2017年3月4日(土)「ラ・ラ・ランド」

LA LA LAND・2016・米/香・2時間08分

日本語字幕:丸ゴシック体下、太田泰子/シネスコ・サイズ(2.55:1、レンズ、フィルム、Panavision)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、DTS: Xも)

(米PG13指定)(ATMOS上映、IMAX版もあり)

公式サイト
http://gaga.ne.jp/lalaland/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

カリフォルニア、ロサンゼルス、冬。スタジオ内のカフェで働きながら女優を目指すミア(エマ・ストーン)は、自分のジャズの店を持つという夢を持つピアニストのセバスチャン(セブ、ライアン・ゴスリング)から、渋滞中の高速でセリフを練習していてクラクションを鳴らされるという最悪の出会いをする。しばらくしてミアはルームメイトに誘われて出たパーティーの帰り、車がレッカー移動されて歩いて帰る時、ふとピアノの曲に惹かれて入った店で再会するが、セブはオーナーに逆らってジャズを演奏し、ちょうどクビになったところで、ミアにドンとぶつかると出て行ってしまう。春。またミアがパーティーに出席すると、バンドのメンバーとしてセブがキーボードを弾いている。そしてミアが帰ろうとすると、しつこい男に絡まれて、通りかかったセブに助けてもらう。そこから2人は接近して行くのだが……。

76点

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 1950年代とかのハリウッドのミュージカル・スタイルで作られたミュージカル。劇中でも歌っているように三色法による「テクニカラー」の世界を再現するため、デジタルの今あえてフィルム撮影し、原色を多く使って画面をデザインしている。そしてスタンダード・サイズのモノクロで始めて、マスクをシネスコ・サイズに広げてカラーにする演出。

 物語は、最初のオープニング・ナンバーで歌っているように、夢を持ってハリウッドへやって来た若者が、くじけず諦めず自分の夢をかなえるというもの。予告の時から感じていたが、自分のジャズの店を持ちたいミュージシャンの男と、女優を目指す女の恋愛がうまく行ったら、出来過ぎだ。1950年代の映画と違うのは、伏せんというか、冒頭の設定をうまく使って、おとぎ話のようなハッピー・エンドではなく、リアリティのあるほろ苦い結末にまとめているところ。ここが今風であり、巧い。ただ、好みは分かれるかも。でも、それぞれが夢をかなえれば、こうなるだろうなあ。予告のまったくハッピーな感じを逆手にとって、意外な展開にしている気もした。

 ただ、素晴らしい歌曲を取っ払って、ストーリーを見ると、よくあるTVドラマ的なお話。特にどうということはない。わざわざ映画にすることもないレベル。それを見せる映画に仕上げるのが監督やスタッフの仕事で、ミュージカルという味付けなんだろう。

 車の渋滞で物語は始まり、車の渋滞でエンディングへ向かう。ヒロインの車は今風にトヨタの「プリウス」だ。もちろんタイトルは黄色のデザイン文字。ラストの店のロゴが泣かせる。そしてちょっと微笑んで、頷いて「The End」の文字。

 撮影が素晴らしい。流れるようなカメラ・ワーク。スムースに移動するカメラに合わせて、登場人物たちが完璧なタイミングで動いて行く。どんだけリハーサルをやったんだよ。すごすぎる。

 色彩設計も素晴らしい。テクニカラーの雰囲気を出すため、女性達のドレスは全て原色系。路地のゴミ箱は紫にされたりしていた。朝焼けか夕焼けか、きれいな空も捕らえられている。おとぎ話のように始まった「冬」「春」「夏」「秋」の物語は原色がいっぱい。そしてまた「冬」が来て、5年後は派手な色はなくなって、リアルな現実へ。うまいなあ。ただ、さすがに粒状感のようなものはあって、デジタル世代からすると、ちょっと見劣りするかなあ。

 曲も素晴らしい。1つのテーマがあって、それぞれの場面に合わせたアレンジ。同じ曲なのに楽しかったり、哀しかったり、みんな心に残る。「テイク・オン・ミー」とか、もちろんジャズも、素敵な曲がいっぱい。このアルバムは買いかも。

 映画好きが作ったらしく、名画のタイトルもいくつか出て来て、その中の1本、ジェームズ・ディーンの「理由なき反抗」(Rebel Without a Cause・1955・米)に出てくるグリフィス天文台でデートする。「巴里のアメリカ人」(An American in Paris・1951・米)的なスタジオのシーンや、「シェルブールの雨傘」(Les parapluies de Cherbourg・1963・仏/独)的なシーンも見られる。そしていろいろ観客が語れるのも話題になる1つの要因なのかもしれない。

 場面転換も凝っている。古い映画から、今になったり、写真から絵になったり、1950年代に良く使われたアイリス・イン、アイリス・アウトも多用している。ミアの部屋の壁にはイングリッド・バーグマンの絵まで!

 主人公の同級生というキースの役でジョン・レジェンドが出ている。

【ただいま執筆中。少々お待ちください】


 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定。本当はATMOS上映を見たかったが、時間の関係で2Dの通常上映にした。40分くらい前に付いた時点で、すでに三角マークの「残席わずか」状態。17〜18分くらいに前に開場し、下は中学生くらいのファミリーからいたが、メインは中高年。男女比は半々くらいで、外国人の姿もチラホラ。最終的に若い人も少し増えて、200席に9.5割くらいの入り。さすがのアカデミー賞受賞作。プレミアム席も8席中7席が埋まった。うち女性は3人。

 気になった予告編は…… シネマ・チャンネルのハリウッド・トピックスが新しくなり、四角の枠付き「メッセージ」が役者のインタビュー付き新予告に。大傑作「未知との遭遇」(Close Encounters of the Third Kind・1977・米)のような、「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey・1968・英/米)のモノリスのような物体(もっと、はるかに大きいが)が出てくる感じか。5/19公開。

 枠付き「ハクソー・リッジ」はメル・ギブソン監督作品。第二次世界大戦で、宗教上の理由から銃を持たずに戦場へ行った男の話らしい。かなりすごそう。6/24公開。

 枠付き「ムーンライト」は黒人男性の同一人物の3つの年齢層の時の姿を描くらしい。アカデミー賞作品賞受賞で、予告からも良さそうだが、重そうだなあ。落ち込むかも。R15+指定。3/31公開。

 枠付き「ライオン25年目のただいま」は実話の映画化。5歳の時にインドで迷子になった幼い子が養子になって大人になり、25年ぶりに家を見つけて帰るという話らしい。4/7公開。

 左右マスクの「ジャッキー/ファーストレディ最後の使命」は新予告に。監督がダーレン・アロノフスキーという所にまず惹かれるし、ナタリー・ポートマンがジャクリーン・ケネディに見えてくるから不思議。カッコいい女性というイメージ。3/31公開。

 CMのあと暗くなって、映画泥棒から本編へ。


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