2017年2月18日(土)「セル」

CELL・2016・米・1時間38分

日本語字幕:丸ゴシック体下、長澤達也/シネスコ・サイズ(デジタル、by Panavision)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://cell-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

空港でマンチェスター行きの飛行機を待っていたクレイ・リデル(ジョン・キューザック)は、出発前に別居中の妻と息子に携帯で電話していたのだが、電池切れとなり、公衆電話から掛け直そうとする。その瞬間、携帯電話から奇妙な音が流れ、電話していた人々が凶暴になり、お互いに殺し合う状態に。クレイが地下鉄に逃れると、停車したままの車両に携帯を使っていなかった人々が数人おり、合流する。しかし車掌のトム・マッコート(サミュエル・L・ジャクソン)は電気が止まったので、ポンプも止まりやがて水が流れ込んでくるという。クレイはトムと一緒に脱出することを決め、自分の自宅を目指す。その時すでに町は廃墟のようになっており、あちこちに殺されたノーマルの人の死体が転がっていた。

65点

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 これはビックリ。久々にこんな作品を見た。腹は立たなかったが、これまでごまんと作られてきたに違いないゾンビ映画と同じ。原作というか脚本が酷い。ゾンビという設定ではないが、結局おんなじ。ケータイを使っていて凶暴になったやつらと、ケータイを使っていなくてノーマルのままの人間との戦い。生き残った老若男女混合の数人が、旅をするって、これまた良くあるパターンで、有名なところでは、お手本のような傑作ゾンビ映画「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)と一緒ではないか。しかもこちらは出来が悪い。

 見るからに低予算。飛行機が墜落するとか、とんでもない数のゾンビ(おかしくなった人)のモブシーンなど、ちょっとレベルが低い。見どころはジョン・キューザックとサミュエル・L・ジャクソンが出ていることくらい。あと付け足すなら、「ロング・ライダース」(The Long Riders・1980・米)のステイシー・キーチと、後味悪い映画で有名な「エスター」(Orphan・2009・米/加/独)のイザベル・ファーマンが出ていることか。ゲスト扱いなのか、2人ともすぐに死んじゃうけど。

 異常現象から始まって、一切、何の説明もなし。しかも、ほとんど解決なし。説明しないわけだから、やりたい放題。不条理映画にも近い。せめて登場人物達の人間ドラマが面白ければいいのだが、それもダメとなると……。オープニングのクレジットの入れ方も、黒い帯がいきなり出てそこに文字というのが、どうにも溶け込んでおらず、センス悪い感じ。IMDbでは4.3点の低評価。

 原作、脚本ともにあのスティーヴン・キング。まあ映画化されると面白くないといわれる人ではあるし、最近は小説もなんだか……。映画化されて良かったのは「アトランティスのこころ」(Hearts in Atlantis・2001・米)くらいまでかなあ。ホラーでは「キャリー」(Carrie・1976・米)や「シャイニング」(Shining・1980・英/米)、SF的な「デッドゾーン」(The Dead Zone・1983・米)、文芸的な要素が強い「スタンド・バイ・ミー」(Stand by Me・1986・米)や「ショーシャンクの空に」(The Shawshank Redemption・1994・米)、「グリーンマイル」(The Green Mile・1999・米)なんかは抜群に良かった。原作では「呪われた町」(1975)が衝撃的で怖くて、TVではNHKが放送した「スティーブン・キング/ランゴリアーズ」(The Langoliers・1995・米)が面白かった。

 主人公クレイ・リデルは、B級の常連のようになったジョン・キューザック。昔からよくB級のトンデモ映画に良く出ていた印象はあるが、メジャーな作品にも出ていた。それが「大統領の執事の涙」(The Butler・2013・米)あたりを最後にB級路線へ。だいたいハリウッドのベテラン俳優のパターンという感じか。「“アイデンティティー”」(Identity・2003・米)や「ニューオーリンズ・トライアル」(Runaway Jury・2003・米)あたりは良かったなあ。ちょっと甘いがボク的にはラブ・ストーリーの「セレンディピティ」(Serendipity・2001・米)も良かった。本作では製作総指揮も兼ねているらしい。うむむ。

 共演は、とにかくたくさんの作品に出まくっているサミュエル・L・ジャクソン。この人もベテランだが、B級はもちろん大作にも良く出ている。つい最近だと「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」(Miss Peregrine's Home for Peculiar Children・2016・英/ベルキー/米)に出ていたし、間もなく「トリプルX:再起動」(xXx: Return of Xander Cage・2017・米)も公開される。その後は「キングコング:髑髏島の巨神」(Kong: Skull Island・2017・米/ベトナム)が控えている。すごいなあ。このひとが出たおかげで、トンデモ映画に重みが出たことは確か。

 脚本にもう1人クレジットされているのは、アダム・アレッカ。若手のライターのようで、これまでに3本書いていて、日本劇場公開されたのはイベント上映された1本のみ。よく任せたなあ。若手養成のためだったのかも。

 監督はトッド・ウィリアムズ。残念な映画シリーズの第2作「パラノーマル・アクティビティ2」(Paranormal Activity 2・2010・米)の監督。ということは、これも若手養成のためか。

 銃は、制服警官がたぶんグロック、身を守るため銃砲愛好家の家から手に入れるのが1911カートのシルバーと、P226シルバー(プレス・スライド?)、ポンプ・ショットガンなど。

 公開2日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、たまったポイントで金曜に確保。当日は15分前くらいに開場。小さいスクリーンで、やっばりこういう扱いか。でもイベント上映ではなくちゃんと公開されただけでも凄いことだと思う、この出来だから。観客層はほぼ中高年で、女性はちょっと若め。男女比は、最初16〜17人いて女性5人ほど。10分前くらいから曲が掛かって、やがてシネマ・チャンネル開始。この時点でケータイを点けてるヤツが10人くらい。女性のほうが多いか。そんなに忙しいなら来るなよ。

 最終的に124席に5割くらいの入り。たぶん、これ以上増えることはないだろう。途中で打ち切りになるかも。関係者らしいグループが3人ほどいた。

 スクリーンはビスタで開いており、気になった予告編は…… だいたい何度が見ているものばかりだったが、上下マスクの「キングコング 髑髏島の巨神」は新パターンでの予告。なかなか面白そうだが、3D、2D、IMAXでの上映があり、IMAXは向いているかも。3/25公開。

 予告の後、暗くなって、スクリーンが左右に広がり、シネスコ・サイズになってから「映画泥棒」の上映があって、本編へ。


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