2017年3月25日(土)「パッセンジャー」

PASSENGERS・2016・米・1時間56分

日本語字幕:丸ゴシック体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(映写機の上下マスク、デジタル、with Arri)/dtsX、ドルビーATMOS(IMDbではAuro 11.1も)

(米PG指定)(3D上映、4D上映、日本語吹き替え版もあり)

公式サイト
http://www.passenger-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

未来世界。ホームステッド社の開発した宇宙船アヴァロン号は、地球から120年の距離にあるスペース・コロニーのホームステッドIIに向けてオートパイロットにより順調に飛行を続けていた。乗客5,000人、乗組員258人で、全員が人工冬眠でカプセルで眠っていた。ところがある日、アヴァロン号はは小惑星帯に突入、大きな小惑星片を避け切れず、船体に損傷を受けてしまう。すると、冬眠中だった乗客の1人の男性、ジェームズ・プレストン(クリス・プラット)の冬眠カプセルが作動し、予定より90年も早く目覚めさせてしまう。原因を探るためコントロール・ルームへ入ろうとするが乗客のIDではドアすら開かなかった。諦めたジムはアーサーというバーテンのアンドロイド(マイケル・シーン)を話し相手に、1年が過ぎた時、冬眠ポッドに理想の女性に近いオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)を見つけ、いろいろと彼女のことを調べ始める。

74点

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 本作の予告というか、キャッチ・コピーが引っ掛けだった。正確な表現ではない。「2人だけが目覚めた」ではないし、「理由は1つ」でもない。確かに目覚めることになってしまうのは2人だが、もう1人は人為的に起こされてしまうので、目覚めるのは3人。そして、目覚める理由はないが、原因はある。「理由」などというと、意志が働いたようで、コンピューター・システムが船を救うために1人を起こしたように思ってしまうではないか。ミス・ガイドを狙ったのだろうか。

 これはいわば殺人事件。1人目覚めてしまった男が、寂しくてもう1人を起こしてしまうという。今起こせば確実に船内で目的地に着く前に寿命が尽きて死んでしまうことになる。確かに感動的な話ではあるのだが、日本人的には、自分の勝手な思いで他人を巻き込んでしまうことが許せない気がする。主人公は悪人ではないか。マイナスが大きすぎて、後半の物語で挽回しても差し引き足りない感じ。これが、もう1人もアクシデントかエラーなどで、不可抗力で起こされたのなら、後半のドラマの感動は大きかったと思う。

 ただSFの世界観は素晴らしい。宇宙船の船内は見事としか言い様がない。居住区を回転させて重力を生み出す「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey・1968・英/米)的な舞台装置がカッコいい。SF映画を観る楽しみのひとつ。本当にありそうな感じ。お掃除ロボットやバーテンのアンドロイドがいて、「エリジウム」(Elysium・2013・米)とか「プロメテウス」(・2012・)みたいな医療設備がある。シチュエーションとしては「シャイニング」(The Shining・1980・英/米)に似ていないこともない。1人でお留守番状態となり、あやしげなバーテンダーがいる。舞台が冬の間孤立するホテルか、宇宙かの違い。幽霊(幻覚?)は出てこないけど。

 まあ、とにかくジェニファー・ローレンスがかわいくて、魅力的。しかも若いのに「世界にひとつのプレイブック」(Silver Linings Playbook・2012・米)でアカデミー賞主演女優賞を獲得した実力派。ボク的には「ハンガー・ゲーム」(The Hunger Games・2012・米)シリーズはどうかと思うし、ハリウッド大作の「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X: First Class・2011・米/英)シリーズのミスティーク役はあまり目立っていなかったように思う。しかし、本作を見ると、やはり演技力があるなあと思わされる。

 相手役のジェームズ・プレストンはクリス・プラット。コミカル・タッチの傑作SF アクション「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(Guardians of the Galaxy・2014・米/英)で主演をはった人。話題作「ジュラシック・ワールド」(Jurassic World・2015・米)でも主役を演じており、大活躍。本作の前には話題のリメイク西部劇「マグニフィセント・セブン」(The Magnificent Seven・2016・米)に、準主役といったポジションで出ていた。まもなく「ガーディアンズ……」の続編が公開される。すごいなあ。

 アンドロイドのバーテン、アーサーはマイケル・シーン。「アンダーワールド」(・2003・)シリーズに出ていた人。「フロスト×ニクソン」(・2008・)でインタビューアーのフロストを演じていたのが、強く印象に残っている。そして残念な「ニュームーン/トワイライト・サーガ」(The Twilight Saga: New Moon・2009・米)シリーズにも第2作から出ている。

 そしてラストの主要出演者、乗組員のガス・マンキューソはローレンス・フィッシュバーン。大ヒット作「マトリックス」(The Matrix・1999・米)シリーズのモーフィアス役は有名。ボク的には「イベント・ホライゾン」(Event Horizon・1997・英/米)が好きだ。最近は「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」(Batman v Superman: Dawn of Justice・2016・米)に出ていた。さすがにうまいなあと。

 ラストに1シーンだけ出てくる宇宙船アヴァロン号の船長はアンディ・ガルシア。よくこんな役で出たなあ。そういえば、最近スクリーンで見かけていない。残念なリブート版「ゴーストバスターズ」(Ghostbusters・2016・米/豪)に出ていたらしいが印象に残っていない。「マッマス・スティール」(Max Steel・2016・英/米)にも出ていたらしいが評価が低く、日本では小劇場の限定公開でほとんど知られていない感じだし。

 ボクはてっきり原作小説があると思ったのだがないようで、脚本は製作総指揮も兼ねるジョン・スペイツが書いている。ドキュメンタリーやマルチメディアの世界から映画の脚本の世界へ進んだらしい。いつ公開されたかも良くわからないSFアクション「ダーケストアワー消滅」(The Darkest Hour・2011・米)の原案・脚本がデビュー作なんだとか。その後、大作の「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)の脚本や残念な「ドクター・ストレンジ」(Doctor Strange・2016・米)の脚本を手がけ、本作に至る。このあと「ヴァン・ヘルシング」(Van Helsing・2004・米/チェコ)のリブート版や、トム・クルーズのリブート版「ザ・マミー」(The Mummy・2017・米)が控えているらしい。

 監督はノルウェー出身のモルテン・ティルドゥム。「ヘッドハンター」(Hodejegerne・2011・ノルウェーほか)という作品がノルウェーで大ヒットし、イギリスの天才数学者アラン・チューリングを描いた「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(The Imitation Game・2014・英/米)の監督に抜擢、アカデミー賞監督賞にノミネートされた。そして本作へ。うまいわけだ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は12〜13分前に開場。「PとJK」が公開されたからか若い女性が大勢おり、そこにアニメの「黒子のバスケ」狙いらしい若い男性と女性も加わり、さらにアニメかヒーローものか小さな子を連れたファミリー層とも重なって、劇場は大混乱。ごった返していた。

 本作の観客層はほぼ中高年。男女比はSFだからか、最初9対1くらいでほんど男性だったが、最終的にはちょっと女性も増えて8対2くらいに。127席の小さなキャパはほぼ埋まった。これは良い方なのかどうなのか。

 スクリーンはビスタで開いており、気になった予告編は…… 「トランスフォーマー/最後の騎士王」はまたマイケル・ベイで作るらしい。とにかく絵はスゴイ。でもシネスコじゃないの? 夏公開。公式サイトはまだない模様。

 ほぼ暗くなってCMのあと、上下マスクの「おとなの恋の測り方」は、子供くらい背の低い男性のコミカルなラブ・ストーリーらしい。イタリア映画では良くありそうだが、これはフランス映画。ちょっとめんどうな感じもするなあ。6/17公開。

 「T2トレインスポッティング」はヒット作の20年ぶりの続編。同じキャストでそのまま撮っているらしい。ただ前作を見ていないので、なんとも…… 4/8公開。

 暗くなって、ビスタのまま映写機の上下マスクで本編へ。あれ? シネスコでレンズ使っていないの?


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