2018年1月27日(土)「デトロイト」

DETROIT・2017・米・2時間22分(IMDbでは143分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/ビスタ・サイズ(左右マスク1.85、デジタル、Arri、with Panavision)/ドルビー・デジタル

(米R指定)

監督・製作:キャスリン・ビグロー
脚本:マーク・ボール
撮影:バリー・アクロイド
出演:ウィル・ポールター、ジョン・ボイエガ、
 アルジー・スミス、ジャック・レイナー、ほか

公式サイト
http://www.longride.jp/detroit/
(全国の劇場リストもあり)

1967年7月、アメリカ、デトロイト市の黒人の低所得者層が住む地区で、無許可営業のナイト・クラブが摘発され、多くの黒人が逮捕されたことをきっかけに暴動が発生。街のあちこちで火災が発生し、消防士にまで暴力が及んだことから、州兵が派遣され、夜間は外出禁止となる。そんな中、アルジェ・モーテルにいた若者グループがふざけてオモチャのピストルで警官たちに向けて発砲。すぐに州兵と市警に包囲され、狙撃のあった部屋にいた全員に対して市警の3人の若い警官による拷問のような尋問が始まる。


76点

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 50年前の驚きの実話。ほぼ全編手持ち撮影のようで、カメラが動きっぱなし。たぶん意図して使っているのだと思うが、臨場感があって、まるで自分(観客)が白人警官に拷問のような尋問をされているような気分になるものの、やっぱりちょっと目が回る。シネスコではないので気持ち悪くなるほどではないが、これも計算だろうか。画質も、時代感を出すためだろう、あまり良くない。

 この緊張感というか、怖さは半端ではない。さすがキャスリン・ビグロー監督。見事だと思う。しかしながら、ちっとも楽しい映画ではなく、144分間ずっと息苦しい映画。戒厳令のような状態の夜に、あえて夜の町に出るバカ者、出張ってきている警官に投石するバカ者、エスカレートして暴力になり、全く関係のないお店のショーウィンドウに投石し、略奪を始めるバカ者、本物の狙撃者がいる中、警官隊や州兵に向かってオモチャの鉄砲(スターター・ピストルといっている)を何発も発砲するバカ者…… いくら低所得者層とは言え、こんなバカな行動を取れば、結果はわかりそうなものだが。日本人的にはそこのところが理解しづらい。

 人種的な偏見があって、取り締まる側の立場だとつい居丈高に出てしまう。それがエスカレートして暴力となり、一線を超えてしまうというのは、よくわかるし、よく伝わってきた。アメリカのスタンフォード大学で実際に実験されたという事件を描いたドイツ映画「es[エス]」(Das Experiment・2001・独)と同じ。

 作品としての出来は素晴らしいと思うが、画質も、カメラ・ワーク、内容からも、気分の悪い映画。事件がやっと終わって解放されたあとのカタルシスのようなものも無し。むしろラストにダメ押しで、納得できない裁判までが描かれている。そして実際の人物の写真が出て(顔などに負った傷までそっくりに再現したらしい)、その後どうなったのか、そして事件の真相が解明されていないことが文字で出る。陪審員は白人だけで、無罪判決とは…… トランプ大統領のことを考えると、50年前のこととは言え、単なる過去の事件と言っていられない気もするが、そこを狙ったのか。

 銃は、中心となる警官のクラウスが使うのがもシルバーめっきのS&W M10ミリタリー&ポリス4インチ。長物はレミントンM870らしいポンプ・ショットガン。州兵はM1カービンとM1ガランド。M41ウォーカー・ブルドッグ戦車にはM2重機関銃。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にムビチケカードで確保。当日は22〜23分前に開場。観客層は中高年がメインで、若い人も少しはいたものの高齢者が多い印象。男女比は8対2くらいで男性が多かった。プレミアム(P)席が10席×2列ある全407席の7.5割くらいが埋まった。P席も半分の10席ほどが埋まった。

 どこかのバカが、上映直前に電話を受けてしゃべりだし、周りが静かなので声が場内に響いていた。外で取れ! 恥ずかしくないのか。まったく考えられない。


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