2016年10月22日(土)「ジェーン」

JANE GOT A GUN・2016・米・1時間38分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(ビスタに上下マスク上映、with Panavision)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://jane-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

南北戦争が終わって6年後の1871年、ニューメキシコの小さな町で幼い娘と母のジェーン(ナタリー・ポートマン)が家で待っていると、夫のハム(ノア・エメリッヒ)が撃たれて瀕死の状態で帰ってくる。町を牛耳るビショップ(ユアン・マクレガー)の一味にやられたという。そしてやつらが追ってくるという。ジェーンはすぐにハムの治療をしてベッドに寝かせ、銃を取り出すとガンベルトを巻いて身に付け、娘を友人に預けると、町の外れに棲んでいるダン(ジョエル・エルガートン)の元を訪れ、夫が撃たれて追っ手が来るので、ガン・スリンガーとして雇いたいと申し出る。実は、ダンはかつてのジェーンのフィアンセで、ダンが南北戦争で出征し帰ってこなかったため、ビショップに娼婦にされそうになったところをハムに救ってもらって結婚していたのだった。ダンは戦争で捕虜になり、戦争が終わってから解放され、国中いろいろ探し回ってようやくジェーン見つけたら、すでに結婚して娘までいたため、せめてもとその町に棲んでいた。ダンはいったんは申し出を断るが……。

73点

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 西部劇で「ジェーン」といえば、てっきり平原の女王、カラミティ・ジェーンかと思ったのだが、まったく違った。名前が同じだけで、同時代に生きた同じ名前を持った女性のオリジナルのストーリーだった。多少イメージはしたのかもしれないが。

 話は悲惨なもので、こういう戦争と開拓の時代だから、よくあったことなのかもしれないが、辛い話だ。感動的で、演技の巧さもあって、ちょっとウルっと来た。1人の女性に2人の夫と2人の娘。でもラストには未来と希望がある。画調はセピア調。夕日がきれいだ。これもパターンだが。

 ただし、物語としては良くあるパターン。アメリカの西部開拓時代を舞台に持ってきたことで、当時は女性が自ら銃をとって戦うことが少なかったから、ちょっと目新しさは出たかも。とはいえ、西部劇でもこういう話はあった気がするなあ。なにしろ、ドラマのパターンは、西部劇でほとんど出尽くしたといわれているほどだから。

 ラストの戦いは2対12くらいで戦うので、1人ずつ減らしていって、ボスと対決するのかと思ったら、そんな手間はかけなかった。これは期待したんだけどなあ。ほぼ1発で片づけて、ボスと対決とは…… だから98分なんだ。120分で西部劇らしい決闘をもっと見たかったなあ。でもナタリー・ポートマンがプロデューサーだったか。うむむ。セル・リードをやっとっていればなあ。

 銃も、パーカッション・タイプの古い形式のものが、途中でSAAなどに化けていたりした。リロードのシーンはほとんどなかったし。セル・リードをやっとっていればなあ。

 ジェーンはナタリー・ポートマン。「ブラック・スワン」(Black Swan・2010・米)でアカデミー賞の主演女優賞を獲得した。最近あまり見かけない感じだったが、ボクが最後に見たのは「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」(Thor: The Dark World・2013・米)だったか。使っていた銃は、どでかいコルト・ウォーカー1847。「勇気ある追跡」(True Grit・1969・米)で(とリメイクでも)少女が使っていた銃。ただ最初にカートリッジをとり出してくるので、パーカッション式からカートリッジ式に改造したカートリッジ・コンバージョンという設定だったのもしれない。本当に存在したかどうかはわからないが、ガンスミスに作らせたとも考えられるので、なかったとは言い切れない。いずれにしてもジェーンはうまく当てられず、狩猟は得意よとヘンリー1860ライフルを取る。ただ使うのはウォーカーが多かった。

 かつての婚約者ダンはジョエル・エルガートン。これから公開される「ザ・ギフト」(The Gift・2015・米/豪/中)を製作・監督・脚本、出演した人だ。本作では脚本も担当しているらしい。ジョニー・デップの「ブラック・スキャンダル」(Black Mass・2015・米/英)にも悪徳FBIで出ていた。銃はコルト1860アーミーのカートリッジ・コンバージョン。オープン・トップのフレームなのに、エジェクターがついている。ヘンリー・ライフルも良く使っていたが、クライマックスの決闘で、連射しているにも関わらずカットが変わると、マガジンの弾送りのレバーの位置が変わっていなかったけど。

 悪党のボス、ビショップは、ユアン・マクレガー。一瞬誰だかわからないくらいイメージがダーク。さすが。最近見たのはものすごく残念だった「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」(Mortdecai・2015・英/米)。銃はシャイローの戦い(南北戦争中の大きな戦いの1つ)で南軍の将軍が使っていたと自分で説明するレミントン1858アーミー。フレームが金色っぽく、アイボリー・グリップが付いていた。imfdbによると南軍を表す 「CS」のメダリオンがグリップに入っていたらしい。

 最初にジェーンを襲う男はコルト1860アーミーとスタール1858。頭を撃たれて血が飛ぶシーンは衝撃的だった。恐ろしい。

 字幕で、ウォーカーと言っているのをコルトと、ガンスリンガーと言っているのをガンマンとしていたが、文字数の制限と、観客へのわかりやすさを優先したのだろう。ちなみに、ガンマンは悪党の銃使いを指す言葉で、ガンファイターが正義の銃使い、ガンスリンガーはどちらにも使うようだ、マニアはこういうところが気になる。面倒な話だが。

 何発か撃たれても、すぐに死なないのはリアルな感じがした。黒色火薬の時代はあまり威力が強くなかったらしいから。口径が大きくて初速が低いから、銃創もほとんど貫通していない。

 アーマラーはフリッツ・バックリーとかいう人。小道具係で、武器係もやる人らしい。もう1人スコット・ラスムッセンとかいう人もクレジットされていた。TVの西部劇ミニ・シリーズ「Gunslingers」(2014・米)で武器係をやっていたらしい。うーむ、やっぱりセル・リードにやって欲しかったなあ。

 脚本はジョエル・エルガートンのほかに2人。ブライアン・ダッフィールドとアンソニー・タンバキス。ブライアン・ダッフィールドは原案も手がけているが、残念なSF「ダイバージェントNEO」(Insurgent・2015・米)を書いた人だ。アンソニー・タンバキスは劇場映画ではジョエル・エルガートン主演で高い評価を得た「ウォーリアー」(Warrior・2011・米)を書いているが、日本劇場未公開。2も何本か新作が控えている。

 監督はギャヴィン・オコナー。ほとんどの作品が日本劇場未公開だが、同じく未公開のジョエル・エルガートン主演「ウォーリアー」を監督している。これが評価されて本作に繋がったのだろう。来年1月に公開が予定されている「ザ・コンサルタント」(The Accountant・2016・米)を監督しているらしい。ちょっと楽しみ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに開場。やはり西部劇ということで中高年、それも高齢者が多い。女性は10人いて2人くらい。最終的には157席の3割くらいしか埋まらなかった。これはちょっと辛いかも。ナタリー・ポートマンでも、日本だと西部劇は難しいか。関係者が多くて、入れ替わり立ち替わり……。

 スクリーンはビスタで開いており、気になった予告編は…… 新しい予告で、ついに上下マスクの「マグニフィセント・セブン」が登場。黒澤監督の原作に敬意を払ったとは言え、日本人が出ておらず、立派な役者さんだがイ・ビョンホンが出ているというのがどうにも残念。アントワーン・フークア監督なので期待できるかも。ガトリング方も出てくるのかあ。1/27公開。公式サイトはまだできていない模様。

 「胸騒ぎのシチリア」は悪役が多いティルダ・ウィンストンのラブ・ストーリーか? うーん、なんとも……タイトルもなあ 11/19公開。

 「マギーズ・プラン-幸せのあとしまつ-」はイーサン・ホークとジュリアン・ムーアが出ているコメディらしい。これも、なんだかなあ。1/21公開。

 ビスタのまま、映写機の上下マスクでシネスコ上映。これって……。


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