に2〜3回、お互いが入れ替わっていることを知る。トラブルを避けるため、ルールを作り、メモを残してコミュニケーションを取って行くのだが……。

87点

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 アニメ作品は、公開当初はいわゆるお宅系の人がドッと行くので、ちょっと苦手で敬遠していたのだけれど、さすがに公開から1カ月以上も経てば、そうではないだろうと見に行った。見て良かった。うわさ通りの良い作品。無駄な暴力も、怒りもなく、穏やかで優しい作品だった。それでいて、アニメにふさわしいスケールの大きな、ハラハラドキドキのファンタジー作品。見事というしかない。ちょっと涙が出そうに。

 キャラクターがみんなまっすぐで、素直。好感が持てる。だから感情移入しやすく、気持ちも良く伝わってくる。こんなに良い人たちだったら幸せになって欲しい。それに値する。ちょっと宮崎アニメに通じる感じもあった。

 音楽も素晴らしく、ここぞというタイミングで流れ、心にしみ込んでくる。いいなあ。

 ただ、あえて言えば、ラストはちょっと長くてもたつく感じだったかなと。間違いなく感動的で良いんだけど。

 メイン・ビジュアルは劇中出てこないのだが、ラストでその謎が解ける。映画を見た後、このメイン・ビジュアルを見ると心に染みてくる。世の中、奇跡は起こる。そう信じたい。そして、高校生のさわやかなラブ・ストーリー。中高年にとっては、こんな気持ちだったのかなあと懐かしく思い出せるかも。

 とにかく絵が美しく、印象的だが、実写で見たい気もした。ただし、色の浅い日本的な画質ではなく、絵画的に実写を撮れる監督の撮影監督の組み合わせでなければならないが。

 あえて付け足すと、若い男女が入れ替わるという話は大林宣彦監督が「転校生」(1982・日)でやっている。彗星で奇跡が起きる話は「アデライン、100年目の恋」(The Age of Adeline・2015・米)でも描かれているし、宮崎アニメの「ハウルの動く城」(2004・日)もハウルとカルシファーが彗星(というか流れ星)絡みだった。離れた男女がコミュニケーションを取る話だと韓国の「イルマーレ」(Il Mare・2001・韓)もあり、キアヌー・リーヴスとサンドラ・ブロックでハリウッド・リメイクもされている。あえて書けば、だ。

 声の出演は…… 立花瀧は神木隆之介。5歳くらいから子役として活躍しており、ガンガン映画に出ている。最近見たのは「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」(2016・日)。過去にもアニメの声はやっていて、「千と千尋の神隠し」(2001・日)、「ハウルの動く城」(2004・日)や「サマーウォーズ」(2009・日)などがある。さすが、うまい。ボク的に好きなのは行定勲監督の「遠くの空に消えた」(2007・日)かなあ。

 ヒロインの宮水三葉は上白石萌音。最近歌手デビューもしたらしい。周防正行監督の「舞妓はレディ」(2014・日)に主演していた人。最近は「ちはやふる」(2016・日)に出ていたらしいが、どちらも見ていない。ぴったりの声のイメージという気がしたが、見て感動したあとだからか。

 立花のバイト先の美人の先輩、奥寺ミキは長澤まさみ。東宝シンデレラだ。ボクの記憶に残っているのは「ロボコン」(2003・日)かなあ。つい最近「アイアムアヒーロー」(2015・日)に出ていたが、公開が始まったばかりの「グッドモーニングショー」(2016・)や「金メダル男」(2016・日)にも出ているらしい。声だけで美人な感じがしたし、違和感はなかった。

 三葉のおばあちゃん一葉は市原悦子。あのTVアニメ「まんが日本昔ばなし」(1975〜1994・日)のナレーションの感じはなく、これまたぴったりの声。映画では「あん」(2015・日)というのに出ているらしい。

 かわいくておかしい妹の四葉は谷花音。かわいい子役の代表格。さすがに最近は大人っぽい顔になってきた。TVやCMに良く出ている。声イメージもピッタリだった。

 監督・脚本・絵コンテは新海誠。デビュー作の短編から多くの賞を受賞する実力派。アニメ、特に日本のはあまり見ないのでわからないが、「言の葉の庭」(2013・日)がこれまでの最大のヒット作だったらしい。本作の世界的な大ヒットで、ますます注目され、今後が楽しみ。ただ演出は別にいて、居村健治が担当。いまいち仕事の分担がわからないが。

 音楽はRADWINPS(ラッドウィンプス)。「前前前世」「スパークル」「夢灯籠」「なんでもないや」の4曲が使われているらしい。いまさらだが、どれも素晴らしかった。ラジオなどでも良く掛かっている。このアルバムは買いかもしれない。

 8/26公開だったからすでに1カ月半くらい。新宿の劇場は全席指定で、貯まったポイントで座席を確保。当日初回は10分前くらいに開場。観客層は、下は小学生の低学年くらいから、上は中高年まで幅広い。大ヒットする映画は皆そうだ。ただ若い女性が多い気はした。男女比は4.5対5.5くらいで、やや女性が多かった感じ。最終的に一番大きなスクリーンの580席の9割くらいが埋まった。1カ月半くらいでこれは凄い。映画を見る人が少なくなったとは言え、いい作品を作れば人はちゃんと見に来るのだ。

 気になった予告編は…… 「いきなり先生になったボクが彼女に恋をした」「PとJK」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」「何者」などの予告はこれまでの繰り返し。しかも驚くべきことに、すべて邦画。しかもなんだか皆似たような傾向が……。


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