2016年12月4日(日)「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」

FANTASTIC BEASTS AND WHERE TO FIND THEM・2016・英/米・2時間13分

日本語字幕:手描き風書体下、岸田恵子/シネスコ・サイズ(デジタル、by Panavision、Arri、IMAX版は1.85)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASAT、ドルビーATMOS、Auro11.1も)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、IMAX版、3D上映、4D上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1926年、魔法動物を研究し保護しているニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は船でアメリカ・ニューヨークにやって来る。ちょうどニューヨークでは邪悪な黒い風のようなものが猛威を振るい町を破壊する事件が起きていた。魔法使いの存在を隠しているアメリカ合衆国魔法議会(MACUSA)の長官パーシバル・グレイブス(コリン・ファレル)自らが調査に乗り出していたが、ノーマジ(人間)の新セーレム救世軍(NSPS)のメアリー・ルー・ベアボーン(サマンサ・モートン)らは、人間の中に魔女がいると訴えビラを配って人々を扇動していた。そんなとき、スキャマンダーは缶詰め工場で働きながらパン屋を開くことを夢見るノーマジのジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)と知り合い、似たようなトランクを持っていたことから取り違えてしまう。すると魔法のトランクから魔法動物の一部が逃げ出し、騒ぎが起こる。たまたまそのスキャマンダーを見ていたMACUSAのティナ・ゴールドスタイン(キャサリン・ウォーターストン)は無断で魔法を使ったとしてスキャマンダーをMACUSAに連行するが、取り合ってもらえず、しかたなく2人でトランクを探しに行くことにする。

74点

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 良くできたファンタジー。ハッピーな気持ちになれる奇想天外な物語。しばし日常を忘れて、魔法がある世界での冒険を楽しむことができる。ラストもさわやか。元気も出るかも。年末に見るにはピッタリでは。

 魔法使いが普通にいる世界。ただ人間には知られないようにされていて、でも「我々の中に魔女がいる」と騒いでいる団体がいたり、人間に知られると戦争になるという危機感もある。ちゃんと悪党もいる。そして、万が一人間にばれた時には、魔法で「メン・イン・ブラック」(Men in Black・1997・米)のように記憶を消してしまうことで、何事もなかったように繕う…… などの設定がすでに面白い。

 もちろんSFXはすごい。普通に存在する生物をエスカレートさせたような魔法動物の数々。居そうもないものばかりだが、それをあたかも存在するかのように見せる技術。そして、サラウンド。ほどよいギャグと、恋と、仲間との絆と、悪との戦い。映画らしい物語。

 気になったのは、全体に色が浅く、ちょっとベールが掛かっていたようにもやっとしていたこと。なぜ? デジタルで撮っているのだからもっとクリアで、コントラストを強くできたはずだと思うが、時代感を出したかったのだろうか。

 ニュート・スキャマンダーはイギリス生まれのエディ・レッドメイン。内気で照れた感じが抜群。たぶん注目されたのは「レ・ミゼラブル」(Les Mis屍ables・2012・米/英)あたりではないだろうか。歌がうまかった印象がある。その後「博士と彼女のセオリー」(The Theory of Everything・2014・英/米)でスティーヴン・ホーキング博士を演じてアカデミー賞主演男優賞を受賞、「リリーのすべて」(The Danish Girl・2015・英/米ほか)では世界で初めて性別適合手術を受けた男性を演じている。「ジュピター」(Jupiter Ascending・2015・米/豪)はかなり残念だったけど……。

 パン屋を開くことを夢見る普通の人間ジェイコブ・コワルスキーはダン・フォグラー。コミカルな感じが絶妙だったが、日本ではあまり見かけない人。「燃えよ!ピンポン」(Balls of Fury・2007・米)に出ていたが、ソバージュみたいなロン毛でエキセントリックでまったく印象が違う。アニメの声を担当することも多いよう。最近は「ベアリー・リーサル」(Barely Lethal・2015・米)というアクション・コメディに出ていたらしいが、見ていない。

 アメリカ合衆国魔法議会のティナ・ゴールドスタインはキャサリン・ウォーターストン。イギリス生まれで、この人もあまり見かけない感じだが、ジョン・キューザックのスリラー「コレクター」(The Factory・2012・仏/加/米)に出ていたらしい。最近だとマイケル・ファスベンダー版の「スティーブ・ジョブズ」(Steve Jobs・2015・英/米)に出ていたそうだが、見ていない。役によって印象がまったく違うようで、本作のようにクラシックなファッションと髪形が妙に似合っている気がした。

 ティナの妹で色っぽいケイニー・ゴールドスタインはアリソン・スドル。ミュージシャンとしての活躍の方が多く多くのTV番組に関わっているらしい。女優としても主にTVで「CSI:ニューヨーク4」(CSI: NY・2007・米/加)などに出ていたらしい。どうりで見たことがあるなと。いい味を出していたので、今後スクリーンでの活躍を期待したい。

 アメリカ合衆国魔法議会の長官パーシバル・グレイブスはコリン・ファレル。アクションものに良く出ていた気がするが、最近はB級が増えてきたような。「ニューヨーク冬物語」(Winter's Tale・2014・米)は良かったけどなあ。なんだか悪役が定着してきた感じも。

 新セーレム救世軍のメアリー・ルー・ベアボーンはサマンサ・モートン。怖いまま母の感じが素晴らしい。スピルバーグのSFアクション「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)が強烈だった。「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(Elizabeth: The Golden Age・2007・英/仏/独/米)も強く印象に残ったが、SFアクションの「ジョン・カーター」(John Carter・2012・米)は残念だった。

 ほかに、新聞社のオーナーにアンジェリーナ・ジョリーの父ジョン・ヴォイト、グリンデルバルドにジョニー・デップ、禁酒法時代の魔法の酒場スピーク・イージーのオーナーにロン・パールマン(特殊メイクかCGで誰かわからないが)、どこにいたかわからなかったが、かつてB級アクションの敵役常連ダン・ヘダヤもちょっとだけ顔を出していたらしい。

 脚本は「ハリー・ポッター」シリーズのJ・K・ローリング。本作では製作も兼ねている。全5作になるそうで、すでに2はプリプロに入った模様。

 監督はデイビッド・イェーツ。「ハリー・ポッター」シリーズを「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(Harry Potter and the Order of the Phoenix・2007・英/米)からラストまで4本監督した人。つい最近「ターザン:REBORN」(The Legend of Tarzan・2016・英/加/米)も監督している。

 ちょっと気になったのは、最初、人間のジェイコブが明らかに歳下と思われるスキャマンダーを呼ぶ時に英語では「ミスター」と言っているのだが、字幕が「だんな」って、どうにも違和感。3文字にしなければいけなかったのかもしれないが、時代劇じゃないんだから。

 銃はNY市警が4インチくらいのリボルバー(M10かM1917あたりか)、M1897ショットガン(トレンチ・ガン)、トンプソンを使用。

 公開12日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は12、13分前に開場。2Dの字幕版で見たが、意外に20代くらいの若い人が多く、たぶん全体の2/3くらいはいた感じ。中高年のほうが少ないのは最近では珍しいこと。下は小学生くらいの女の子。男女比もアイドルの恋愛物ではないのに女性のほうが多く、4対6くらい。最終的には真ん中のプレミアム席にも5人ほどが座り、499席の6.5割くらいが埋まった。さすが。

 通常10分前くらいから流れる山崎紘菜のシネマ・チャンネルはなく、時間になっていきなり予告からの上映。それも最初ぶつぶつ切れた。マシン・トラブルか? どうにか復帰して、気になった予告編は…… 

 左右マスクの「SING/シング」は3D-CGアニメ。「ミニオンズ」のスタッフが作っているとかで、キャラはイマイチな感じがするものの、数々のヒット曲に合わせた表情やダンスが完璧で、そこがとても魅力的。3/17公開。

 四角の枠付き「ラ・ラ・ランド」は、「セッション」(Whiplash・2014・米)の監督によるミュージカルだそうで、ライアン・ゴスリングとエマ・ストーンという意外なキャスティング。とても楽しそうで気になる。2/24公開。

 枠付き「ドクター・ストレンジ」は新予告に。ただ、前売りというかムビチケカードはイベントのあった10月の1日だけの販売とかで、一般販売はなし。多くの人に見て欲しいという気はないようだ。「 SW」と同じディズニーか……。1/27公開。

 枠付き「ピートと秘密の友だち」は初予告か? 大ベテランの名優ロバート・レッドフォードと、「ジュラシック・ワールド」(Jurassic World・2015・米)のブライス・ダラス・ハワードが出ている。思っていたより大人も楽しめるかも。12月公開なのに12月に入ってから予告とはと驚いていたら、これもディズニー。あまり見せたくないのか。12/23公開。

 左右マスクの「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」はティム・バートンなのでちょっとダークだが、面白そう。2/3公開。

 暗くなって、TCXスクリーンのデモの後、本編へ。

 下の劇場がMX4D劇場のせいか、ときどきイスに微妙な振動が伝わってきて、「地震か!?」と不安になってしまった。ちょっと気持ち悪い。


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