2017年2月15日(水)「王様のためのホログラム」

A HOLOGRAM FOR THE KING・2016・英/仏/独/米/メキシコ・1時間38分

日本語字幕:黒フチ丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://hologram-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

仕事も、家も失い、離婚したアラン・クレイ(トム・ハンクス)は、サウジアラビアの王族に知り合いがいるということから、IT企業に再就職し、そのサウジアラビアに自社製品のホログラム会議システムを売りこむプロジェクトを担当することになる。しかしサウジアラビアに行ってみると、あまりにも勝手が違い、すべてのことに戸惑わされてしまう。王様にプレゼンテーションするための機材もスタッフもそろうが、与えられた場所は砂漠の真ん中のテントで、WiFiも満足につながない。しかも、王様はいつやってくるかもわからないという。アメリカにいる上司からはガンガン、プレッシャーが掛けられ焦るアラン。プレッシャーで体な異変をきたした時、珍しくまじめで親切な地元の女医ザーラ・ハキム(サリタ・チョウドリー)と、親しくなった地元のガイド兼運転手のユセフ(アレクサンダー・ブラック)に助けられることに。

71点

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 これは……タイトルによるミス・リーディングだなあ。ホログラムは出てくるけれど、それはストーリーとほとんど関係ない。実際のところホログラムでなくても、新型携帯でも、3Dプリンターでも何でも良い話。

 何より、何が言いたかったのか、伝わってこなかった。世界中、どこかにあなたの居場所はあるということ? どんな悲惨な状態でも、何とかなるさ、ということ? それとも「人間万事塞翁が馬」ということ? とにかく伝わってこなかった。

 演出的な手法は悪くないんだと思う。見せる力はあるからついつい引き込まれる。何かおきそうな感じ。しかし結局何も起こらない。だからストーリーというか脚本に問題があるのでは? 原作はあるようで、ピューリッツァー賞にノミネートのテイヴ・エドガーズの同名小説(早川書房刊)。原作通りなのか、読んでいないのでわからない。ただ本作の原作は作者の実体験を元に書かれていて、全米図書賞にノミネートされたらしい。この人、残念なファンタジー「かいじゅうたちのいるところ」(Where the Wild Things Are・2009・独/豪/米)の脚本や、シェール・ガスによる混乱を描いた「プロミスト・ランド」(Promised Land・2012・米/UAE)の原作を手がけている。「プロミス……」は見ていないが、「かいじゅう……」はなかりダークというかこじらしている感じ。

 脚本の設定はどうにも悲惨なものばかり。シリアスに作ったらストレスがドーンと掛かる胃が痛くなるようなものになってしまうところだろう。しかし、ここにトム・ハンクスを使ってコミカルというか、ユーモラスな感じを取り込んでいて、なんだかチグハグになってしまった。たしかに落ち込むような映画にはなっていないけど、それで余計に伝わりにくくなったのかも。たぶんこの監督にコメディのセンスはないのではないかと思う。

 印象としては、最初のタイトルが出る前のアバンの部分だけ先に撮影して、それを見せて資金を集めて作ったのではないかと。アバンの部分はコメディっぽくて、何か面白い展開になりそうで、興味をそそる作りになっている。しかもトム・ハンクスがカメラに向かって話しかけているし。


【ただいま執筆中。少々お待ちください】


 公開6日目の平日の初回、銀座の劇場は全席指定で、前日にムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに着いたらすでに開場済み。観客のほとんどは、平日ということでか、ほぼオバサン。たぶん90%くらい。オジサンが少し。まあ、とにかくペチャクチャとうるさい。本編が始まる直前までしゃべっている。しかも声がでかい。回りへの配慮なんてものはとっくに失ってしまったらしい。最終的には224席の4割くらいが埋まった。平日なのに、これはビックリ。ただ、遅れてくる女性がやたら多い。

 それにしても、この劇場は古い。そろそろ建て替えか、無くしても良いのでは。「1」は良いとしても(それでもイスが小さい)「2」は酷いし、「3」は最悪。先に有楽座のほうが無くなるなんて。

 スクリーンは小さくビスタで開いており、気になった予告編は…… こういったアート系の劇場だとなおさらなのだが、予告でなかなかタイトルが出ない。そして公開日も出ない。ラスに一瞬、出るだけ。何のための予告なんだろう。予告で一番大切なのは「タイトル」と「公開日」じゃないのかなあ。それがわからないと前売り券とか買えない。どうもカッコ良く作ろうとする製作者の自己満足のように思えて腹が立つ。

 そんなタイトルが出なくてイライラした上下マスクの「ムーンライト」は、劣悪な環境の中で生きる黒人の少年を描くものらしい。多くの映画賞でノミネートされ、受賞歴も凄い。ただ、うんざりするような状況が描かれているようで、楽しい映画ではないらしい。春公開。

 上下マスクの「光をくれた人」は長期休暇を宣言したとかいうマイケル・ファスベンダーの灯台守の話らしい。これもタイトルと公開日が出ずイライラ。いかにもアート系という感じ。「喜びも悲しみも幾歳月」(1957・日)的な映画だろうか。3/31公開。

 フル・サイズの「ジャッキー」は、最初ジャッキー・チェンの映画化と思っていたら、サブ・タイトルがあって「ファーストレディ最後の使命」というらしい。J・F・ケネディの夫人、ジャクリーン・ケネディの話。ナタリー・ポートマンが演じ、「ブラック・スワン」で組んだダーレン・アロノフスキーが製作するらしい。監督は別の人。3/31公開。

 フル・サイズの「ボヤージュ・オブ・タイム」は素晴らしい映像からなる叙事詩というか、叙情詩というか、観念的なものなのか、よくわからなかったが、とにかく絵はきれい。監督はテレンス・マリック。3/10公開。

 一番気になったのは上下マスクの韓国映画「お嬢さん」。監督はあの名匠パク・チャヌク。なんと日本語が聞こえてきた。財産家のお嬢さんと詐欺師と侍女との騙しあいの話らしいだが、R18+指定だそうで、エロティックな部分がかなり過激らしい。日本語が聞こえてきたが、悪役なんだろうなあ。えっ、お嬢さんが日本人? 3/3公開。

 上下マスクの「ラビング」は人種差別甚だしき頃の1958年のアメリカ、バージニア州で、白人男性と黒人女性の愛を描くものらしい。実話の映画化で、妻が時の司法長官ロバート・ケネディに手紙を書いて、状況が変わったらしい。3/3公開。

 スクリーンが小さいなあと思っていたら、本編開始前に上下左右に広がってフル・サイズに。そして「映画泥棒」のあと本編へ。


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