2017年9月16日(土)「三度目の殺人」

2017・フジテレビジョン/アミューズ/ギャガ・2時間04分

シネスコ・サイズ(表記無し、IMDbではデジタル、Arri)/ドルビー・デジタル?(表記無し)


監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
撮影:瀧本幹也
編集:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、ほか

公式サイト
http://gaga.ne.jp/sandome/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

弁護士の重盛(しげもり、福山雅治)は、同僚弁護士の摂津(せっつ、吉田鋼太郎)が手に負えなくなった強盗殺人事件の容疑者、三隅高司(みすみたかし、役所広司)の弁護を引き継ぐことになる。三隅本人は自白しており、30年前にも殺人の前科があり、死刑は免れないと思われた。そこで、情状酌量で無期懲役に減刑する方向で裁判を進めるため調査を開始する。すると、タクシーの映像から、奪ったとされる被害者の財布にはガソリンがかかっていたことが判明する。死体の焼却直前に財布を抜いたとに疑問を感じた重盛が調査を続けると、重盛の通帳に被害者の妻から50万円が振り込まれており、殺人を依頼したかのようなメールも発見される。


74点

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 うーむ、暗くて、重くて、悲しい映画。映画としては重厚なドラマで、よくできていると思う。が、ちっとも楽しくないし、気が重くなる。出来の割に感動もほとんど無い。これは、たぶん、悪人ではなく善人を裁く映画だから。登場人物の周りでは悲しい出来事があちこちで起こっており、唯一の良い出来事なのに、それを裁判で裁かなければならない。こんなに気分の悪いことはない。

 しかも映画の出来はほぼ1人の演技に掛かっている感じ。つまり主人公と思われる弁護士の重盛ではなく、話の中心となる容疑者、三隅を演じる役所広司によるところが大きい。事件の真相は一応明らかにはなるのだけれど、明確には誰も言っていない。その判断は観客に任されている。その判断基準となる部分が、ほぼすべて役所広司1人に掛かっている。真相はどこにあるのか。かわいそうな身の上の広瀬すず演じる少女、咲江でもなく、真相を明かしていく弁護士の福山雅治演じる重盛でもない。もちろん役所広司は巧いのでそのの責任を果たしていると思うが、そういう事実が重いのだ。

 また、北海道で暮らすという三隅の娘のシーンや、重盛の父のシーン、重盛の娘のシーンなど必要があったのだろうかという気もする。エピソードとしてあっても話だけとか、電話だけとかでも良かったような気がする。そのシーンがあったことによって、内容が薄まってしまった印象。

 そして、かなり悪い役の咲江の母の描き方が後半なさ過ぎ。強烈な印象を残すのに、素っ気ない。バランスが悪いのでは。

 弁護士の構成は、熱気あふれる新人弁護士、川島と、ベテランゆえスレてしまってビジネスライクというのか政治的駆け引きに走ってしまう摂津弁護士がいて、主人公の重盛はその中間的なポジションという設定のよう。そして、意思と関係なく命は選別されているという、なんだか哲学的なところへ踏み込んでいく。結局、裁判の判決も、真実とは関係なく決まってしまう。30年前の殺人と、今の殺人、そして死刑判決による殺人が三度目と言うことか。だからポスターなどのメイン・ビジュアルで、三隅と咲恵と重盛の3人の頬に血が付いていると。ただ、カナリヤのエピソードは意味がよくわからなかった。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、木曜日にムビチケカードで確保。当日は20分前くらいに開場。最初は5人ほどでほぼ中高年男性。しばらくして少し若い人も女性も来て、最終的には中高年メインの男女比半々で、プレミアム席1列ある200席に30人ほどの入り。もちろんP席は0。この内容だからなあ……。

 場内が暗くなって、映画泥棒の後、フル・サイズで本編へ。


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