2017年10月22日(日)「バリー・シール/アメリカをはめた男」

AMERICAN MADE・2017・米・1時間55分

日本語字幕:手描き風書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(1.85、欧版は2.39、デジタル、Arri)/ドルビー・デジタル(IMDbbではドルビー・サラウンド7.1、ドルビーAtmosも)

(米R指定)

監督:ダグ・リーマン
脚本:ゲイリー・スピネッリ
撮影:セザール・シャローン
出演:トム・クルーズ、ドーナル・グリーソン、
   サラ・ライト・オルセン、ほか

公式サイト
http://barry-seal.jp
(全国の劇場リストもあり)

アメリカ、TWA航空の最年少パイロットとなったバリー・シール(トム・クルーズ)は、密かにキューバ産の葉巻を持ち込むなどして、小遣い稼ぎをやっていた。1978年、それを知ったCIAのシェイファー(ドーナル・グリーソン)が現れ、小遣い稼ぎに中央アメリカのグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルなどの革命勢力などの写真を航空機から撮影してきてくれと依頼される。その写真が超低空で良く撮れていたため、上層部の評価も高く、次々と仕事をこなしていくが、ギャラは上がらなかった。1980年、その噂を耳にしたコロンビアの麻薬王、メデジン・カルテルのパブロ・エスコバル(アウリシオ・メヒア)、カルロス・レデル(フレディ・ジャーテ・エスコバル)、ホルヘ・オチョア(アレハンドロ・エッダ)らに腕を買われて、CIAの仕事もしながらコカインの運び屋もすることになる。


74点

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 コミカルな味付けだが、なかなか強烈な内容。ラストも衝撃的。しかもこれは実話に基づいているというから怖い。1978年あたりから1986年くらいと言うと、30〜40年ほど昔の話だが、それでも親父世代には記憶に新しいところ。アメリカ大統領で言うと、ジミー・カーたーからロナルド・レーガンの時代。ニカラグアとかコントラとか、話題になったなあと。コントラなんて流行語になったのではないだろうか。その背景にこんなことが起きていたんだというのが、まず驚く。

 そして驚かされるのは、CIAの活動だ。主人公が「これって合法か」と聞くと「我々の国にとっては」というような返事が返ってくるが、国のためにやっているはずが、結果的に国のためになっていないのではないか。そして、何よりこんなことが許されるのかと。偵察写真を撮るくらいはまだしも(それでも領空侵犯。今なら偵察衛星がやっているはず)、武器の横流しとか、軍事訓練のための人の密入国と密出国とか、許されるのか。しかも映画では割と気軽に企画して、気軽に実行している。実際にこんな感じなのだろうか。その辺もショック。これでCIAは罪に問われず。似たような作戦「イラン・コントラ事件」を推進しようとして終わる。これでいいのかと。きっと今もどこかでこんな非合法な活動が行われているのではないかと。そして、それがタイトルの「アメリカン・メイド」だというこだろうか。これは恐ろしい。そんな怖い後味の映画。ただ、アメリカをはめた男の映画ではないなあと。

 系統としては「ブロウ」(Blow・2001・米)とか、「ブラック・スキャンダル」(Black Mass・2015・米/英)と同じような印象。いずれにもジョニー・デップが出ているけど。で、「ブラック……」はFBIが主役だった。公権力が何かをやろうと思ったら、予算もふんだんに注ぎ込み、何でもできて、何の責任も取らなくていいのだと。この恐ろしさ。そして、麻薬の金であろうと、金があってそれが回るようになると、人口2,647人くらいの小さな寂れた街に活気が戻り、生き返るんだなあと。人々が生き生きしてくる。そうなると、保安官でさえ金の出所について問わなくなると。これを単に悪いとは言えない部分も出てきてしまう。世の中はやっぱり金か。でも大量にアメリカに入ったコカインによって、どれだけの被害者が出たことか。その部分は全く描かれていないが。

 銃は麻薬組織がウージー、シルバーの2〜4インチくらいのリボルバー。アメリカ政府がコロンビアへ提供しようとするのがAKM。コントラは木ストのG3やFAL、M16、ジープにはM2重機。

 また時代を反映して、タバコがよく出てきた。昔はこんなに吸っていんだなあと。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は10分前くらいに開場。こちらも若い人から中高年まで意外と幅広い。男女比は6対4くらいで男性の方が多く、最終的には232席に6〜6.5割くらいの入り。まあ地味な作品なので、こんな感じか。

 スクリーンはシネスコで開いており、CM・予告の後、映写機の左右マスクのビスタ・サイズで本編へ。なぜスクリーンのカーテンでビスタにしないのだろう。画面が締まらない。


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