2016年12月18日(日)「ドント・ブリーズ」

DON'T BREATHE・2016・米・1時間28分

日本語字幕:丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(表記なし、IMDbではデジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル?(表記なし、IMDbでもなし)

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.dont-breathe.jp
(音に注意。情報少ない。全国の劇場リストもあり)

デトロイトの寂れた町。父が出て行ったあと若い男を家に引っ張り込み働きもしない母親と、幼い妹の面度を見ながら暮らす若い女性ロッキー(ジェーン・レヴィ)は、町の悪党ともコネのある粗暴な恋人のマニー(ダニエル・ソヴァット)と、父親が警備会社に務める男友達のアレックス(ディラン・ミネット)とともに、アレックスが父のデスクから警備情報とマスター・キーを持ち出して、金持ちの家から宝石などを盗んで、生活費や小遣い銭に充てていた。しかし故買屋からはピンハネされ、なかなか大金を手に出来ない。そんなとき新たに紹介された仕事は、一人暮らしの元軍人で、愛娘を金持ちの娘に車で轢かれて亡くし、賠償金30万ドルを受け取ったとされる男の家。アレックスは金額が大きく、捕まった時、重窃盗罪になるから降りるというが、ロッキーから妹を連れてカリフォルニアへ行くために金が必要で、これを最後にするからと懇願され、しかたなく加わることにするが……。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 怖い話。前半はチンピラみたいな若い3人組が調子に乗って泥棒をする話で、3人が反撃を受けようとも、ちっともかわいそうではなく、自業自得だバカめと不快に見ていた。いくらヒロインが美人でも人のものを平気で盗むようなヤツじゃあなと。しかし後半ちょっとした隠し球があって、応援したい気にさせられる。そこはうまい。

 終わって出て行く時に若い女の子が言っていたのは「お金への執着心が凄い」と。確かに、自分の命よりお金が大事という感じ。しかもラスト、仮に新しい生活が始められたとしても、そのベースなるお金は人のもので、しかも相手を殺して奪ったものではないか。それで幸せになれるのか。気にならず生きて行けるのか。アメリカではこれはありなのだろうか。金は金。良いも悪いもないと。最初に死ぬヤツが一番悪いが、それでも結局みんな泥棒だから。ここまで金に執着してがんばれるんだったら、ほかのことでもがんばれるんじゃないの?

 なんども止める機会があって、比較的おとなしい男の子が止めよう、オレは降りるといっているのに、女の子は絶対にやめない。ケーサツに連絡しようといっても、それも断っている。男の子の判断が正しいのに、あえて死に近づくような選択をする。そして命を失いかけているのに、金だけは手放さないと。自分のものじゃないのに。せめて自分のものを守ろうとしているのならわかるのだが。本当に自業自得。

 とはいえ、たぶんハリウッド作品としては低予算で、登場人物も6人と1匹だけ。しかも窃盗グループ3人組は男2人に女1人という「冒険者たち」(Les aventuriers・1967・仏/伊)的黄金パターン。これで物語が作れると。

 特殊メイクで恐ろしい形相になっている元軍人で盲目の老人はスティーヴン・ラング。あの傑作SFアクション「アバター」(Avatar・2009・米/英)で、顔に傷のある強烈な司令官のクオリッチ大佐を演じた人。あれ以来の強烈な役だったのではないだろうか。元軍人とはピッタリのイメージ。素晴らしい。ただ後半、ランニングに付いたはずの女の血が無くなっていたのはコンテ・ミスだろう、残念。ハサミで切った女のジーンズも、後では切れてないし(といっても、本当に切れていると、大切なところが丸見えになっちゃうからなあ)。

 金の亡者の美女、ロッキーはジェーン・レヴィ。TVや短編が多いようで、劇場版の長編だと日本公開されたのはリメイク版の「死霊のはらわた」(Evil Dead・2013・米)で主役らしい兄の薬物依存の妹ミアを演じていたくらい。あの壮絶演技を彷彿とさせる。プロデューサーのサム・ライミつながりか。ただ本作では金の亡者だからなあ……。

 意外と活躍してくれる、ちょっと気弱な男友達アレックスはディラン・ミネット。時々見かける気がするが、過去にはヴァンパイア・ストーリーのハリウッド・リメイク版「モールス」(Let Me In・2010・英/米)や、怖い誘拐ミステリー「プリズナーズ」(Prisoners・2014・米)などに出ている。

 脚本は監督も務めるフェデ・アルバレスとロド・サヤゲスの2人。ロド・サヤゲスは共同プロデューサーも務めていて、劇場長編映画はリメイク版の「死霊のはらわた」から書いていて、やっぱりプロデューサーのサム・ライミつながりか。

 脚本・監督のフェデ・アルバレスはウルグアイ出身の人で、やはり「死霊のはらわた」が劇場長編映画デビュー作で、監督と脚本で関わっている。ボクはあまり感心できなかったが、オリジナル版を撮ったサム・ライミが多いに気に入ったということなのだろう。

 銃は、アホなチンピラ男が持ち込むのがベレッタM92。元軍人の男が持っているが、パイソンのような6インチのリボルバー。マット・シルバーの感じで、クレーンの前面にねじがあったようにも見えたので、違うモデルかも。とにかく銃声は大きくリアルで、キーンという嬉々なりの効果までつけられていたのは良かったのでは。なかなかこういう映画はない。でも、ハンマーやバールも同様に怖い。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にポイントでどうにか席が取れたが、初回と最終回以外は売り切れ。当日は売り切れの表示。すごいなあ。20分前くらいに開場。10分前くらいでほぼ中高年が8人で、女性は3人。しかし続々と若い人が増えて逆転、6割くらいが20代から30代前半という感じ。若い人は来るのが遅いということか。男女比は6対4くらいで、男性が多かった。シネマ・チャンネルが始まったくらいで、まだ5割。急激に増え出して、ほぼ暗くなってCM・予告が始まったくらいで8割。そして最終的に88席は3席くらいを残してすべて埋まった。来なかった人がいるのだろう。

 左右マスクの「追憶」は岡田准一が刑事を演じるミステリー。幼なじみ3人に何かあったと。監督は「駅STATION」(1981・日)の降旗康男。ちょっと暗そうな雰囲気だが気になる。5/6公開。

 四角の枠付き「新宿スワンII」はヤクザ映画。うーむ、暴力満載だし。「オレたちは新宿を守る番犬だ」とかいうセリフはカッコ良かったけど……。1/21公開。

 暗くなって、マスクが左右に広がり、ソニーのマークから本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ