2017年10月8日(日)「ドリーム」

HIDDEN FIGURES・2017・米・2時間07分

日本語字幕:丸ゴシック体下、長尾絵衣子/シネスコ・サイズ(IMDbでは1:2.39、フィルム、レンズ、Arri)/ドルビー・デジタル

(米PG指定)

監督:セオドア・メルフィ
原作:『Hidden Figures』マーゴット・リー・
   シェッタリー
脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・
   メルフィ
撮影:マンディ・ウォーカー
出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・
   スペンサー、ジャネール・モネイ、
   ケヴィン・コスナー、ほか

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/
(全国の劇場リストもあり)

NASAに全米から優秀な頭脳の持ち主が集められ、ソ連と熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた1961年。黒人女性を集めた西計算グループでは、実質的なリーダーのドロシー(オクタヴィア・スペンサー)から、配置転換が発表される。メアリー(ジャネール・モネイ)は技術部へ、キャサリン(タラジ・P・ヘンソン)はスペース・タスク・グループへ行くことになる。しかし人種差別が激しかった時代で、管理職を希望するドロシーは上司の白人女性ミッチェル(キルステン・ダンスト)から却下され、メアリーは上司のユダヤ人技術者ゼリンスキー(オレク・クルパ)から技術者になるように進められるが白人しか進めない学校を出ていないと資格さえ得られず、キャサリンは気難しい上司のハリソン(ケヴィン・コスナー)のもと、男性職員ポール(ジム・パーソンズ)の検算ばかりで、しかも渡される書類は黒く塗りつぶされたところばかりという状況。しかもソ連はいち早く世界初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功し、続けて動物も打ち上げ、ついには人間も打ち上げようとしていた。


86点

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 久々に気持ちよく感動した。見て良かった。あやうく涙が出るところに。アメリカには黒人というだけで、女性というだけで、差別されていた時代があって、それは今でも残っているかもしれないが、その差別と闘いながら国に貢献してきた人々がいると。そしてそういう人々によって、今があるという物語。その舞台が最先端を行っていたNASAで、しかも国の名誉をかけてソ連と1番乗りを競っていたというのが良い。ただのホーム・ドラマだったらたぶん見ていない。

 そういう歴史があったと描けるのもまたアメリカ。懐の深さを感じる。そして「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(The Imitation Game・2014・英/米)と似た雰囲気があり、アメリカの宇宙開発のちょっとした歴史もわかるし、計算が人間からコンピューターに切り替わる時のドタバタもわかる。大きすぎてドアから入らなかったなんて! マーク・シートからパンチ・カード、FORTRAN……大学でやったなあ。

 まあ当然、映画なので事実と違うところはあるようで、大胆な省略もある。全米の天才たちが集まった部署でなかなか解決できなかった問題を、配置替えでやってきた1人の天才がちょっと見ただけで閃いて解決の糸口を見つけるなんてあり得ないだろう。しかし映画はだいたい2時間で終わらなければならないわけで、じっくり描いているヒマはない。しかも、多くの人々の尽力によって宇宙飛行士は宇宙に行っているわけで、わざわざ計算した1人にだけお礼を言うなんてこともあり得ないだろう。でも映画としては熾烈な差別からくるギャップからのカタルシスを演出するためには、この辺も欠かせない。それが気になると楽しめないかも。

 メインとなる3人のキャラクターも良い。1人だけメアリーがちょっと反抗的な態度を見せるが、それも度を超しておらず、許容できる範囲。おおむねトラブルを起こさないように静かに戦っていくタイプ。声高に権利を叫んだりすることなく、じっと耐えつつ、きっちりと働いて責任を果たすという行動で周りから認められ、尊敬を得ていくというパターン。日本人大リーガーがアメリカで認められるパターンと一緒。噂や評判だけでは認められない。目の前で結果を出して見せて初めて認められる。素晴らしい結果なら尊敬も得られる。射撃でも何でも同じ。これがアメリカらしいということになるのだろうか。

 ただ、邦題の「ドリーム」はどうだろう。夢を持って、夢を失わず、それを叶えたということか。でもなんだかピンとこない。宇宙開発事業で夢を実現した人たちの話というより、華々しい業績の影には、計算で戦っていた女性たちが、とりわけ黒人女性たちがいたと、そういう話ではないのだろうか。

 主演のタラジ・P・ヘンソンは人気TVドラマ「」(Person of Interest・2011〜2016・米)シリーズで腕利きの女性刑事を演じていた人。実に良い感じだったが、本作でも良い味を出している。そしてラストに実際の彼女たちの写真が出る。ここがまた感動的。

 公開10日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にたまったポイントで確保。当日、着いた時点では残席わずかの表示だったが、15分くらいしたら完売の表示に変わった。次の回も、その次の回も完売だった。すごい人気。22〜23分前に開場となり場内へ。この時点では17〜18人で、女性は5〜6人。ほぼジジ。ババ。まあ1960年代の話だからなあ。しかもNASAの話だから、TVでアポロの月着陸の映像をオンタイムで見た人が来ているのかも。最終的には、もちろん200席すべてが埋まった。下は親に連れられた中学生くらいの女の子からいて、男女比は半々くらい。8席あったプレミアム席は6席まで埋まったのは確認したが、たぶん全席埋まったのではないか。

 暗くなって、映画泥棒の後、フル・サイズで本編へ。


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