2017年9月2日(土)「ザ・ウォール」

THE WALL・2017・米・1時間30分(IMDbでは88分)

日本語字幕:フチ付き丸ゴシック体下、小森亜貴子/シネスコ・サイズ(レンズ、Arri、Hawk Scope、16mm)/ドルビー・デジタル?(表記無し)

(米R指定)

監督:ダグ・リーマン
脚本:ドウェイン・ウォーレル
撮影:ローマン・ヴァシャノフ
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、
   ジョン・シナ、ライト・ナクリ(声)、ほか

公式サイト
http://thewall-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

ブッシュ大統領によって戦闘終結宣言が出されたイラク戦争だったが、治安は悪化し戦闘が続けられていた2007年、アメリカ陸軍のスナイパーのマシューズ軍曹(ジョン・シナ)とスポッターのアイザック軍曹(アーロン・テイラー=ジョンソン)は石油パイプラインの建設現場を離れた位置から監視していた。そこには民間のイラク人作業員6名、護衛のアメリカ陸軍の兵士2人の遺体が倒れていた。みな頭を撃ち抜かれているようだが、スナイパーの仕業なのか、複数のイラン人グループに襲われたのかわからなかった。20時間以上経過しても変化がなかったため、撤退しようとマシューズはアイザックが止めるのも聞かず、確認のため潜んでいた場所から現場へ出て行く。するとどこからか銃弾が飛んできてマシューズが撃たれる。助けに向かうアイザックだったが、自分も膝を撃たれ、近くの崩れかけた壁の後ろに逃げ込む。


74点

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 これは……ひと言で言えば「[リミット]」(Buried・2010・西/米/仏)と同じ。設定が違うだけで、物語の構成は一緒。最初に提示された結末にそのまま至る。どんでん返し無し。そのまんま。ただ、エンディングに向けて主人公がコツコツ積み上げていったものが、ラストで何の役にも立たず崩壊してしまうだけ。つまり、戦争はこういうもので、最後まで望みを捨てずにがんばっても、報われるとは限らないと。下手に希望を持たせるだけに、最悪の結末に打ちのめされる。これがリアルで、安直な解決はないのだとしても、映画としてどうなのか。お金を取るエンターテインメントとしてどうなのか。そこをどう評価するかで、大きく別れるような気がする。

 一方で、ワン・シチュエーション、登場人物1人で最後までハラハラドキドキと見せるのは、さすがの演技力と演出力。わずか90分の映画が長く感じはするけれど、見事な演出。さすがとしか言い様がない。これは同じことを「[リミット]」でも書いた。まるでデジャビュ。お金を払って主人公と同じ気持ちを味合わされる、と。まったく同じ。作品の長さまで似ている。

 しかし、絶望的な状況を、知恵を使ってどう脱出するかを描くのが映画ではないのか。いろんな映画があるから絶対ではないとしても、観客としてはその工夫、知恵が観たいのでは。この種の映画はそこの工夫が一切無し。だからカタルシスもナシ。あるのは絶望のみ。キャッチ・コピー「壁の向こうは、生存率0%」どおり。

 撃たれた膝から肉はもちろん骨が見えていたり、そこから銃弾をナイフでえぐり出したりと、かなりグロテスクなシーンもあり、あまり小さい子には見せたくないが、指定はなぜか誰でも観られるG指定。

 16mmフィルムで撮影したようだが、画質はとても良く、まったく違和感はなかった。また音も風の音などがサラウンドでよく回っていた。ただ音響方式の表記はなし。

 銃は、陸軍なのでスナイパーはレミントンM700ベースのボルト・アクション・ライフルM24。スポッターがM4カービン。セカンダリーはM9ベレッタ。狙撃距離は1,500〜1,550m。着弾してから銃声が聞こえる。ここが怖い。しかも膝には膝窩動脈とかいうものが走っていて、そこを撃たれると止血帯を使っても出血を止められず、やがて失血死してしまうんだとか。だから膝を撃ったと敵のスナイパーが言う。そして水筒と、無線のアンテナも撃ったと。灼熱の砂漠で水もなく、孤立無援、姿の見えない敵。かなり怖い。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、木曜にムビチケカードで確保。当日は12〜13分前に開場。観客層は若い人から中高年まで幅広かったが、どちらかというと高寄り。昔の銀座シネパトス後期の親父劇場の様相。男女比は8対2くらいでほとんど男性。最終的には226席に7.5割くらいの入り。なかなか良い感じだが、これから増えるとは思えない。悪くはないんだけど……。

 スクリーンはヨーロッパ・ビスタで開いており、CM・予告の後、左右に広がり映写機のマスクも左右に広がって、シネスコ・サイズになって、暗くなって、本編へ。


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