2016年11月19日(土)「ガール・オン・ザ・トレイン」

THE GIRL ON THE TRAIN・2016・米・1時間45分(IMDbでは112分)

日本語字幕:手描き風書体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(フィルム、with Arri)/ドルビー・デジタル

(米R指定)

公式サイト
http://girl-train-movie.jp
(音に注意。情報少。全国の劇場リストもあり)

毎日電車に乗ってニューヨーク市に通うレイチェル(エミリー・ブラント)は、妄想癖があり、ウソつきで、アル中だったが、いつも列車から見える幸せそうな夫婦の家をじっと見ていた。その家のすぐ近くには、別れた夫トム(ジャスティン・セロー)が、新しい妻のアナ(レベッカ・ファーガソン)と生まれたばかりの赤ちゃんと暮らす家があった。その家はかつて自分がトムと住んでいたものだった。そして、ある日、幸せそうな夫婦の妻メガン(ヘイリー・ベネット)が、夫のスコット(ルーク・エヴァンス)ではない男(エドガー・ラミレス)と抱き合いキスしているのを見て、列車を降り、その家に向かう。ところが途中のトンネルで気を失い、気が付くと友人のアパートの浴室で倒れている。頭に傷を負って血を流し、体中に痣があったが、記憶が一切なくなっていた。

75点

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 うわあ、やられた。落ち込む。すっかり元気がなくなった。バッド・エンディングではないのに、この暗さ、重さ、落ち込み具合は何? まったくやる気を無くする。元気な時に見ないと、生きて行くのも嫌になるかも。そんなネガティブ・パワー満載の映画。美女3人は素晴らしいんだけどなあ。雰囲気はアメリカ映画というよりイギリス映画という感じ。

 そこまでの気分にさせるというのは、それが狙いだとしたら監督の演出手腕ということになるのだろう。見事だ。観客の感情をコントロールし、ズドーンと落とす。演技も皆うまくて、リアルだから、余計に染みてきて嫌になる。

 また、分かりにくいミスタリーを、時間軸を切り取ってバラバラにして入れ替えているので、余計に分かりにくい。「3ヶ月前」とか字幕が出るのでわかるのだが、そのシーンがどこまでかわからない。そこに、主人公である列車の女性の思い出もそれに絡んでくるし、さらには、妄想癖があるという彼女の妄想世界(実際のところほとんどないのだが、ミス・リーディングとして使っている)と、しかも自分のことを嘘つきといっているし(これもミス・リーディング)、アル中の妄想・虚言までが重なって、ほとんど話がわからない。原作は読んでいないが、こんな雰囲気なのだろうか。やり過ぎの気がするが……。

 想像好きで、アル中で、虚言癖があって…… こういう女性では、観客は主人公に感情移入しにくい。登場する警察同様信じられない。ただ、彼女のアル中のやるせなさや、夫に捨てられた哀しみ、子供を産めなかった哀しみ、理想の愛に憧れる気持ちなどはよく伝わってくるので、たぶん主人公と同じような気持ちになって落ち込んでしまう。隣の芝生はきれいに見えるが、実際にはドロドロの愛憎劇があったと。

 アル中と気弱そうな感じのレイチェルを見事に演じたのはエミリー・ブラント。さすがにうまい。説得力がありすぎて、うんざりするほど。「スノーホワイト/氷の王国」(The Huntsman: Winter's War・2016・米)は作品自体が残念な感じだったが、「ボーダーライン」(Sicario・2015・米)や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(Edge of Tomorrow・2014・米/加)のようなアクションも難なくこなす。それで感情を伝えるのだから素晴らしいとしか言いようがない。でも一番きゅんと来たのは「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)かなあ。

 幸せそうな夫婦の美女妻メガンはヘイリー・ベネット。素敵なラブ・ストーリーの「ラブソングができるまで」(Music and Lyrics・2007・)に美人アイドル歌手役で出ていた人。「イコライザー」(The Equalizer・2014・米)にも出ていたようだが、印象に残っていない。このあと、これから公開される「イコライザー」のアントワン・フークワ監督の「マグニフィセント・セブン」(The Magnificent Seven・2016・米)にも出ているらしい。本作では全裸になって体をはっている。

 その夫スコットはルーク・エヴァンス。「ホビット竜に奪われた王国」(The Hobbit: The Desolation of Smaug・2013・米/ニュージーランド)シリーズにも出ていたが、「ワイルド・スピードEURO MISSION」(Furious 6・2013・米)シリーズでは悪役をやっていた。「ドラキュラZERO」(Dracula Untold・2014・米/日)ではドラキュラだった。どちらかといえば悪役の多い人。本作ではそれが効いている。

 別れた夫トムはジャスティン・セロー。恐ろしい「マルホランド・ドライブ」(Mulholland Dr.・2001・仏/米)や「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」(Charlie's Angels: Full Throttle・2003・米)に出ているが、脚本も書く人。「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)や「アイアンマン2」(Iron Man 2・2010・米)を書いている。

 妻のアナはレベッカ・ファーガソン。金髪だったが、実際は黒髪らしい。ドウェイン・ジョンソンの「ヘラクレス」(Hercules・2014・米)で女王を演じていて、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(Mission: Impossible - Rogue Nation・2015・中/香/米)ではトム・クルーズの相手役をやっていた。

 精神科医(劇中はセラピストと言っていたような)のカマルはエドガー・ラミレス。ベネズエラ出身の人で、最近だと「NY心霊捜査官」(Deliver Us from Evil・2014・米)の神父や、残念なリメイク「X-ミッション」(X-Mission・2015・米/独/中)に出ていた。どこかミステリアスな感じの役が多い気がする。

 原作は、世界45カ国でベストセラーとなったポーラ・ホーキンスの同名ミステリー。読んでいないが、こんなに暗い調子なのだろうか。それを脚本にしたのは、エリン・クレシダ・ウィルソンという人。エロでちょっと話題になったアート系の「セクレタリー」(Secretary・2002・米)や、これまたエロの「クロエ」(Chloe・2009・米/加/仏)を書いている。どちらも見ていないが、本作もエロ・シーンが多く、そういう傾向の人かと。

 監督はテイト・テイラー。「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(Planet of the Apes・2001・米)や「アイ・スパイ」(I Spy・2002・米)に出ている人で、監督作は短編とTVも含めて7本ほど。しかし、あまり日本で公開されておらず、話題にもなっていない。本作が話題作ということにはなりそうだ。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は30分前くらいに着いたら、2館あるのですでに開館。入り口前付近で待っていると、20分前くらいに開場。場所柄もあるのだろうが、ほぼ中高年。男女比は4対6くらいで、やや女性が多い感じ。20代くらいも少しだけいた。最終的には183席はほぼ満席。小さなスクリーンだがほかにやっていないのでしようがない。日本橋だったら良かったのに。シ○○テでないだけましか。

 スクリーンはビスタで開いており、ようやく緊張感がなくなった感じの山崎紘菜のシネマチャンネルは同じもの。そのあとほぼ暗くなってからの予告も、「サバイバル・ファミリー」や「本能寺ホテル」「xXx:再起動」も同じパターン。

 ロバート・デ・ニーロとザック・エフロンの上下マスク「ダーティ・グランパ」はコメディらしいが、結構お下劣な感じ。はたして……劇場次第かなあ。1/6公開。

 上下マスクの「アイ・イン・ザ・スカイ」はドローンを使った戦争の話。「ドローン・オブ・ウォー」(Good Kill・2014・米)のイギリス版か。見たいけど、劇場がなあ。12/23公開。

 上下マスクの「ドント・ブリーズ」はかなり怖そう。面白そうだが、劇場がどこか。そして前売りが無いようだが……。公式サイトもないみたいだし。12/16公開。

 暗くなって、本編へ。


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