2017年12月16日(土)「オリエント急行殺人事件」

MURDER ON THE ORIENT EXPRESS・2017・米/英/マルタ/加・1時間54分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(2.39、デジタル=Arri 65、フィルム=65mm)/ドルビーATMOS(IMDbではDTS 70mmも)

(米PG-13指定)

監督・製作:ケネス・ブラナー
原作:アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』
脚本:マイケル・グリーン
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:ケネス・ブラナー、ジョニー・デップ、
 ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、ほか

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/
(全国の劇場リストもあり)

1934年、エルサレムでの事件を解決した世界的名声を持つ私立探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は、イギリスの事件を解決するため、イスタンブールからオリエント急行に乗ってロンドンを目指す。しかし冬にもかかわらずオリエント急行は満席で、相部屋を余儀なくされる。列車が発車してすぐ、ポアロは横柄なアメリカ人の美術商ラチェット(ジョニー・デップ)から、脅迫されているので身辺警護をしてくれと依頼されるが、きっぱり断る。すると嵐の夜、雪崩が発生し列車は先頭の蒸気機関車が脱線、止まってしまう。大騒ぎとなるがラチェットが出てこないと、ポアロが鍵を壊して部屋の中に入ると、窓が開いており、ラチェットはベッドの上で何カ所も刺されて息絶えている。同乗していた鉄道会社のディレクター、ブーク(トム・ベイトマン)は、救援隊が来る前に事件を解決したいとポアロに捜査を依頼する。


82点

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 面白かった。IMDbでは6.8点の低評価。たぶん謎解きのミステリーとして見ると物足りないかもしれない。しかし、有名俳優たちの共演(競演)による人間ドラマとして見ると、豪華で、感動的で、泣かせる上質な映画。65mmフィルムのおかげか絵になる画が多く、特に肌色はきれいだった。

 原作はアガサ・クリスティの超有名な世界的名作。ボクでさえ原作を読んでいるし(あまりに昔で記憶はあやふやだが)、シドニー・ルメット版の映画「オリエント急行殺人事件」(Murder on the Orient Express・1974・英)も見たし、アメリカのTVドラマもあって、つい最近フジTVでもドラマ化されている。ということは、たぶんトリックと犯人を知っている人はたくさんいるわけで、それから言うと、謎解きより同じ原作をどう違う切り口で見せるのかということになるのではないだろうか。その点で本作は個性的で、結末のわかる物語が感動的だった。うまいなあ。ちょっとミュージカル的な感じもしたが、それは監督がケネス・ブラナーだからだろう。シェークスピア的ドラマとミュージカル的構成。さらには最後の晩餐を模したりの絵画的表現。

 豪華なオリエント急行の旅を楽しむような気分も味わえる。有名俳優たちの競演を楽しみ、知的なドラマに酔う。そして上流社会の社交の雰囲気を体験する。決して普通の庶民の話ではない。それでも、事件の背後にあったいくつもの悲しい話は胸を刺す。だからラストのポアロの決断に共感できる。そして列車はポアロ1人を下ろして出て行く。

 銃は、ラチェットがコルト.32オートM1903、元警官がコルト・ポリス・ポジティブを所持。冒頭のエルサレムのシーンで警察がリー・エンフィールド・ライフルを、ポアロが途中下車するユーゴスラビアの警官はモーゼル・ライフルを装備している。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで2日前に確保。当日は15分前くらいに開場。観客層のメインは中高年、やや高寄り。それでは若い人もちらほらいて、たぶん一番下は父に連れられた中学生くらい。男女比は4対6くらいで女性が多かった。最終的には232席ほぼ満席に近い9.5割くらいの入り。素晴らしい。

 スクリーンはシネスコで開いており、映写機のマスクが左右に広がって本編へ。


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