2018年2月25日(日)「空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎」

妖猫傳 LEGEND OF THE DEMON CAT・2017・中/日・2時間11分

シネスコ・サイズ(2.35、デジタル、ALEXA)/音響?(表記無し、IMDbではドルビー・デジタル、ドルビーATMOS、DTX)

(香IIA指定)(日本語吹替版のみ、一部日本語字幕付き上映もあり)

監督:チェン・カイコー
原作:夢枕獏『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』
   (角川文庫/徳間文庫刊)
脚本:チェン・カイコー、ワン・フイリン
撮影:カオ・ユー
出演:染谷将太、ホアン・シュアン、
   チャン・ロンロン、キティ・チャン、
   チン・ハオ、ほか

公式サイト
http://ku-kai-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

中国、唐の時代。長安の都で、宮廷の護衛を務める陳雲樵(チン・ウンショウ、チン・ハオ)の妻、春琴(チュンキン、キティ・チャン)が黒猫に取り憑かれる事件が起きる。同じ頃、宮廷では何者かに呪われた皇帝、玄宗(ゲンソウ、チャン・ルーイー)を救うため、日本から来ていた僧、空海(くうかい、染谷将太)に法力をもって呪いを払うよう求められていた。しかし、そこに黒猫が現れ、玄宗は亡くなってしまう。宮廷の記録係を務めていた白楽天(はくらくてん、ホアン・シュアン)は、空海と共に黒猫を追うが、逃げられ、「次はリシュウ(次の皇帝)」と書かれた木片を発見する。空海は密教の教えを持ち帰るため「大青龍寺」の高僧に紹介してくれと白楽天に頼むが、先に長安一の妓楼「姑玉楼」へ誘われる。ちょうどそこに陳雲樵も訪れており、黒猫が現れ、大騒ぎとなる。


76点

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 歴史的事実を軸に、実在の人物を使い、それらを変えずに巧妙にファンタジーとして仕上げた楊貴妃の悲劇。国をも傾けさせるほどの美女が、多くの男たちを虜にし(結果として国を乱れさせるが、それは描かれていない)、そしてその美しさゆえに死ななければならなかったと。この話を、日本的な化け猫、黒猫が中心となって2人の主人公、空海と白楽天に謎を解かせて行くことで、何があったか語って行くという手法。たぶんこれは、読んでいないが、原作の妙なのではないだろうか。それを見事に活かした。

 そしてビジュアルの素晴らしさ。3D-CGを使いまくり。それが非常にわかりやすいところと、どこまで使われているのか、わからないところもあり、宮廷、妓楼の絢爛豪華さ、都の壮大な景観など、本当に素晴らしい。圧倒的。ちょっと「千と千尋の神隠し」(2001・日)的な感じもした。衣装も華麗だった。音響も立体的で、サラウンド感が良く出ていた。これこそIMAX上映(本物は少ないらしいが)、ATMOS上映や4D上映が向いていたのかも。そして、本当にたくさんの美女、美女、また美女。男たちも美男揃いだが、男の観客は美女に圧倒される。監督の好みとしても、ここも映画的な部分だろう。

 日本語吹替は、最初の30分くらい違和感があった。なにしろ大きなスクリーンでは唇の動きもわかりやすいので、動きと声が合っていないのが丸わかりなのだ。TVなら気にならないかもしれないが、大スクリーンでは。ただ、物語が佳境に入ってくると、次第に慣れてきた。たぶん、登場人物の中国名をすべて字幕にしているとわかりにくいということもあったのだろう。確かに楊貴妃や空海、阿部仲麻呂などはいいとしても、陳雲樵や瓜翁などは難しいかも。話も結構複雑で、字幕では理解するのが難しいのかもしれない。ブルーレイが発売されたら、どちらでも楽しめるのかも。予告は最初は中国語だったのになあ。

 同じチェン・カイコーの「PROMISEプロミス」(無極・2005・中/韓/米)も美女の話だった。ただ、いつも薄ら笑いの空海は、演出としていかがなものかと。ちょっと疑問。そして主題歌。RADWINPSで、実に良い曲なのだが、中国の物語で、日本語吹替で、英語の主題歌かよ。この無国籍感! 冒頭から驚かされた。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、2日前にムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに開場。これも中高年の高寄り。若い人は少しだけ。男女比は最初8対2くらいだったが、最終的には7対3くらい。なぜ、こんなに差ができたのか。あまり男女は関係なさそうな気がするんだけど。そして407席に7.5割くらいの入り。プレミアム席は10席×2列のうち6席ほどが埋まった。

 暗くなって映画泥棒の後、東宝のロゴからいきなりRADWINPSの英語の歌から入ったので、予告壁かと思ったら、本編だった。


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