2016年10月29日(土)「インフェルノ」

INFERNO・2016・ハンガリー/米・2時間01分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/字幕監修:越前敏弥/ビスタ・サイズ(シネスコに左右マスク上映、デジタル、with ARRI)/ドルビーATMOS(IMDbではAuro11.1も)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、IMAX版、4D上映もあり)

公式サイト
http://www.inferno-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ハーバード大学宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)は、頭に負傷して、気がつくとフィレンツェの病院にいた。担当医師のシエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)はあなたは撃たれたという。そこへ謎の女性警官(アナ・ウラル)が現れ、銃撃してくる。からくも脱出したラングドンとシエナは、シエナのアパートへ行き、アメリカ領事館に連絡し助けを待つ間に、ラングドンのジャケットのポケットに入れられていたバイオ・チューブをいじっていると、ボティッチェリが描いたダンテの「地獄篇〈インフェルノ〉」の絵が映写され、オリジナルとは異なる文字が付け加えられていることに気付く。それは3日前に死んだ大富豪の生化学者バートランド・ゾブリスト(ベン・フォスター)が残した謎のメッセージだった。彼は人類の滅亡を避けるためには、人口を大幅に減らすしかないという結論に至り、それを実行しようとしていたのだ。

73点

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 ジェットコースター的に、謎また謎で、冒険に継ぐ冒険。息つくヒマもないほどで、怒濤の巻き込まれ展開。ヒッチコック的な部分も少し感じられた。しかし、展開が速すぎて、情報量も多いため、朝一の寝ぼけ頭で見たら、うまく付いて行けなかった。ちょっとおいてけぼり状態。面白かったのだが、頭の回転が速い人なら問題ないとしても、ボクはダメだった。寝不足だったし。

 それに、展開としては第1作と似ているものの、第1作が絵画などに隠された古い謎を読み解いて行ったが、本作はそれもありつつ、メインは現代人が仕掛けたパズル的な謎。しかも第1作も瀕死の重傷を負った博士が、わざわざ全裸になって謎(ヒント)を残すという不自然なものだったが、本作も、あえて難解な謎を残すというあたり、謎解きのための謎解きで、作為を感じざるを得ない。すると、やっぱりトータルでは第1作のほうが面白かったかなと。

 画はきれいで、まるで007映画のように世界(主にヨーロッパだが)を股にかけての大活躍はとても映画的。撃ちあいもあって、ちょっと恋愛的な部分もにおわせて、世界終末的な映像などのコラージュも見事。お金がかかっている。その辺が見どころだ。だからIMAX版があるのだろう。

 本作で気になったのは、冒頭、女医のシエナ・ブルックスに助けられて家に行くと、家の中にある物の並び方を神経質にそろえる場面があって、ジュリア・ロバーツ主演の「愛がこわれるとき」(Sleeping with the Enemy・1991・米)のような強迫性障害(映画では潔癖症となっていた)かと思わせるのに、そのあとまったくそのことに触れずに終わる。一体、何だったんだろうか。後半の関連するシーンをカットしてしまったのだろうか。不可解。

 ロバート・ラングドン教授はシリーズを通してトム・ハンクス。コミカルな味を持つ人だが、ここのところ「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spie・2015・米/独/印)や「ハドソン川の奇跡」(Sully・2016・米)などシリアスな実録ものが多い。またプロデューサー業も忙しいようで、TVシリーズを何本も手がけている。さすがにうまいなあと。

 毎回の相手役となる美女は、今回はフェリシティ・ジョーンズ。「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(Rogue One: A Star Wars Story・2016・米)の予告で輝いている人だ。「アウトバーン」(Collid・2016・英/独)ではアメリカ人留学生役(実際にはイギリス生まれらしい)で、あまり印象に残らなかったが、スティーヴン・ホーキング博士を描いた「博士と彼女のセオリー」(The Theory of Everything・2014・英)の評価が大きかったらしい。今後の活躍が期待される。

 生化学者バートランド・ゾブリストはベン・フォスター。傑作リメイク西部劇「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)の悪役が光っていた人。つい最近「ザ・ブリザード」(The Finest Hours・2016・米)と「ウォークラフト」(Warcraft・2016・中/加/日/米)に出ていた。

 原作はもちろんダン・ブラウンの同名小説。ちょっと結末のあたりは原作と異なるらしい。本作では前2作同様、製作総指揮を務めている。脚本にしたのはデヴッド・コープ。前作からの続投だが、つい最近トンでも映画の「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」(Mortdecai・2015・英/米)を監督した人。その前にはスパイ・アクション「エージェント・ライアン」(Jack Ryan: Shadow Recruit・2014・米/露)の脚本を書いている。どうも脚本のほうが向いているのかも。

 監督・製作はロン・ハワード。シリーズ全作を監督しているから、お手の物という感じなのだろう。ただ最近の他の監督作品は「ラッシュ/プライドと友情」(Rush・2013・英/独/米)や「白鯨との闘い」(In the Heart of the Sea・2015・米/豪ほか)でちょっと残念なことに。アメリカでは評価が高いようだが……。つい最近ドキュメンタリーの「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK ‐The Touring Years」(The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years・2016・英/米)が公開されたばかり。ロン・ハワードはどこへ行こうとしているのだろう。まあプロデューサーとしての作品のほうが圧倒的に多いが。

 銃は、イタリア軍警察の制服を着た女性が持っていたのがベレッタM92、WHOの黒人エージェントはたふんグロック、SWATはMP5のようだったが、よく見えなかった。

 最大のメッセージは、やっぱり、このまま行ったら人口過剰で人類は滅びてしまうということだろう。冒頭、日本の映像も入っている。人口、多いからなあ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当時は12〜13分前に開場。観客層はほぼ中高年で、男女比は半々くらい。シリーズをすべて劇場で観ている人たちだろうか。最終的には301席に8割くらいの入り。さすが話題作。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いており、気になった予告編は…… 四角の枠付き「ブラック・ファイル 野心の代償」はアル・パチーノ、アンソニー・ホプキンス、イ・ビョンホンという豪華な顔合わせのサスペンスらしい。気になる。1/7公開。

 枠付き「マグニフィセント・セブン」は「荒野の七人」(The Magnificent Seven・1960・米)のリメイクかと思いきや、ある女性の復讐のために札付きの7人が協力するという話? これって「七人の侍」(1954・日)原作とは大きくかけ離れていないか? 村のために立ち上がるんじゃないの? 予告では良くわからない。気になる。1/27公開。公式サイトはまだない模様。

 枠付き「バイオハザード ザ・ファイナル」はローラのセリフがある新予告。とてもお金がかかっているように見える。出来はどうあれ、とにかく見たい。12/23公開。

 暗くなって、映写機のマスクを左右につけたまま本編へ。


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