2016年10月30日(日)「ザ・ギフト」

THE GIFT・2015・米/豪/中・1時間48分

日本語字幕:細丸ゴシック体下、岡田理枝/シネスコ・サイズ(デジタル、ARRI)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも)

(米R指定、豪M指定)

公式サイト
http://movie-thegift.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

シカゴからカリフォルニアに若い夫婦、サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)が引っ越してくる。サイモンは出世を間近に控え、ロビンの仕事も好調だったが、2人で買い物に行くと、ある店でサイモンの高校時代の同級生ゴード(ジョエル・エルガートン)と再会する。サイモンはまったく覚えていなかったが、ゴードは良く憶えていた。電話番号を交換すると、まもなくゴードから贈り物が届くようになる。そしてゴードは、サイモンが仕事にいっている間に訪ねてくると、ロビンと話し込み家に入り込むようになる。

75点

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 B級のホラーだと思っていたら、なかなか良くできたミステリーだった。もちろんホラー並みに怖いが、ちょっと感動するものがあった。最初ホラー的に始まり、中盤で大どんでん返し、180度入れ替わって、そこから謎解きのミステリーに。驚きの展開とかわいそう過ぎな過去。今までにないパターン。人間って簡単に騙されてしまうものなんだ。

 観客はほとんど妻ロビンの視点で出来事を追うことになる。ここがまた巧い! だからロビンの恐怖ととまどい、衝撃、怒り、哀しみなどをすべて一緒に感じることになる。夫のサイモンと、高校時代の同級生ゴードの間に何があったのか。きわめてプライベートな、小さな話だが、引き込まれてハラハラする。そして「こんなことをやっちゃダメ、絶対!」と強く思う。

 こんなに良い出来なのに、なぜ前売り券を作らなかったんだろう。公開劇場数も少ないようだし。一般にはウケないという判断なのだろうか。たしかに、ハッピー・エンディングではないが、バッド・エンディングではない。もったいないなあ。

 妻のロビンはレベッカ・ホール。ベン・アフレックが監督・脚本・主演した「ザ・タウン」(The Town・2010・米)で事件に巻き込まれるヒロインを演じていた人。最近だとジョニー・デップのホラーSF「トランセンデンス」(Transcendence・2014・英/中ほか)でデップの妻を、残念なスピルバーグのファンタジー「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」(The BFG・2016・英/加/米)で女王の娘か侍女か秘書みたいな女性を演じていた。本作では、不安に怯える感じが見事だった。

 明るいが大ざっぱな夫のサイモンはジェイソン・ベイトマン。前半と後半で印象がまったく変わるのが素晴らしい。「消されたヘッドライン」(State of Play・2009・米/英/仏)やアカデミー賞6部門ノミネート作品「マイレージ、マイライフ」(Up in the Air・2009・米)などの話題作に出ていたが、最近はあまり見かけなくなった印象。大ヒット3D-CGアニメの「ズートピア」(Zootopia・2016・米)の主要キャラクター、狐のニック・ワイルドの声を担当していたらしい。

 不気味な同級生ゴードは、製作・監督・脚本、出演のジョエル・エルガートン。オーストラリア出身で、悪役が多いような気がするが、すごい才能の持ち主。最近だとリドリー・スコットの史劇「エクソダス:神と王」(Exodus: Gods and Kings・2014・英/米/西)のラムセス、衝撃の実話の映画化「ブラック・スキャンダル」(Black Mass・2015・米/英)のFBI捜査官、そしてつい最近西部劇の「ジェーン」(Jane Got a Gun・2016・米)に脚本と出演で名を連ねている。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にポイントで確保。当日は15分前くらいに開場。やはりほとんど中高年で、最初は25人ほどの内、女性は4人。その後、20〜30代くらいの男性が10人くらいになり、女性もちょっと増えた。最終的には122席に6割くらいの入り。あまり広告していないから、しようがないか。でももっと入っていい映画だと思う。

 気になった予告編は…… だいたい見飽きてきた予告が続いて、四角の枠付き「ミュージアム」は新予告に。やっぱり「セブン」(Se7en・1995・米)的な映画になるんだろうか。とすると小栗旬がブラピ?

 それにしても、隣に残酷なシーンでも笑うオバサンがいて、ちょっと不気味だった。


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