2016年12月10日(土)「海賊とよばれた男」

2016・日本テレビ放送網/講談社/東宝/ジェイ・ストーム/讀賣テレビ放送/電通/ROBOT/ホリプロ/白組/D.N.ドリームパートナーズ/ジェイアール東日本企画/阿部秀司事務所/中央公論新社/日活/ソニー・ミュージックエンタテインメント・2時間25分

シネスコ・サイズ(デジタル、ALEXA)/ドルビー・デジタル(?、表記なし)

(一部日本語字幕付き上映もあり、視覚障害者用音声ガイド付き)

公式サイト
http://kaizoku-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

1912年、石炭全盛期に石油に目をつけ北九州の門司で油屋、国岡商店を始めた新参者の国岡鐡造(くにおかてつぞう、岡田准一)は、大手に抑えられた市場に食い込めず、支援者の木田章太郎(きだしょうたろう、近藤正臣)から借りた金も底を尽きかけていた。しかし「仕事がなければ、仕事を作れ」の言葉に従って、沖で漁をする船に自前の船で燃料を売りに行くというユニークな方法を思い付き、会社規模を拡大して行く。そしてユキ(綾瀬はるか)という妻を迎える。1945年、大企業となっていた国岡商店は、焼け野原の東京・金座に本社ビルを構えていたが、売るべき石油が無いため、国内の石油を取り仕切っている「石統」(石油配給統制会社)の社長、鳥川卓巳(とりかわたくみ、國村隼)に交渉に行くが、戦時中の国岡商店の軍への石油供給に不満を持っていたことから、断られてしまう。しかし「石統」も石油の輸入はできず、占領軍のGHQから軍の貯蔵タンクにまだ2万キロリットルの石油があるはずだから許可できないと告げられる。旧海軍の貯蔵タンクにあったのは、底のほうに残っている泥や雨水と一緒になった泥水のような石油で、どこも扱おうとはしなかった。そこで鳥川はその仕事を国岡商店に回すことにする。すると国岡はあえてその仕事を引き受けるが……。

74点

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 感動の物語。日本を支えてきた男たちの物語。そして日本の独立性を守り通した男たちというか1つの会社の物語。特に1人の男にスポットが当てられ、年代記のような構成。今の日本はこういう男たちによって作り上げられてきたんだと。

 第二次世界大戦中の戦闘シーンも素晴らしいし、戦後の焼け野原となった東京や、昭和の時代を感じさせる町並み、時代感などは見事としか言いようがない。まさに「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)+「永遠のゼロ」(2013・日)の世界。それは素晴らしい。

 ただ、年代記、クロニクルのようになっているため、どうしても立志編的なところから始まり、老人となって息を引き取るまでという構成になっており、2014年にTVでやっていたTBSの2夜連続5時間のスペシャル・ドラマ「LEADERSリーダーズ」と似た印象を持ってしまう。トヨタなんかはこうだったと。で、出光はこうだったと。TVならこういう構成で良いと思うし、もちろん書籍としても面白いだろう。ただ、映画として1本の作品として見ると、どうしても最後で盛り上がらない。年老いて、次第に事業は安定期に入って出番がなくなる、尻すぼみの印象。やっぱり映画的には一番盛り上がるシーンがあって、大団円を迎えないとなあ。

 しかも、いろいろ事情はあるのだろうが、多くの有名役者が出ていて、それぞれに見せ場のあるあるエピソードを作っているので、どうしても話が散漫になる。あまり主人公にスポットが当たらなくなる。

 さらに欲を言えば、一代記であるならば、メインとなるエピソードの年齢の役者が演じた方が無理がないと思うのだが、本作では戦後が一番長いと思われるのに、主演の岡田准一は1980年生まれの36歳。96歳の老人メイクは完璧だったと思うが、1945年の終戦時で60歳だからすでに無理がある。特殊メイクで演じる時間が長すぎる。体形は良い感じだが、すでに白髪が無理がある感じ。これはつらい。

 時代感を出すため、タバコが頻繁に登場するが、今となっては吸わない人にはちょっと苦痛かもしれない。

 さらに時代感を出すためなのか、色が浅くコントラストが低い。タバコの吸い過ぎでガスっているか、ベールが1枚掛かったような感じ。どうして邦画はこうなるのか。

 国岡鐡造は岡田准一。TVから始まった「SP(エスピー) 警視庁警備部警護課第四係」(2007-2010・日)シリーズや、「図書館戦争」(2013-2015・日)シリーズが有名。山崎貴監督作品は「永遠の0」(2013・日)で主演を務めている。「SP」も良かったが、「永遠の0」も良かった。本作の前は「エヴェレスト神々の山嶺」(2016・日)に出ていたようだが、予告だけでお腹いっぱいで見ていない。本作は悪くはないのに群像的で、あまり印象に残らない。

 ほかの出演者も有名人がずらり。群像式なので実に多い。そしてちょっとだけしか出ていないから皆印象が薄い。売れっ子監督になると、この役者で企画をとか、この役者を使ってくれとねじ込まれることも多いのだろう。それでちぐはぐな作品ができ上がることもあると……。気になったのは吉岡秀隆。「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズに出ていて、日本アカデミー賞の主演男優賞を2度も取っているが、本作には合わなかった印象。あと通しで出ていたのは番頭さん的な甲賀治作の小林薫と、柏井耕一役の野間口徹くらいか。悪役的な「石統」の社長、鳥川卓巳役の國村隼も良かった。

 原作は百田尚樹の、本屋大賞を受賞した同名小説。上下巻の大作だけに、145分とは言え、1本の作品にまとめるのは難しかったのだろう。部分を切り取るか、TVのスペシャルで6回連続とかがふさわしかったのかも。脚本は監督も務めた山崎貴。「ALWAYS三丁目の夕日」や「永遠のゼロ」は良かったが、3D-CGアニメの「STAND BY MEドラえもん」(2014・日)はよくわからなかった。誰でもすべてが成功するわけではない。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は12〜13分前に開場。トイレに行ってから入ったら、明るいまますでに予告が始まっていた。割と若い人が多く、中高年まで幅広かった。男女比はちょっと女性が多く、4.5対5.5くらい。最終的には一番大きい499席に5割くらいの入り。ちなみに次の回からほぼ満席のサインが出ていた。

 気になった予告編は…… 四角の枠付きの「ピートと秘密の友だち」はもう公開が近いというのに、またティーザー的な予告。どうなっているんだろう。面白そうではあるのに、何か問題でもあるのか。あっ、ディズニーか。12/23公開。

 枠付き「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」はこれが予告の最終版だろう。面白そうだが、混むんだろうなあ……。12/16公開。

 枠付き「追憶」は岡田准一と小栗旬の顔合わせ。なかなかタイトルが出ずイライラさせられた。面白そうなミステリーといった雰囲気だったが、ティーザーで良くわからない。5/6公開。

 枠付きの「沈黙-サイレンス-」は新予告に。江戸時代の貧しい生活と、厳しいキリスト教弾圧のようすが凄い。実に重苦しい感じ。うむむ。1/21公開。

 TCXのデモの後、「映画どろぼう」があって本編へ。

 たぶん下のMX4D劇場のせいだと思うが、振動がイスに伝わって来て気持ち悪かった。地震と間違うので、どうにかして欲しいなあ。


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